第三十七話:氷上に、やさしいライン♡
『天女の優香さま』
第三十七話:氷上に、やさしいライン♡
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僕は今日、天女に会った。
その日の優香さんは、ネイビーブルーのニットに、アイスグレーのスカート姿だった。
白いマフラーがふわりと首元に巻かれ、淡い光を柔らかく反射していた。
手袋を外すしぐさが、まるでスローモーションのように、美しく残像を残していた。
──♡──
小山 柊吾、28歳。フィギュアスケート男子・元全日本代表。
引退後はコーチ業。技術より美しさを重んじるスタイルで、教え子には敬遠されがち。
けれど、ジャンプよりスピン。勝ち負けより──美の“線”にこだわってきた。
それなのに最近、なぜか“自分のライン”が、思い出せなくなっていた。
──♡──
「ねえ……女の子のオッパイ、欲しくない?」
「な、なんですか急に……優香さん……リンクの真ん中で……」
「ふふ♡ 氷の上だとね、胸の揺れもスピンの一部なのよ」
「……いや……そんなこと、今まで考えたこともなかった……」
「質問♡ ぴたりと止まる美しさと、揺れて乱れる色気。どっちが気になる?」
「……後者、かも……です」
──♡──
「正解♡ 女の子のオッパイが欲しくなったのね!♡」
──バシュウウッ!!
リンクの冷気の中、胸元だけが、やわらかい体温でふくらみ始める。
スピンの軸がすうっと定まり、重心が“女のライン”に導かれる感覚があった。
「っ……うそ、なのに……姿勢が、しっくりくる……!」
「Cカップね♡ 氷の上にも、ちゃんと女の軸は生まれるのよ」
──♡──
「今日のブラジャーはこれね!♡」
ライトブルーのスポーツブラ。伸縮性のあるメッシュが、肌にやさしく沿うデザイン。
フロントのクロス設計が、滑りながらでもラインを美しくキープしてくれる。
「これは“滑るためのインナー”♡ 胸を守ることで、動きがもっと自由になるの」
「……まるで重心が導かれるみたい……これで滑ったら、違う景色が見えそうだ……」
「ふふ♡ それが、女の滑りってものよ」
──♡──
(優香のオッパイ豆知識♡)
「Cカップは“リンクに映るサイズ”♡ 静止しても、氷が揺れて見えちゃうの♡」
──♡──
(数日後。)
リンクに立つ前、鏡の前で姿勢を整えると、自然と胸を意識するようになった。
スピンの軸は、胸の位置で決まる。そんな感覚が、もう体に染みついていた。
教え子にも、声のトーンが柔らかくなったと言われるようになった。
ジャンプより、ランディング後のラインに自信が持てるようになった。
「……このまま、氷の上で生きていきたい」とさえ、ふと思ってしまう。
──♡──
完──“今日もまた、女の子のオッパイにしておしまい♡”




