表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/51

第23話 未だに埋まらない2人の距離

涼介(りょうすけ)、ブレイクダンスやるぞ!」


「はぁ!? 何だよ急に!?」


 また信也(しんや)が変な事を言い出し始めた。いつも唐突に巻き込んで来るから油断ならない。

 今度は何だ、ブレイクダンスだと? 急過ぎるだろうが。俺達はバスケ部であって、ダンス部なら別にあるだろう。


「文化祭だよ、ステージに立つぞ」


「は!? 本気で言ってるのか?」


「当たり前だろ」


 もう決定事項らしい。聞いた話では体育館の舞台で、個人やグループで出し物をやれるらしい。それに出ようと言うわけか。

 確か、申請とかも色々やらないと駄目なんじゃなかったか? 今からでも間に合うのかよ。


「申請とか練習とか、どうするんだよ?」


「それは問題ない。それより、今からメンバーを集めるぞ」


「ちょ、お前、無計画過ぎるだろ!?」


「良いから、行くぞ!」


 相変わらずやると言い出したら聞かない奴だな。これまでの信也の思い付きで一番酷かったのは、中3の時にチャリで東京まで行こうと言い出した時だ。

 正気を疑ったが、計画は実行された。そして隣の県にすら行かずに帰って来た。当たり前だろう、ただのママチャリで山越えなんて苦行でしかない。

 結局適当な所で諦めて、そのまま帰って来たのだった。昔からこう言う所は変わっていない。

 ダンス部だってあるのに、わざわざこんな無茶な企画に付き合う奴はそう多くないだろう。




 集まってしまったよ、体育会系が男女20人も。嘘だろうお前ら、こんな適当な企画に参加するなんて。

 大体お前らだって、部活とかあるだろうよ。大丈夫なんだろうな?


「いやーダンスも興味あんのよねー」


「だよね~面白そう」


「あれやってみたくね? 頭で回るヤツ」


「あ~あれな! 首の筋肉やっぱ必要なのかな!?」


 お前ら……やる気マンマンじゃないか。もうそれはダンス部行った方が喜ばれるだろう。強制参加で参加してる俺が言うのも何だが。

 そしてどいつもこいつも見知った連中ばかりだ。信也の人脈で集めたから、当たり前っちゃ当たり前だが。

 いずれにせよこれだけ集まったのなら、今更出来ませんとか言えないぞ。大丈夫なんだろうな、信也のヤツ。


「わりぃ、待たせた! 皆、この用紙にクラスと名前を記入してくれ」


「ああ、そこはちゃんと分かってたのな」


「だから大丈夫って行ったろ?」


 そこまでちゃんとしているなら、まあ何とかなるか。期限までに提出すれば、駄目とは言われないだろう。しかし、問題はまだある。

 俺達は皆ダンスの素人だ、ダンス部は1人も居ない。誰がどうやって、ダンスを教えてくれるんだ。そこまでちゃんと、プランを用意したんだろうな。


「聞いてくれ、兄貴の友達にダンスグループをやってる人が居るんだ」


「へぇ~凄いじゃん」


「どんな人なの? イケメン?」


「今度紹介するけど、その人が練習を見てくれる」


 なるほどね、そう言うパターンだったか。ちゃんと色々用意して、プランもしっかり組んで来たんだな。信也の思い付きには、この当たりパターンと、ハズレパターンがある。

 ハズレを引くと散々だが、当たりを引くと何やかんやで楽しい思い出が出来る。結局コイツと仲良くやれてるのは、その楽しいが中々良い線行くからなんだよな。


「練習は夜19時から。市民会館にある駐車場でやるぞ」


堂本(どうもと)、連絡はどうするんだ?」


「後で俺がグループ作っとくから、そこに頼む」


「分かったー」


 当たりパターンの時は、こんな風に皆でワイワイ楽しくやれる。急に言い出した時は、どうなる事かと思ったが大丈夫そうだな。

 俺がブレーキを踏まなくても、ちゃんと成立しそうだ。だったら、俺も素直に楽しむ側に回ろうかな。

 アレコレ考えているよりも、とにかく体を動かしている方が俺も気分が晴れて良い。




 涼介が信也に振り回されて居た頃、(りん)は非常に困る事態に巻き込まれて居た。最近になって、積極的に凛に絡む様になった男子生徒が、凛へと告白をして来たのだ。


「なあ、良いだろ清水(しみず)? 俺と付き合ってくれよ」


「…………ごめん、それは出来ない」


「何でだ? 理由を教えてくれよ」


「好きな人が居るから」


 結局の所、凛はまだ涼介が好きだった。当たり前だ、幼稚園の頃から好きだったのだ。今更簡単に無かった事になど出来る筈がない。しかし、拗れた関係である事も事実ではある。


「そのわりには、そんな表情なんだな」


「貴方には関係ないでしょ」


 告白を断る凛の表情は晴れない。良好な関係であるならば、もっと明るい雰囲気で断れる。

 しかし、現状の凛と涼介の関係は良好とは程遠い位置にある。そしてそれは、凛を良く見ている相手なら伝わってしまう。


「そんな表情をさせる奴より、俺を選べよ」


「だから、貴方には関係ない。もう良いでしょ」


 その場を去る凛の、表情は未だに暗いままだ。なんてことは無い、さっさと涼介と仲直りしてしまえば良い事で、それは涼介とて同じ。

 溝を埋めないまま、高校生になってしまった。その結果出来てしまった見えない壁は、未だに崩れてはくれない。

 お互いに後一歩踏み出すだけで、再び交わる筈の道は未だに繋がらない。近くて遠い距離が、未だに縮まる事はない。

 些細な事で拗れてしまった青春の日々はまだまだ、鮮やかさに欠けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ