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第27話 冬の訪れと修学旅行

「速攻!」


裕介(ゆうすけ)!」


 素早く駆け出した俺は、裕介からのパスを受け取る。ドリブルでコートを駆け抜けてゴールへと向かう。

 レイアップに入る様に見せ掛けるフェイントでマークを外し、セットシュートで得点を狙う。フリースローラインの近くから放ったシュートは、無事にネットを揺らした。


「涼介、今のは良かったぞ」


「ありがとうございます、山下(やました)先輩」


 季節も冬に入り気温もだいぶ低くなって来た。バスケの服装は、薄着で袖も裾も短い。この季節は中々にキツイ日々が続く。

 ジャージを着れば多少マシにはなるが、汗を掻いて生地が湿ってしまう方が寒い。だから結局、試合形式の練習では脱いだ方が良い。

 受験で忙しい3年生は夏の終わりに引退し、今は2年と1年しか居ない。一気に人数が減った男子バスケ部は、部員が20人を割っている。

 何だか体育館が急に広くなった様に感じて、不思議な気分になる。


「ゾーン!」


 ディフェンスに戻ると、部長を継いだ和田(わだ)先輩の指示でゾーンディフェンスを始める。通常のマンツーマンなディフェンスと異なり、特定の誰かを意識するのではない。

 自分が守るべきエリアを守備する形で自陣を守る。誰が誰を担当すると言う守り方ではないので、自分が抜かれない様にする事と、誰かが抜かれてもすぐフォローに回る事が重要となる守り方だ。


「涼介!」


「はい!」


 和田先輩の指示に従い、攻め込んで来た信也(しんや)を止めに入る。今回は信也が敵チーム側だ。お互いがお互いの得意なプレイを知っているので、中々のやり難さがある。

 それは信也も同様で、膠着状態に陥る。1年生だけの時はスモールセンターをやるが、バスケ部全体の練習になった時の俺のポジションはスモールフォワードになる。

 この場合、相対するのは信也や(まなぶ)辺りになって来る。颯太(そうた)健介(けんすけ)の様なタイプも対象となる。


 俺達1年生は、人数が少ない関係で本来やらないポジションもこなす必要があった。俺の本来のポジションはこのスモールフォワードか、パワーフォワードになる。

 下半身の筋力を活かしたプレイが可能だから、パワーフォワードも悪くない。ただプレイスタイル的にはスモールフォワードの方が楽だ。


「疲れてるんじゃないか涼介?」


「お前こそ!」


 時間にしては数秒の攻防、しかしその数秒がモノを言う競技だ。僅かな油断が失点に繋がるし、粘り強い行動が得点に繋がる。常に張り詰めた空気が漂っている。

 野球であれば外野で伸びをする余裕もあるが、バスケの場合はそうは行かない。競技によって、求められるモノは全然違って来る。


「涼介! 熱くなるな!」


「っ!? すみません!」


 今の俺がやるべきは、信也をマークする事ではない。あくまで担当エリアを守る事が仕事だ。つい信也に乗せられて、前に出過ぎていた。

 俺は和田先輩の指摘で、すぐに後ろへ下がる。頭が回る方ではないから、こう言う状況では気を付けないといけない。頭を切り替えた俺は、自分の役目に没頭した。




「おー。お前らも修学旅行か」


「はい、来週ですね」


 休憩時間になり、和田先輩との雑談に興じる。正確にはスキー研修だが、誰もそちらで呼ぶ事はない。修学旅行が集中する時期を外して、わざと12月に行われる我が校の一大イベントだ。

 修学旅行じゃなくてスキー研修だと言うなら、別途修学旅行があるのかと言えばそんなものは無い。他府県への数日間の旅行はこのスキー研修だけ。

 ただの言葉遊びに過ぎず、実態としては修学旅行でしかない。スキー研修と言い張る学校の意図は、謎に包まれている。


「女湯は覗けないからな、気を付けろよ」


「覗きませんよ!」


 やるわけないだろそんな事。俺だって男とは言え、そこまでのスケベ心はない。大体からして、先ずやる事の候補にすら上がらない。

 こうして言われるまで、1ミリも頭の中に無かった。と言うか、何故覗けないと知っているのか。まさか?


「試したんですか!?」


「俺じゃないぞ。サッカー部の奴がな」


 体育会系特有のノリみたいなモノがあるのは分かる。そう言うのは大概経験して来た。しかし、犯罪スレスレは流石にやり過ぎだ。

 ついエスカレートしてしまったのかも知れないが、駄目なものは駄目だ。俺達もつい悪ノリしてしまわない様に注意しないと。


「涼介はスキー出来るのか?」


「出来ますよ。スノボも行けます」


「へぇ? 珍しいな。あんまりやる機会ないだろ?」


「幼稚園の頃から、スキー教室に行ってましたから」


 昔通っていたスイミングスクールでは、冬場限定でスキー教室が開かれていた。数日間に渡り、山梨県に宿泊してスキーを教えて貰える。

 今思えば別料金なのに、良く通わせて貰えたものだ。両親には感謝しかない。小学4年生の時にスイミングスクールを辞めた後でも、5年6年とスキー教室に行っていた。

 スキーは4年生の時点で最上位のクラスに居たので、5年生からはスノーボードに変えた。お陰様で、スキーは結構な腕だと自負しているし、スノボもお手の物だ。


「そうだったのか。じゃあちょっと残念だな。修学旅行も山梨だし」


「まあ、何度も行ったゲレンデなので新鮮味は無いっす」


「そりゃ面白くないだろ?」


「いえ、山梨好きなんで。問題ないです」


 最近行けていなかったから、久し振りの山梨が結構楽しみな俺だった。

私が書くと修学旅行が高確率でスキーになります。何故なら母校がそうだったからです。

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