第五十七話:ひと針ずつ、わたしで縫って♡
『天女の優香さま』
第五十七話:ひと針ずつ、わたしで縫って♡
──♡──
僕は今日、天女に会った。
その日の優香さんは、生成りのニットカーディガンに、マーメイドラインのスカート。
膝の上に広げられた布に、静かに針を通している姿は、まるで絵画の一枚のようだった。
刺すたびに揺れる髪先が、陽射しを受けてそっときらめいていた。
──♡──
蓮水 優斗はすみ・ゆうと、25歳。服飾専門学校の助手。
学生たちのサンプルチェックや課題管理に追われる日々。
けれど、本当は──誰かのために縫う“自分だけの服”を作りたかった。
理想を形にすることの難しさと、憧れの狭間で、いつも胸が締めつけられていた。
──♡──
「ねえ……女の子のオッパイ、欲しくない?」
「えっ……えええっ!? い、いや、あの、ちょっと待ってください優香さん!」
「ふふ♡ ずっと、試着用トルソーの胸ばかり撫でてたの、見てたわよ?」
「そ、それは! 服のラインが……その、映えるかどうか……」
「質問♡ ゆるやかに縫い込むのと、タックでくっきり寄せるの。どっちが好き?」
「……縫い込む、ほうが……しっとり、自然に……」
──♡──
「正解♡ 女の子のオッパイが欲しくなったのね!♡」
──バシュウウッ!!
胸元からふわりとふくらむ、ぬくもりのある膨らみ。
針目のように、丁寧に“女”というラインが縫い込まれていくようだった。
「うそ……ほんとに……この膨らみ……やさしくて、あたたかくて……」
「Cカップ♡ “布に映える”胸元に仕上げておいたわ」
──♡──
「今日のブラジャーはこれね!♡」
生成りのレースカップに、ベージュの薄リボンが添えられたランジェリーブラ。
肌になじむニュアンスカラーで、衣服の下でも輪郭を消さずに残してくれる。
「“仕立て映え”ブラ♡ 服を着たときにこそ、いちばん美しく見えるの♡」
「そ、そんな世界が……あるんですね……」
「ふふ♡ これから、ぜんぶ縫い直していきましょうね。あなたの“身体ごと”♡」
──♡──
(優香のオッパイ豆知識♡)
「Cカップは“見せるライン”♡ どんな服も、女の胸に仕立て直してしまう魔法なの♡」
──♡──
(数日後。)
採寸のとき、胸の丸みに布がふわっと沿うのが、なんだか嬉しくなってしまう。
試着のチェックでは、お客さんと一緒に鏡を見ながら「ここ、ぴったりですね」と微笑んだ。
針を持つ手元に、柔らかな緊張感が生まれはじめている。
“似合う”という言葉が、今では僕自身の胸にも向けられているような気がした。
女の服を縫うこと。それは──“女の胸で感じながら”縫うことだったのかもしれない。
──♡──
完──“今日もまた、女の子のオッパイにしておしまい♡”




