第38話 大晦日、凛ちゃんの家で
クリスマスと来たら、当然年末年始がすぐ後に来る。そして現在俺は、凛ちゃんの家で歓待されていた。
「涼介君を連れて来なくなったから心配していたのよ~」
「良かったよ、凛が結婚出来そうで」
「ちょっとお父さん!」
普通、こうはならないんじゃないの? 貴様の様な若造には凛はやらん! みたいなやり取りがあるんじゃないんだろうか。
凛ちゃんの両親は、滅茶苦茶歓迎ムードだ。そう言えば、中学時代から凛ちゃんのお父さんは好意的だったな。
凛ちゃんのお母さんは、清水渚さん。凛ちゃんの母親だなと良く分かるぐらいそっくりだ。性格は結構違うけど。多分俺にだけ見せる積極性は、お母さん譲りだと思う。
お父さんは清水直樹さんで、穏やかそうな見た目をしている。実際にこの通り、凄く穏やかな人だ。
「今夜はお鍋だから、沢山食べてね」
「すみません、何か」
「良いの良いの! 気にしないで」
リビングの中央辺り、テーブルの上には土鍋が置かれていた。真下のガスコンロの炎で土鍋は熱されていた。
凛ちゃんがウチに来るのが久し振りだった様に、俺が凛ちゃんの家に行くのは約1年振りだった。またここに来られる様になって良かった。
「涼介君はまだ、バスケ続けているのかい?」
「はい、続けていますよ」
「凛が会場まで連れて行けって言わなくなったから、辞めちゃったのかと思ったよ」
「だから! いちいち言わないでよ!」
何でこう、自分の子供に恋人が出来るとアレコレ言っちゃうんだろうな。ウチもそうだったけど。親ってみんな、何処もそうなんだろうか。
そりゃウチの子は凄いから! って言う親の方がヤバそうではあるけれども。ただこう、良い所紹介とか何故やってくれないのか。
「それぐらいの歳だと上手く行かない時期ぐらいあるわよ」
「別にそう言う訳じゃ……」
「俺がハッキリしなかったのが悪いんですよ」
「涼ちゃん」
本当にそれだけだ。想い合って居るのに、いまいちハッキリしない関係が続いていた。そのトリガーを引いてしまったのは間違いなく俺なんだ。
そりゃあ凛ちゃんにも、落ち度はあったのかも知れないけど。それでも告白をさせたのが俺である以上は、そこの責任は俺が取らねばならなかった。
「ですから、正式にお付き合いの報告にと」
「あら良いの良いの! 涼介君なら問題ないわ」
「凛を貰ってくれてありがとう」
うーん、何か思った以上に早く許可を貰ってしまった。元から親交があったし、親同士は幼稚園の頃から付き合いがあったからだろうか。
何故か無駄に信頼度が高い。俺そんなに凛ちゃんの両親の前でやっていたのだろうか。
「ウチの子、昔から涼介君の話ばっかりで」
「お母さんやめて! それ以上は!」
「え、普通に聞きたいんだけど」
「涼ちゃん!?」
だって、どんな話をしていたのか気になるじゃないか。昔から俺を好きで居てくれた凛ちゃんから見た俺が、どんな風に見えていたのだろうか。
どんな行動を見ていたのか、それを見て何を思ったのか。それだけで普通に興味がある。彼女の気持ちを、知りたいと思った。
「他の子に取られたって、泣いていた事もあったよねぇ」
「そうなの!?」
「………………水野さんの時」
「あ、あぁ~」
そりゃそうだよな。俺が気付いて無かっただけで、あの頃も凛ちゃんは好きで居てくれたんだから。だから凛ちゃん、俺がモテるなんて考えるのか。
何か変だなと思っていたけど、アレがあったからなのか。今までの人生で言えば、俺を好きになってくれた女の子なんて片手で足りる。
中野に水野さん、凛ちゃんと西田さん。片手でも指が一本余ってしまう。これでモテるって言われてもな。
信也達の様に、別れてもすぐ彼女が出来る様な連中とは全然違う。認識の差がある原因が分かった。
「ほらほら、せっかく出来たんだから食べなさい」
「あ、すみません」
「お母さん達が余計な事言うからでしょ」
沢山の野菜をベースに、白身魚の切り身を入れたスタンダードな鍋だった。この時期に食う白菜って最高だよな。
メインの白身魚も良いけど、野菜達も捨て難い。あと、豆腐は基本だよな。そして、時期に関係なくモヤシは美味い。
冬場はやっぱり鍋だよな。これが一番の楽しみと言っても過言ではない。次点でおでんと肉まん。
「それじゃあ明日は、2人で初詣?」
「はい。そのつもりです」
「だったら凛、振袖着て行く?」
「まだ着られる? 中学の時のでしょ?」
振袖姿の凛ちゃんを1月1日から見られると言うなら是非とも見たい。背格好で言えば、そう大きく変わっていない様に見える。
サイズは大丈夫なんじゃないだろうか。他に変わった所なんて別に…………あ、そう言うアレね? あ~ね? まあ凛ちゃんもそこそこ有る方だもんね? これ深堀しない方が良い話題だ。
「ま、まあ着られたらで良いんじゃないかな?」
「大丈夫だと思うわよ? 楽しみにしていてね涼介君!」
それはまあ楽しみではあるんですけど、母親が言うからには大丈夫なのだろうね?
と言う事はつまり、凛ちゃんはその頃から結構有る方だったと言う事になるのでは?
俺があまり意識して居なかっただけで中学の時点で……いや、辞めようこの考察は終了だ。




