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影の冒険者、最強を目指す。 〜影の魔人と契約した僕は、最速で世界を駆け上がる〜  作者: ねひつじ
四章 魏刹編・後

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【第81話】冒険者、そして魔王。


 「えらくやる気に満ち溢れておるな」

「そりゃやる気になるってもんだよ。今の僕は無敵と言っても過言じゃない」


 もちろん、精神的な話。


「何があったかは聞かずとも分かるが……あまり調子に乗っておると足元をすくわれるぞ」

「分かってる、欲張らないよ。ただ、手の届く範囲全てを救うだけだし」

「有頂天ではないかっ!」


 あれから数日後……分かりやすく言えば天黎さんとの会談(?)から一週間、例の制限時間(タイムリミット)まであと一週間の現在、僕はいつもの宿にいた。


「それで、具体的に何をやるのかは決まったのか?」

「とりあえずは戦力を集めようかなって。パレードは全部で三箇所、僕だけじゃ流石に厳しいからね」


 実は、変異種の魔物と戦うのもこれが初めてになる。以前、変わった個体の軍狼上位種(アーミーハイウルフ)と戦ったことがあるけど、あれは結局魔族が使役していた個体だったっぽいし。


 天黎さんは、パレードについて“不要な犠牲”を払う事を懸念していた。

 別の言い方をすれば、不要な犠牲がなければいい。僕は必要最低限の、少数精鋭でこのパレードを対処しようと思う。


 屁理屈に聞こえるかもしれないけど、このまま天黎さんの判断を待っていられるだけの時間は残ってないからね。


「それに、アテはもうあるんだ」


 すると、部屋の扉が開く。


「アテ一号だよー」

「に、二号です……」


 そう、まずはマルタとレン。レンの強さは言わずもがな、マルタには『瞬間移動(テレポート)』がある。

 全員でテレポートして直接三箇所を叩きに行こうかなとも考えたが、今回は訳あって戦力を三等分することにした。


「おかえり、二人共。どうだった?」


「テラとキリヤ、それにセトとカミーユもイケるみたい」

「ミラさんも大丈夫だそうです。何故かすごいやる気になってました」

「ナイスすぎる」


 集団戦において、テラの『増減回路(アトラネーター)』とセトさんの『不死なる治癒者(ドクター・アンデッド)』は大きなアドバンテージになる。


 ちなみに、カミーユは『超加速(アクセル)』という特殊スキルを持っていて、まあ大体文字通り。シンプルだけど、かなり扱いが難しいスキルらしい。


 ラティも入れたらこれで九人か……出来ればあと三人くらいは欲しい。

 ディオーソさんにはフェイを見てもらってるし、あまり無茶をさせるわけにもいかない。明揺が安全かはともかく。


 一人、僕の知り合いにめちゃくちゃ強い()()使()()がいるんだけど、今どこにいるか分からないしな……。


「いっそ、エレストルに戻ってセインさんとシリウスさんに協力を仰ぎに行くか……?」

「えっ」


 レンが分かりやすく驚いた反応をする。


「正気か? 雷の小僧は兎も角、あの魔王の統治領域はかなり北の方じゃぞ」

「たしかに……」


 今からシリウスさんの統治領域に行くとしたら、余裕で一週間以上掛かりそうだ。

 帰って来る頃には、パレードによる被害がかなり大きくなっているに違いない。


 情報によると、パレードが魏刹の街に到着するのがそれぞれあと三、四日とのこと。

 不思議なことに、どのパレードも最終的な目的地は明揺らしく、これで自然発生の説は完全に消えたと言ってもいいだろう。


「マルタ、シリウス領なら()()()よ」

「……え、マジ?」

「うん」


 戦力集め、もうマルタだけでいいじゃん。


「どうする? 行く?」

「……行こう」


 改めて考えてみると、魔王に魔物狩りをお願いするというのは如何なものかという感じだが、今はそんなこと気にしてる場合じゃないよな。



▲ ◯ ▼



 「なるほど。こちらが少し譲歩すれば済む話だし、条件も悪くないね」

「はい。首都デルクと、ここヴァルハを繋ぐ道を作るにあたって──」


「シ、シリウス様っ!」


 勢いよく扉が開くと、そこには一人の魔族。


「どうしたんだい? そんなに慌てて……」

「それが、あのラプラスと一人の魔族がシリウス様に会って話がしたいと……!!」


「……その魔族の名前は?」

「はい、その者はハル・リフォードと名乗っておりました」


「何だと?」

「分かった、彼らを応接室に通してくれ」

「はっ!」


「ディレ、例の交渉について『合意する』とエレストルの使者に伝えてくれ」

「承知致しました」


 側近がそう答えると、シリウスと呼ばれた男は笑みを浮かべ、席を立った。



△ ● ▽



 「久しぶりです、シリウスさん」

「久しぶり、ハル君。元気そうで何よりだよ」


 ということで、僕とマルタは現在シリウス領の“ヴァルハ”という場所に訪れていた。魏刹でいうとこの明揺で、いわば首都だ。


「久しぶりだね、シリウス」

「まさか、君が外にいるのをこの一年の内に二回も見ることになるとは思わなかったよ」

「まーね、今はちょっとやる気モードなんだ」


 言われてみれば、マルタが冒険者ギルド以外の場所にいるのは滅多に見ないよな……ラティといい勝負をしそうだ。


(最近は外に出とるじゃろ)


「それにハル君、あの時より何十倍も強くなってるね。驚いたよ」

「あ、分かります?」


 やっぱり分かっちゃうんだな、申し訳ない。


(また分かりやすく調子に乗りおって……)


「積もる話もあるけれど、早速本題に入ろうか。どうやら、あまり時間に余裕がないみたいだからね」

「はい、実は──」


 僕は簡潔に、今魏刹が置かれている状況と、協力してほしいという旨を伝えた。



「分かった、いいよ」

「……えっ、本当ですか?」


 こんなにあっさり承諾してくれるとは思わなかった……もちろん、すごく嬉しいんだけど。


「あの国主に恩を売る絶好の機会、逃す手はないよ」

「賢明だねー、天黎ほど敵に回ったら怖い人はいないよ」

「はは、違いない」


 そう言って軽く微笑むシリウスさん。


「これからセインさんにも掛け合ってみようと思ってるんですよ」

「それなら、少しタイミングが悪かったかもね」

「え、何かあったんですか?」


 すると、シリウスさんは同情するような表情を浮かべ、


「捌き切れないほど大量の用事の追われてるみたいでね。つまり、働き詰めさ」

「ああ、なるほど……」


 多分、国主の座は既に現聖騎士団長に譲っているんだろうけど……あの人のことだ、降りた後も補佐のようなことをしているのだろう。

 あれだけの事があったんだ、一ヶ月程度で全てが片付くとも思えない。


「心配しないで、僕が彼の分まで頑張るから。実は僕、結構強いんだ」


 ええ、よく知ってますとも。


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