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影の冒険者、最強を目指す。 〜影の魔人と契約した僕は、最速で世界を駆け上がる〜  作者: ねひつじ
四章 魏刹編・後

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【第82話】冒険者達、作戦会議をする。


 「ほ、本当にあの魔王シリウスを連れて来てしまうなんて……」

「大丈夫だよ、レン。シリウスさんはレンを取って食べたりはしないから」


 マルタのテレポートで宿まで戻ると、早速お互いの事を紹介することにした。


 相手が相手なので、紹介するまでもなくレンはシリウスさんのことを知っているようだったが。


「ハルお兄さんは、魔王シリウスが一体どんな異名で呼ばれているのか知っているんですか……?!」

「知らないけど……優魔王とか?」


 すると、レンは信じられないといった様子で僕を見る。


「……魔王シリウス、またの名を侵略支配(インベーダー)。今のシリウス領には、かつて一つの国があったんですが──魔王シリウスは、それを内から崩壊、内乱によって滅ぼした魔王なんですよ」


 だから魔王に()()()んです、と付け加えるレン。


 ……言われてみれば、魔王ってことは“条件”を満たしたってことだよな。


 思い返して見ると、シリウスさんが使う侵略支配(インベージョン)もそんな能力だったような……あれ、もしかして結構ヤバい?


「おお、派手にやらかしとるな。見直したぞ」

「ちょっとした黒歴史だよ、あれは。勿論反省してるよ、後悔はしてないけどね」


 そう言って、いつもの笑みを浮かべるシリウスさん。


「……ま、まあ折角快く引き受けてくれたんだし」

「それはそうですけど……」


 レンの言い分も分かるけど、僕にはシリウスさんが悪い魔族には見えないんだよな……それに、僕たちにはシリウスさんの力が必要だ。


「レンは僕のことは信頼してる?」

「は、はい。それはもちろん……」

「ありがとう。僕もレンを信頼してるし、ここにいる皆のことも信頼してる。だから僕に免じて、今だけでもシリウスさんのことを信頼してほしい」


 ぽん、とレンの両肩に手を置く。


「駄目かな?」

「あ、えっ、えっと、しし信じます、信じますからっ! あ、あのあの顔が近いですっ……!!」

「本当? ありがとう、レン」

「ふぇぇ……」


「おー、始まった始まった。いつものアレじゃな」

「だーりんイケイケだね」

「ははは、本当にハル君は見てて飽きないね」



★ △ ■



 それから二日後、冒険者ギルドの一室に人を集めて作戦会議を開くことにした。


 作戦に参加する十人の内、キリヤとカミーユを除いた全員が集まっていて、この二人は緊急の依頼が入ってしまったということで残念ながら不在。


「へえ、こんなとこがあったのね」


 と、その前に、まずはミラに冒険者ギルドについて軽い説明をした。


 マルタも大歓迎みたいだし、ミラなら実力的にも申し分はないだろう。実際、一層から四層くらいまでのボスは瞬殺だったし。


「早速チーム分けをしようと思う。三つのグループに分かれてもらって、それぞれでパレードに対処するって感じかな」

「分かりやすくて良いね、チーム自体はもう決まってるのかな?」


 と、テラは尋ねる。


「そうだね。各グループにおける戦闘の“軸”になるのは、僕とテラ、それにセトさん。この三人との相性を考えてチーム分けをしたんだ」


 まず、第一グループは僕とラティとマルタ。相手の具体的な戦力は分からないけど、この三人なら、よほどのことがない限りまず負けない。テレポートもあるし、何よりラティがいる。


 ──というのは建前で、本当はマルタを命を狙う何者かから護る為、事情を知っている僕とラティだけでチームを構成する必要があったからだ。

 グループに分けたのもそれが理由で、もし僕とラティに何かあれば、マルタには冒険者ギルドまで逃げてもらう。


 第二グループはセトさんとレン、カミーユ、そしてシリウスさん。セトさんの『不死なる治癒者(ドクター・アンデッド)』によるバフは、レンとカミーユのような近接主体の戦闘スタイルとは非常に相性が良い。


 シリウスさんをここに入れた理由は、最もこのグループの負担が大きいと判断したからだ。地形的に山岳付近での戦闘になる為、一人でも多く空中戦闘が可能な人物を入れるべきだと考えた。


「……はい」


 と、レン。

 思うところはあるだろうけど、今は我慢してもらうしかない。


 第三グループは、テラとミラとキリヤ。ここはシンプルに、テラの『増減回路(アトラネーター)』との相性を考えた結果だ。増幅されたミラの魔法を食らうことになる魔物たちが気の毒に思えてくる。


「大体こんな感じだね。何か質問がある人は?」

「ちょっといい?」


 ミラが挙手をする。


「どうぞ」


「四凶っていうのがパレードに混ざってるって話だったけど、少なくともどこかのグループは二人相手することになったり、一箇所に四人全員が集中する可能性があるわよね。それに、彁羅(セイラ)? ってのもいるんでしょ?」


 ちなみに、四凶は獣の姿と人の姿を取ることが出来るらしいのだが、ややこしくなるので単位は“人”に統一することにした。


「それに関して、具体的な策はないんだ。もし一箇所に集中してるなら他は早く片付くだろうから、マルタのテレポートで援助に向かうって感じかな」


 我ながらかなりのパワープレイだと思うが、四凶と彁羅の明確な配置や強さが分からない以上、それくらいしか打てる手がないし、シンプルで分かりやすいから臨機応変に動くことも出来る。


「既に済んでいる話だったら申し訳ないんだけど、未来演算(ラプラス)で視ればかなり緻密な作戦を立てられるんじゃないのかな」


 と、シリウスさんが尋ねる。


 シリウスさんの言ってることは尤もで、それどころかこの戦いの結末すらマルタは視ることが出来てしまうだろう。


 ()()()と言うべきか、僕はマルタに『未来演算(ラプラス)』の使用を禁止した。マルタ自身の精神にも大きく関わるし、何よりその必要はない。


 何故なら、この戦いは必ず僕たちが勝つから。


 “誰一人欠けずに、勝利を掴む”。これが天黎さんと交わしたただ一つの約束。


 実は冒険者ギルドに集まる前、パレード、四凶の封印か討伐か、そして彁羅について天黎さんと再び話し合いを行った。


 天黎さんは「この条件さえ守れるなら、その他の事は何も問わない。こちらの“用事”が済めば直ぐに駆け付け、後は全て俺が引き受けよう」と言っていた。


 つまり、時間さえ稼ぐことが出来れば僕たちの勝利。制限時間(タイムリミット)があるのは相手も同じで、時間内に僕たちを突破出来なければ、相手の負け。


 恐らくその制限時間が無事に過ぎた時、それはマルタの未来視が外れたことを意味するだろう。


「ラプラスは使わない。だって皆、勝敗の分かり切った戦いなんて好きじゃないでしょ?」


 僕は皆を見回すように一瞥する。


「そうね」

「それもそうだね」


 と、次々と賛同の意見が飛んでくる。


 これで納得してしまうとは、この人たちの戦闘狂度合いにはいささか不安を覚えるが、今だけはありがたかった。


 相手の目的は未だに何一つ分からないが、知る必要はない。ただ、マルタが視た“未来”を回避する為に、全力でマルタを護るだけ。


 この先マルタがどんな未来を視てもいいように、未来は必ず捻じ曲げられるということを、僕が証明してみせよう。


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