第43話 昔馴染みと練習試合
GWに入ったので、世間は大体お休みモードだ。しかし俺達の様に部活動に勤しむ学生達にはあまり関係がない。
最近は顧問の教師が休めないからと、連休などに部活動を行わない学校も中にはあったりする。
しかしウチにそんなルールはないので、残念ながらバスケ未経験の顧問にも付き合って貰う。今年も練習試合の日程がキッチリ入れられており、複数の高校と練習試合を行う。
今日の相手は、中野翠や安田正樹がいる高校だ。つまり中学時代から同じバスケ部の、正樹が対戦相手に含まれる。お互いどれだけ成長したのか、勝負と行こうか。
「よっ! 正樹」
「涼介、清水とはどうなんだ?」
「そう言うお前は結局、中野とはどうなんだよ?」
「……やっぱり合わない」
今更押し付けようとは思わないが、それでも上手く行って欲しかった。そんなに相性は悪く無さそうだったのに、どうにもならないらしい。
外見だけで言えば、かなり上位に入る女の子だ。性格も良いし明るくて接し易い。それでも駄目だと言うなら仕方ない。
「……そうか。良い子なんだけどな」
「気が強過ぎるんだよな、俺としては」
「言うほどか? 強い方だとは思うが」
中野は確かに気が強い方だ。旦那の三歩後ろを歩くタイプではない。ただそれは、性格がキツイと言う意味ではない。ただ自分の意思を示せる人間だと言うだけ。
人間関係において、内面の相性が占める割合はかなり高い。結局顔だと言われがちだけど、俺はそうは思わない。
むしろ内面こそが重要な要素に思える。だって、外見さえ良ければ良いのであれば、美男美女は離婚しない事になる。
芸能人は離婚しないのか、と言う話だ。どれだけ見た目が良い者同士であっても、破局するのは良くある事だ。
そしてそれは、恋愛だけに限らない。イケメンだけど性格の悪い嫌な奴は居るし、美人でもそれは同様だ。
16年ちょいしか生きて居ないけれど、俺はそう考えている。大体の人は、同じ事を思うのではないだろうか。
「中野は涼介が貰ってやれ」
「いや彼女居るってば」
正樹は住んでいる家が近いから、わりと顔を合わせている。その関係で、たまにこの話をされる。中野は俺には高嶺の花だよ。貰うなんて、そんな上から目線で行ける訳がない。
大体アイツが好きなのは俺ではないのだから。そんな本人の意思を無視する考え方が出来るわけない。それに俺は凛ちゃんが居るんだから。
せっかく俺が上手く行ったのだから、中野にも上手く行って欲しいがままならない。相変わらず正樹の事が好きみたいだし、何とかなって欲しいのだが。
正樹に一つだけ感謝しているのは、適当に付き合って適当に捨てる様な道を選ばなかった事だ。正樹なら、やろうと思えば出来た事。
それをやらずに紳士な対応をしている点は評価している。そう言う、性格の悪い事はしない男だ。
「おい涼介! アップ始まるぞ!」
「悪いすぐ行く! じゃ、また後でな」
「おう、後でな」
少々話し込んでしまったらしい。思ったより時間が経っていたらしい。GW初日から先輩に怒られたくはないので、さっさと自校のエリアへと向かう。
練習試合の際に行うアップは、2校がそれぞれハーフコートで行うのが普通だ。フルコートは縦28メートルの横15メートルが最大サイズだ。
5人2チームで対戦するには中々広い。しかしその半分、ハーフコートに2校の生徒が集まると中々の密度だ。
両校の1年生から3年生まで、合わせて60人ぐらいの大柄な男子生徒が集まっている。中々のむさ苦しさだ。
「涼介、正樹はなんて?」
「ああいや、女子の話だよ」
「何だよ。それだけか」
バスケの話をしていたと勘違いしたらしい信也は、あっさりと引き下がった。細かく突っ込まれたら、中野の話もせねばならなくなる為、興味を持たれずに済んで良かった。
流石に女友達の恋愛に関して、全然関係ない男に教えるのは憚られる。知ったとて信也は言い触らすタイプではないが、それでも罪悪感は生まれてしまう。
「始めるぞ!」
和田先輩の合図で、ウォーミングアップが始まる。いつもの謎コールに参加しつつ、正樹達の方を伺う。あちらはあちらで、謎コールを上げている。
去年1年で分かった事だが、各校それぞれに様々なコールがあるらしい。そこは中学時代から変わらぬ伝統の様だ。そんな事を知って、何の意味があるのかは分からないが。
練習試合では、様々な組み合わせが行われた。学年同士での試合や全学年合同での試合。メンバーを入れ替えての試合。
俺達2年生は人数が少ないから、使えるバリエーションが少ないので少々苦戦させられた。
特に正樹は、俺達同じ中学出身だから誰が何を得意とするか良く知っている。勝手知ったるなんとやらで、かなりやり難い試合となった。
「相変わらず中々に面倒だな正樹」
「それは俺の台詞だけどな!」
かつてのチームメイトを相手取った練習試合は、中々に実のある内容となった。インターハイ予選を目前にした慣らし運転としては最高のGWだったと思う。ここで得たモノを、予選でしっかりと活かそう。




