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幽霊屋敷の相談係(アドバイザー)  作者: 白夜いくと
【一章】幽霊ライフを満喫しよう!
5/5

賑やかなお昼御飯の記憶

「アンナ、遅い!」


 座敷童子が頬を膨らませて言った。遅い、とは言っても早く帰ってきた方だ。だって、まだトメ子さんが帰ってきてないもん。


(あ……そっか)


 一人だったから寂しかったんだな。私は座敷童子と遊びながら訊いた。


「ねぇ、どうしてトメ子さんのところに来たの?」


 座敷童子は、えへへ。と笑って答えた。


「来るよ。トメ子の孫、女の子」


 なるほど。やがてこの屋敷は、トメ子さんの家族で賑やかになる。となれば私の居場所は……、


「ただいま」


 悩んでいるところにトメ子さんが帰ってきた。大きなたけのこがエコバッグからチラッと見えた。


「待っときんさい、今炊くからや」


 私と座敷童子は、トメ子さんがたけのこご飯を作るまで縁側で待った。


 ────カーにゃあ!にゃにゃカー!!!!


 庭先では、烏ときなこの喧嘩の声が響いていた。烏には足が3本ある。おそらく公園で出会った八咫烏だろう。


(人間の姿で来ればいいのに……)


「八咫烏くんは、トメ子さんのたけのこご飯を食べに来たの。きなこさん、やめてあげて」


 烏と猫は睨み合ったあと、お互い人間の姿に化けた。減塩の中ならぬ猫烏の仲。


「アンナ、いい匂いしてきた!」

「そうだね。トメ子さんの所に行こう」


 リビングへ移動すると、土鍋にたっぷりのタケノコご飯が入っていた。幽霊だけど匂いも分かる。これは美味しいやつだ!


「縁側にる二人はなんえ?」

「お客さん。気にしないで!」


 私が答えると、トメ子さんは、「いや。気になるがな」と笑いながら縁側の2人にお茶とよそったたけのこご飯を出した。


「んんめぇー!」

「美味しいです、美味しいですよぉー!」


 江戸っ子っぽい言い方に、どこか耳に残る甲高い少年の声。私らより先に食べて。まったく。


「じゃあ、あたしらも食べようかえ」

「そうだね、もらうよ」


 私と座敷童子は仲良くリビングでたけのこご飯を食べた。トメ子さんの家に孫が来ることを伝えた。とても喜んでいた。


 さて。

 夜になった。


 このまま、幽霊としてトメ子さんの家に住み憑くのは悪いのではないかと思い、私は再び例の公園へ一人で出掛けた。


 滑り台の上。

 独りぼっち。

 座敷童子は幸運を知らせてくれる役割がある。きっとトメ子さんの幸福が終わっても親族に受け入れられるに違いない。縁起が良いって。 


 じゃあ、私は?


「お嬢さん」

「!」


 とても妖艶な男性が私の肩を叩いた。息を呑んだ。時が止まったような気がする。心臓が張り裂けそう。心臓なんて、幽霊には有ってないようなものなのに。


(呼吸が苦しい)


「とても困っている顔……どうしたの?」


 身体が動かない。

 

「……近くで話を聞かせて」


 同じだ。


「もう少し、近く……」


 体を求められた時、抵抗できなかった。あの時と。


狐夜こよるだ!)


 たぶん、きっと。絶対そうだ。体中のエネルギーが奪われる気がする。私は、きなこからもらった御札を放り投げた。


「────!」


 狐夜が怯んだ隙に、私はトメ子さんの家に戻った。これからどうするかなんて、分かんない。でも、もう身体を好きにされるのは嫌だ。


 




「……舐めて真似してくれる」


 狐夜は、公園の中で独り、月を見上げながら含み笑いをした。烏たちも恐れたのか、様子をうかがっている。


(や、や、あれはアンナさんだったような……)


 一連の流れを見ていた八咫烏は、狐夜に目をつけられたアンナを救いたいと思った。たけのこご飯の恩を返そうと思ったのだ。


 夜は、長い月とともに去ってゆく。


 朝が来て、公園には誰もいなくなっていた。


 その後、八咫烏やきなこ、そしてトメ子さんの協力のおかげでアンナは狐夜の誘惑から逃げること、それだけではなく狐夜の悩みまで解決することになるのだが。


 その経緯は、座敷童子のみが知っている。


 何故なら、アンナは今頃、成仏した先で自由に自分を生きているからだ。




 ケケ、これ見たお前。幸せになるよ!








 おしまい

放置もよくないと思い、無理矢理完結させました。こういう形になってしまいましたが、割ときれいにまとまったと思います。

長編にならなくて申し訳なかったです。でも完結はしました。そこは褒めてほしいです…!

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