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影の冒険者、最強を目指す。 〜影の魔人と契約した僕は、最速で世界を駆け上がる〜  作者: ねひつじ
四章 魏刹編・後

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【第88話】幕を閉じた物語、その後日談。


 これは、ほんの後日談。


 僕は、今回の件の事の顛末、その大まかなあらすじを聞いた。四凶や彁羅(セイラ)のこと、先代国主のこと、各地の街や村で起きていた反乱などについて。


 魔物群大行進(モンスターパレード)と四凶については解決済みで、エイヴンがトドメを刺した渾敦(こんとん)をはじめに、レンとカミーユが倒した窮奇(きゅうき)、テラとキリヤ、そしてミラが倒した檮杌(とうこつ)饕餮(とうてつ)という風に、全て討伐されている。


 ちなみに、これは開戦前から既に判明していたことなのだが、四凶の封印を解くのに守五仙は関わっていないとのこと。一見、「よかったよかった」とも思うかもしれないが、事はそう単純ではない。


 太古に結ばれた強力な封印を解く手段を、彁羅は持っているということ──つまり、世界各地にある太古の勢力、その復活の可能性も視野に入れていく必要がある。


 まあ、僕にはあまり関係ない話かもしれないけど、ノアさん達はかなり頭を抱えていた。


 そのノアさんとユナさんは、マルタがテレポート出来ない(条件的に)かなり遠い場所に飛ばされてしまっていたらしく、あれから数日後に帰って来た。当然といえばそうなのだが、かなりキレ気味だった。


 そして、ギルとラスタリフさんから語られた、ついには僕が遭遇することのなかった“もう一人の彁羅”の存在について。

 ギルとラスタリフさんを足止めしていた張本人で、結局クロノフェリアの国主のダンテさんという方に助けてもらったらしい。


 彁羅に関しては謎は未だ残るばかり。ゼノやその謎の彁羅(名前が分からない)、そして僕にキリエと名乗って姿を消したあのシスター。恐らく、あれも本名ではないのだろうが……。


 先代国主が起こした大規模な反乱についても、ディオーソさんやフェイ(なんで?)、ダンテさん、そしてヨシュアの助けもあって、無事に解決したとのこと。


 まあ、この辺はいずれ彼らの口から直接語られると思う。理由は分からないけど、ヨシュアも彁羅を追っていたみたいだし。



 と、大雑把にはこんな感じ。唯一ゼノと交戦したシリウスさんは、現在天閻宮(崩壊済み)の代わりに建てた簡易施設で天黎さんや、S級冒険者の皆と会談していた。


 そして何故か、その会談に僕も出席していた。


(そりゃそうじゃろ……逆に、お主が呼ばれん理由が分からん)


 少しずつ見えるようになってはいるけど、これでもまだ結構視界が悪いんだから、勘弁してほしい……まだ朝早いし。


「あのゼノという男は魔王と匹敵、或いはそれ以上の実力を持っていると考えてもいいと思うよ。あれは強いね」


 少し嬉しそうに、シリウスさんは言う。


「彁羅の目的は一体何だったんだろうね? こんなに大掛かりなことしてまで、魏刹を崩壊させようとする理由もよく分からないし」


 そうか、ユナさんはマルタの未来演算(ラプラス)のことを知らないのか。


 今回の作戦に関わった人たちは、マルタから直接(例の予知のことは言わずに)伝えられてるから知ってるとして、ユナさんが知らないのは無理もない。


 とはいえ、マルタが狙われてるイコールマルタのスキルが目的だと僕が気付いたのは、エイヴンの能力を知ってからなんだけど。


「え? マルタの未来演算(ラプラス)と神をも凌駕する(チェリブラム)脳でしょ? 彁羅の狙いは」

「えっ」

「え?」


 あれ? ノアさんもマルタの眼のこと知ってるのか……マルタ、僕に「誰も知らない」とか言ってたけど、めちゃくちゃ嘘じゃねぇか。


(冒険者ギルドの創設者という肩書もある手前、あれほどの能力をずっと隠し続けるのは不可能じゃろ)

 それならノアさんどころか、そこそこ知ってる人がいてもおかしくないじゃん。


 ……それじゃあ逆に、なんでユナさんは知らないんだよ。


「え、何それ?」


 ユナさんがそう言うと、ノアさんは信じられないというような顔をする。


「ア、アナタ……今までマルタと一緒にいて、知る機会が無かった訳でもないでしょう?」

「そ、そんなこと言われても……」


 そんな二人を横目に、僕は口を開く。


「彁羅のエイヴンという人物が保有していた能力を使えば、たしかにラプラスの収奪は出来たと思います」


「ハル君が倒したっていうやつだね。それにしても凄いね、彁羅を倒すなんて──冒険者ギルドでもなかなか手が出せなかったって聞いていたんだけど」


 と、シリウスさん。


「一応、時臣が過去に一人討伐しているんだけどね。だけどそれはほとんど偶々みたいなものだし……本当、お手柄だと思うわ」

「ああ、その通りだな。それに、あのエイヴンという男は相当な手練だっただろう」


 ノアさんと天黎さんに褒められて、僕は思わず顔を軽く綻ばせる。


「ホントホント! もう、S級にしちゃってもいいんじゃないかって思っちゃうよ!」

「僕も異論はないよ。それこそ、この間みたいに推薦状を書いて冒険者協会に送ってもいいかもね」

「うわっ、ラーくん天才?」


 僕の話になったので、僕は皆に話そうと思っていたことを切り出すことにした。



「僕、魔王に成ろうかなって考えてるんですよ」



「「「……えっ?」」」


 おお、良い反応。


「実は僕、先日の戦いで条件を満たしたみたいでして──」


 条件の一つである「人間を一定数以上殺害する」というのを達成した記憶は全くないが、これは恐らく、エイヴンが『強奪吸収(フラソーバー)』によって吸収していた人間の能力を、更に僕が喰ったことで条件を満たしたという判定になったのだと思う。


 ちなみにエイヴンは、あの後魔族のように身体ごと消滅してしまったらしく、敵だったとはいえ、少し寂しさを感じてしまう。


「皆さん、どう思います?」


「ど、どうしよう! ハルくんがグレちゃった!!」

「……アナタ、本気?」

「魔王の冒険者、か──うん、いいんじゃないかな?」

「あはは。本当に面白いね、ハル君は」

「俺にどうこう言う権利はないだろう。好きにするといい」


 なんだ、もっと止められるものかと思ったけど、意外とそうでもなかったな。


(まさか、此奴(こやつ)らが魔王の誕生に一々怯えると思っておったのか?)

 そりゃそうだ。


「でも、それなら魔王会談に出席しないとだね」

「魔王会談、ですか?」


 少し前に、シスターのミシュさんから人魔会談というものの存在は聞いたことがある。


「そう、魔王間の情報共有が主な内容なんだけど──二年後の人魔会談の出席する代表を選出する場でもあり、新しい魔王が挨拶する場でもあるんだ。僕のときはかなり盛り上がったよ」

「そうなんですね」


 ちょっと面白そうだけど、魔王が沢山いる場所に行くって考えたら、流石に怖くもあるな……え、盛り上がるって何?


「また魔王が増えるのね……」

「大丈夫だよノアちゃん、ハルくんは間違っても悪いことをするような子じゃないでしょ、ね?」

「……もしかしたら僕は、暴虐の限りを尽くす大魔王になるかもしれないですよ」


「やっぱ反抗期だっ!」


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