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Ep1.after

真っ暗な夜道、強い雨が地面と馬を叩きつけている。

ゼエゼエと弱々しい息を吐きながら馬は弱々しく歩いていた。


「もうお前の体力も尽きそうだな」


この茶色毛の馬を借りて約3週間が経っただろうか。ほぼ筋肉の付いていない体でよく頑張ってくれた。俺は馬の進路を草むらへと変え、近くに見える岩山の近くまで走らせることにした。

 

岩山の麓につくとほどなくして家1つ分くらいの小さな洞窟を見つけることができた。安物のハーネスを外し、他の装身具も全て取り除いた。


「これまでありがとうな」


そう言って馬の体を撫でた。

馬は自分の体に着けられた全ての人工物が取り外された事に気がついたようで。嗎声をあげた後、夜の森へと駆け出していった。


ろくな餌を与えられずに育てられ超特価で売られていたあの馬。次あの商人に返せば馬肉か、それ以上に酷い扱いを受けるだろう。

生きたいように生きればいい。

あの馬が少しでも自由な時を過ごせるのなら他の事は大した問題じゃない。


「さぁ、雨が止んだら街まで歩こうか」


俺はカバンから小綺麗な枝をいくつか取り出して地面に放った。マッチを擦って炎を付ける。


その日は朝まで

雨が止むことはなかった。





翌日:早朝


可愛らしい小鳥の鳴き声で目が覚める。

この小さな洞窟の天井には"レイニーハーピー"の巣が作られていたようだ。

俺はふらふらとよろめきながら立ち上がった。

そのまま洞窟の外に出てみる。


この地方に1ヶ月以上降り注ぎ続けた"春神雨"(メリルティア)がようやく止んだらしい。 

異常気象並の大雨を乗り越えた木々。

体から美しい水滴を落としながら生き生きと太陽の光を感じ取っているように見えた。


空は薄い白雲がある程度の晴れ模様で、7色の虹がうっすらと遠くに浮かんでいた。


今日はいい一日になる予感。

そんな「子どもみたいな考え」を抱きながら俺はリュックを持ち上げる。

レイニーハーピーの美しい囀りをbgm変わりに、今日も一日が始まった。






レイニーハーピー

虹の時しか姿を現さない珍しい鳥類種。

普段の体は完全透明色。

虹の放つ特殊な光を浴びた時のみ姿を表す。


また、レイニーハーピーは虹の出ている数時間で巣を作り卵を産む。

それを可能とさせているのが鳥類種トップクラスの魔力量だ。レイニーハーピーの羽は高値で取引される高額アイテムで、主に魔法使い等のクラスが身に付けるローブや帽子飾り等に使われる。



春神雨(メリルティア)

遠い昔、春神メリルが兄である日神サンズの訃報を知った。メリルの流した涙は春にだけ影響しいつからか春に雨が降るようになったとされている。今でも春に雨が振り続けているのは、まだ彼女が泣いているからなのだろうか…。



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