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第35話 家族への報告とこの前の続き

「あら久し振りね~(りん)ちゃん!」


「お久し振りです、(はるか)さん」


 修学旅行も終わり、冬休みに入った俺は凛ちゃんを家に呼んだ。ちゃんと凛ちゃんと付き合う事になった報告も兼ねて。

 一応はまあ、うちの家族と親交もあったし伝えない理由もないから。とりあえず、知らせるだけは知らせておこうかと。


「凛お姉さん、お兄ちゃんで良いの? もっと良い人居るよ?」


「おい(あきら)!」


 中高と全寮制の女子校に入った妹も、流石に長期休みは帰って来る。昔は可愛かったのに、最近はどんどん厄介な奴になって来た。

 もうちょっとこう、兄に優しくしようとか思わないものかね。それに俺が凛ちゃんと結婚したら、お前のお義姉さんだぞ。もっと喜べよ。


「大丈夫、私は(りょう)ちゃんが良いから」


「そうですか、不出来な涼介(りょうすけ)を宜しくお願いします」


「お前は誰目線なんだよ……」


 とりあえず報告義務は果たしたので、凛ちゃんを連れて2階の自室へ向かう。せっかくだから晩御飯を食べて行ってと母親が言うので、今日は凛ちゃんも食卓に混ざる。

 晩御飯をウチで食べて行く件を、凛ちゃんは母親に報告している。以前は何度もウチへ来ていたので、珍しい報告でもない。あっさりと連絡は完了する。


「じゃあお母さん、切るね」


「凛ちゃん、どうぞ入って」


「うん、お邪魔します」


 俺の部屋はまあ、普通だ。勉強机と幾つかの本棚、バスケ関連の本に自前のバスケットボール。テレビはリビングにしかないので、俺の部屋にはない。

 テレビに接続も出来るし、しなくても遊べるゲーム機が1台ある。パソコンは持っていない。

 動画やサブスクを観る為にあるタブレットが、1台スタンドに刺さっている。


 本棚にはバスケ関連以外だと、漫画とライトノベルのみ。文芸とかミステリーとか、そう言う類の本は無い。

 あとは何本かのゲームソフトが収まっているだけ。オタク趣味のある体育会系なんて、大体こんな感じじゃないかな。


「変わってないね」


「趣味があんまり変わってないからね」


「あっ! アレ」


 凛ちゃんの視線の先には、1つの写真立てがあった。その中には、中学の卒業式で撮って貰った写真が収められている。

 凛ちゃんと俺が、笑顔で写っている写真だ。そう、こんなものを机に飾っているんだ。諦めようとか何とか言っておいて、ガッツリ未練タラタラだった訳だ。


「ずっと飾っているんだ。大切な想い出だから」


「私もだよ。あれからずっと、大事にしてる」


 凛ちゃんもそうだったのか。結局俺達は、ただただすれ違い続けていたんだな。蓋を開けてみれば、この結果だ。

 相手の事が大好きなのに、真っ直ぐに向き合え無かった。大好きだからこそ、拗らせてしまった。

 10代には難しいんだ、恋愛ってのは。多分、一杯居るんだろうな。俺達みたいになってしまった高校生は。


「この前は涼ちゃんの話を聞いたから、今度は私も話すね」


「うん、聞きたい」


「私はね、吹奏楽がやっぱり楽しくて今も続けている」


「前からずっと好きだもね、凛ちゃん」


 中学生の時から、凛ちゃんはずっとサックスが好きだった。ジャズ音楽が好きで、小さい頃からの憧れだったらしい。

 好きな楽器を真剣に演奏する姿は、凄く魅力的に見えた。俺の試合を観てくれる様に、俺も凛ちゃんのコンクールを良く観に行っていたっけな。


「コンクールに出ても、会場に涼ちゃんは居なかった」


「俺もそうだったよ。試合に勝っても、物足りなかった」


「涼ちゃんも?」


「そうだよ。つい癖で、観客席を見たんだ」


 お互いにやっている事は同じだった訳だ。もう俺達にとって、それが当たり前になっていた。毎日連絡を取り合うのが普通で、生活の一部になっていた。

 朝挨拶を交わして、夕方一緒に塾へ行く。夜の静かな住宅地を、楽しく会話しながら帰宅する。もう、それが日常だったんだ。

 お互いにコンクールや大会を観に行って、接点がどんどん増えて行った。ちょっとした会話でも笑い合えて、辛い事はそれで全部吹き飛んでいた。


「ちゃんと話をしようと思ったら、涼ちゃんの周りにはいつも可愛い女の子が居る」


「それは誤解がない? ただの友達だよ?」


「私は気になるよ、涼ちゃんモテるもん」


 いやそんな事はと言いたい所だけど、つい最近西田さんにお断りを入れたばかりだ。全然説得力がない。

 と言うか待って欲しい、俺別にモテては居ないよな? オタク辞めたら彼女出来るって言うアレ、ガチだったって事? それだけオタクって強力なデバフなんですか?


「涼ちゃんはわりとモテます。自覚して」


「いや、そんな」


「自覚して」


「ハイ……」


 どうもそうらしいです。俺の何処が良いのか知らないけれど、そうらしい。ただどうであっても、俺は凛ちゃん一筋だ。

 モテるらしいから他の子も行こうとか、全然思わない。凛ちゃんさえ俺を好きで居てくれるなら、モテるとかモテないとか最早どうでも良い。凛ちゃんが俺の恋人、それでもう十分幸せだ。


「だから遊ばれたのかなって思ったの」


「やっぱり。ごめんね凛ちゃん」


「ううん、ちゃんと聞かなかった私が悪いの」


 そこからは、俺と大差ない葛藤と苦悩の日々だった。多少は違えど、似たような苦しみを抱えて自分を誤魔化す日々。

 自分に好意を向けてくれた人が他に現れて、でもやっぱり違うなと再確認した。やっぱり自分には、あの人が良いと心から思えた。


「涼ちゃん、嘘じゃないって証明が欲しい」


「そんなの、どうやったら」


「この間の続き、ここでして」


 その日俺は、人生で初めてのキスと言う行為の良さを知った。

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