第六十四話:カクテルシェイカーより、丸みを帯びたグラス♡
『天女の優香さま』
第六十四話:カクテルシェイカーより、丸みを帯びたグラス♡
──♡──
僕は今日、天女に会った。
その日の優香さんは、ミントグリーンのシルクシャツに、光沢のある黒のパンツ。
シェイカーを振る姿は、氷と液体のリズムをすべて抱きしめる調べのようだった。
その指先が弧を描くたび、氷の音は宝石のように跳ね、胸の奥に甘い酔いを広げていった。
注がれる一滴を見つめる横顔は、グラス越しに揺れる月光そのものだった。
──♡──
長谷川 拓真、25歳。ホテルラウンジのバーテンダー見習い。
舞台を志した時期もあったが、今は“カウンターでの演出”に惹かれている。
氷の音、酒の香り、グラスのきらめき──それらで人を魅了できることに夢を見ている。
けれど最近は、“演じること以上の自分”を映す何かを探している。
──♡──
「ねえ……女の子のオッパイ、欲しくない?」
「……は、え……? な、なんで今そんな……」
「シェイカーを振る腕ってね♡ ラインが浮き出るから……胸の丸みと重なるのよ」
「そ、そんなこと……」
「質問♡ マティーニの切れ味と、ミモザの甘さ。どっちが好き?」
「……ミモザ、かな……」
──♡──
「正解♡ 女の子のオッパイが欲しくなったのね!♡」
──バシュウウウッ!!
シャツの胸もとがゆるやかに盛り上がり、ふくらみの丸みが生地を押し返す。
その形は、まるで液面からふわりと立ち上る泡のように自然で、抗えない。
腕に伝わる重みが変わり、シェイカーの中で氷の転がる音が、甘やかに響いた。
「……お、重さが……手首に、やさしく馴染んで……」
「Cカップね♡ 女の子の胸は、グラスを支える手つきそのものを変えるの」
──♡──
「今日のブラジャーはこれね!♡」
クリアブルーのサテンに、雪の結晶のようなチュールを散らしたバルコネットタイプ。
カップの上辺がすっきりと開いた、リフトアップ重視の軽やかなデザイン。
「これは“冷たい飲み物ほど映える形”♡ 肩から腕にかけて、しなやかな曲線をつくるのよ」
「……シェイカーの振りが……丸く、柔らかく……」
「ふふ♡ それが“女のステアリング”なの」
──♡──
(優香のオッパイ豆知識♡)
「Cカップは“夜の灯りを柔らかく変えるサイズ”♡ 胸の丸みが、カウンターの影を魔法に変えるの♡」
──♡──
(数日後。)
鏡の前で、シャツの胸元をほんの少し整える仕草が自然になっていた。
氷をすくうトングの角度が、なぜか自分でも美しいと思えるようになった。
常連客から「なんだか雰囲気が変わったね」と声をかけられた。
胸に沿って流れるシャツの線を意識するだけで、立ち姿の緊張感が心地よくなる。
グラスを磨くたび、胸のあたりに小さな呼吸を意識してしまった。
“バーテンダー見習い”の姿のまま、“女の夜”に染まりつつある自分を、心の奥で楽しんでいた。
──♡──
完──“今日もまた、女の子のオッパイにしておしまい♡”




