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第1話 とある男の子の悩み

昨年アルファポリス様で行われた『青春ボカロPカップ』に出した作品を少し修正したものです。

コンテストの目的が小説をベースにボカロ曲を作る事だったので、今までアップしていた作品とは少し毛色が違います。

真君や咲人君で私を知って頂いた方だと、ちょっと違和感がある主人公かも知れません。

 何がいけなかったのだろう。どうしてこうなってしまったのだろう。俺達の道は、いつの間に分かれてしまったのだろうか。

 確かにあの日、俺達は想いが通じ合った筈だった。それなのに今となっては、ほんのり疎遠な感じだ。

 中学生の頃は、殆ど毎日顔を合わせていたのに。普通に笑い合って、普通に挨拶して日々を過ごしていた。俺は別に、彼女の事を嫌いになった訳じゃない。ただ、気付けば見えない壁がそこにあった。


 俺がガキなんだろうか。これが大人になると言う事なんだろうか。高校生になったら、何となく女子達との距離感が変わった。変わらず話せる相手もいるけど、微妙に距離を感じさせられる時もある。

 俺はまだあの子の事を好きで居るけど、向こうは違うのかも知れない。挨拶もろくにしなくなったし、目が合ってもお互いに会釈をし合って終わりだ。

 何なんだろうな、この心の距離は。女の子って、分からないよ。






「おい涼介(りょうすけ)、何ボーッとしてんだよ。練習始まるぞ!」


「あ、すまん。すぐ行く!」


「今日はフルコートだしな、俺達も中だ」


「え、そうだっけ? 助かるー」


 6月の梅雨の時期、小雨が降りしきる中2人の男子高校生が体育館へと駆けていく。ここは東海地方のとある地方都市。松永(まつなが)市立高等学校と言う普通の高校だ。

 どこにでもある様な普通の高校で、それほど目立つ特徴はない。強いて言えば、広い池が近くにある程度。そのお陰で暖かくなると、ウシガエルの鳴き声が校舎にまで届く。

 たまに車道に出たウシガエルが、車に轢かれて平面になっている光景を目にする事もある。そんな大して珍しくもない有り触れた学校に通う1人の学生が居た。


 藤木涼介(ふじきりょうすけ)、16歳の新1年生。昔は背が低かったが、たゆまぬ努力を重ねた結果170台半ばの身長を手に入れたバスケットボール部員だ。ほんのりオタク趣味もあるけれど、そこまでどっぷりオタクでもない。

 今時の学生で、ゲームもアニメも一切触れない人など中々居ないだろう。彼もその1人で、ゲームもするしアニメも観る。

 ライトノベルも琴線に触れたら買う事もある。だけど根は体育会系で、友人達も(みな)体育会系だ。


 そんな涼介には、1つの悩みがあった。中学生の頃に、自分の事を好きになってくれた女の子が居た。清水凛(しみずりん)という、幼稚園の時から高校までずっと一緒の同い年の女の子だ。

 誰もが振り返る様な美人ではないけれど、十分女性としての魅力は持っている吹奏楽部所属の生徒。あまり活発なタイプではないけれど、暗い訳では無い。

 そんな彼女とは、高校に入ると疎遠になってしまった。理由が分からず、涼介が困惑している間に更に距離は離れて行く。


 特別何か喧嘩をしたのでも無く、傷付ける様な行為に出た訳でも無い。少なくとも本人自身の認識としてはそうだった。何かやってしまったのなら、教えてくれれば謝るのに。

 言動が気に食わなかったのであれば、改善するつもりだってある。とにかく何が原因なのか分からないまま、ただ時間だけは過ぎて行く。


 だからと言って、そればかり気にしても居られない。勉強に部活、友人達との付き合い。日々のやる事リストは一杯だった。勉強はあまり得意ではないから、家庭教師にも来て貰っている。

 強豪校ではなくとも、部活だって頑張りたい。大会に出て良い成績を出したい。バスケ部の皆で、上手くなって更なる高みを目指したい。


 高校生と言う、昔は凄く大人に見えた立場になった。だから、色んな初めてが待っていると言う期待感だって抱えている。中学生までとは違う、大人の世界へのほのかな羨望と憧れ。

 先輩達から教わるアレコレもあったりして。十分過ぎるほど、学校生活は満喫出来ている。毎日楽しく学校に通っていた。


 恋愛、そして彼女と言う存在。その点についても、何となく期待感だけはあって。高校生になったら、恋愛が1段階上がるイメージを涼介は持っていた。

 何を知っている訳でもはなくとも、漠然とした期待感だけは高まっていた。

 にも拘わらず、この結果に落ち着いてしまった。高校に入ったら、凛とそれとなくそう言う関係性が続くと思っていた。それが急に暗礁に乗り上げてしまっていた。


 今更何故なのかと聞くのも躊躇われ、それが格好悪いと思ってしまった。とある経験から、女の子の気持ちが分からないと思ってしまった。女の子の言う好きと言う感情が、自分には理解出来ないと感じてしまったのだ。


 涼介はまだ気付いていないが、それは凛の方も同じだった。少しずつ大人になって行く過程で、生まれてしまった猜疑心。涼介を信じて良いのか分からなくなり、何となく距離が出来てしまった。

 体育会系の涼介は活発で明るい。色んな女子達との仲も良好に見える。だから自分は、もう必要無くなったのではないか。そんな風に一度考えてしまったら、抜け出せない負のスパイラルに陥ってしまった。


 これはそんな2人が送る、寄せては返す波のような日々を綴った恋物語。普通の男子と普通の女子が、失った時間を取り戻して行く日々。

 お互いがお互いの想いに気付くまで、どれだけ時間を要するだろうか。2人の恋の行方はまだ分からないままだ。

予約投稿でダッと本日中に完結までアップしますので、もしよろしければ空き時間にでもお楽しみ下さい。

纏めて完結まで一気に読みたい方は、15時20分の最終話投稿以降がオススメです。

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