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第6話 基礎体力は大事

 中学の時もそうだったけど、高校でも1年生の間はとことん基礎トレーニングをやらされる。現在も絶賛走り込み中だ。

 7月も近付いて来て外はかなり暑い。今日も30度近い気温で既に汗だくだ。昔はもっと涼しかったらしい。

 30度を超えたら猛暑と言われていたとか。今なんて下手したら5月でもそれぐらい行く事もある。なんて羨ましい話だ。


「あ~クソあちぃ」


 うちの高校は学校の近くに住宅は少なく、日陰も少ない。照りつける太陽の下をひたすら走り続ける。

 田んぼとデカい池しかない、山の麓にある立地。そのお陰で遊歩道と言うか、散歩用のコースが存在している。

 それと公道と合わせて、5kmの走り込み用ルートや、10kmのルートなど様々な距離のルートがある。


 誰が考えたのか知らないが、ちゃんと数字通りの距離らしい。冬の体育では、これを利用してマラソンをすると聞いている。

 学校の周辺を周るだけになっているので、通学路とも重なる部分がある。その関係で土日の練習や、通学中などに見知った顔とすれ違う事が結構ある。例えばこんな風に。


藤木(ふじき)君! ちょっと良い?」


「構わないよ。何? 吉田(よしだ)さん」


 恐らくは帰宅途中らしい、クラスメイトで女子バレー部の吉田さんから声を掛けられた。こんな風に、わりと簡単に誰かと遭遇する。

 彼女はバレー部の女子らしい体格をしており、俺と身長は大差がない。170cm台の男は別に珍しくないが、170cm台の女子はそう多くはない。

 バスケもバレーも身長が重要なスポーツだから、背の高い生徒が大体を占める。そんな吉田さんは短めに切り揃えた髪に、活発な体育会系女子らしい明るくて可愛い女の子だ。

 誰とでも仲良くなれるタイプだから、結構男子からの人気は高い。


「私達は練習試合に行くから、明日フルコートで良いって男バスの先輩に伝えてくれない? 今そこで先生に頼まれちゃって」


「お、マジか! 分かった!」


「じゃあ宜しく~」


「おう! また明日!」


 こりゃラッキーだ。明日の練習がフルコートなら、俺達1年生も体育館の中で練習だ。もちろんこうやって、基礎体力を作るのが大切なのは理解している。

 バスケはより長く動ける選手の方が有利だ。ただそれはそれとして、やっぱりボールには触りたいしシュートが打ちたい。

 陸上も小学校の時にクラブ活動でやったけど、ただ走るだけだと俺は満足出来ない。

 大会にも出た事があるぐらいだから、走るのは苦手じゃないし嫌いでもない。だけど俺がやりたいのはバスケットボールだ。


 ぶっちゃけ体力作りと筋トレは自宅でも出来るから、部活では出来るだけボールに触れたい。

 家の近所を走り回って10km分を走破するのは簡単だし、いつだって出来る事だ。しかし自宅にバスケのコートもゴールもない。

 体育館でしか、思う存分バスケをする事は出来ないのだから。


「ちょっと急ごうかな」


 ペースを少し上げて学校へと急ぐ。嬉しい報告を届けに行かなければ。暑さも忘れて走る俺は、とても晴れやかな気分だった。

 やっぱり俺にはこれがある。バスケさえあれば、学校は楽しい場所だ。



「そうか、分かった」


 部長に報告した俺は、1年生の仲間達と合流する。信也(しんや)以外のメンバーがそこに揃っていた。一番の長身、190cmだけどかなり細い北山慎吾(きたやましんご)

 その次に背が高い180cmの橋本颯太(はしもとそうた)。身長は俺とあまり変わらないが、中学時代から優秀な選手だった真壁学(まかべまなぶ)

 俺より少し背が高く、ガタイの良いお調子者な松下裕介(まつしたゆうすけ)。背は一番低い代わりに、体力は一番ある林健介(はやしけんすけ)

 ここに俺を加えて合計7人、これでうちのバスケ部の1年生は全員だ。


「なあ裕介、信也はどこだ?」


「トイレ」


「あ~了解」


 全員本日のノルマを終了させ、ガラガラとゴールを引っ張って来て設置する。普通に3on3をする日もあれば、ただのシュート練習をする日もある。

 思い付いたプレイを試す為に、1on1をしてみたり。結構自由に好き勝手やらせて貰える。どちらかと言えば、放置に近いが。

 なんせウチの顧問はバスケ未経験。形だけの顧問に過ぎず、教えてくれる人は特に居ない。先輩達も、ただ自己研鑽を続けているだけだ。


 一旦準備だけはして、走り込みで疲れた体を一旦休める。この暑さだ、変に無理をするよりも、しっかり休んだ方が良い。


「なあ涼介、見て見て」


「おお、何だ?」


 ボールを持った裕介が、結構離れた位置に立つとゴールに背を向ける。何がしたいんだアイツは。

 裕介はちょくちょく変な事を始める所がある。自分の足が臭いと、シューズを匂わせようとしたり。とにかく変わった奴だ。

 今度は何をするのかと思えば、後ろを向いたまま思い切り後方にボールを投げた。裕介の頭の上を通る様に山なりに飛んだボールは、意外にもゴールリングに当たって弾かれた。


「あ~失敗したか」


「ちょっと惜しいの何なんだよ」


「もう1回! 次は入れるから」


 たまたまボールの近くに居た学が、拾って裕介に投げ返す。学と裕介は同じ中学だったから、奇行にも慣れたもので平然としている。

 ちなみに北山だけは誰とも違う中学から来ている。そして俺を含めた残り4人が全員同じ中学出身だ。

 この春に知り合った3人とは、人数が少ない分早く馴染む事が出来た。そこだけは唯一の、少人数で良かった所だろう。


「おー面白い事やってるじゃん」


「何だ、信也もやるのか?」


「俺達もやろうぜ涼介」


 信也はこう言うふざけた遊びが好きだから、裕介との相性が良い。結局3人で、身についても一切役に立たないシュートを打ち続けた。先輩に真面目にやれと怒られるまで。

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