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影の冒険者、最強を目指す。 〜影の魔人と契約した僕は、最速で世界を駆け上がる〜  作者: ねひつじ
三章 魏刹編・前

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【第68話】冒険者、そしてS級冒険者。(2)


 「速すぎ……」

『ははっ、今回は俺の勝ちだな!』


 結局、僕は頂上まで行くのに数十分の時間を要した。浮遊魔法のコントロールに未だ慣れていないとはいえ、全く追い付ける気がしなかった。

 しかも、先に到着していたギルとフェイは既に辺りの調査を開始していた。


「流石に寒いですね……」

「ん、上着貸そうか?」

「お気遣いありがとうございます、でも大丈夫です!」


蒼炎の加護(イフラ・ペクト)!』


 今のは確か前にも使ってた強化系(バフ)魔法……しかも多分、創作(オリジナル)のやつ。


「あ、暖かい……すごいね、これ」

「実は体温上昇効果があるの、最近気づいたんですよ!」

「前も思ったんだけど、フェイって支援系の魔法が得意なの?」

「えっと、得意ってわけじゃないんですけど……何故かよく身体に馴染むんですよね」

「得意じゃん、それは」


 すると、フェイはハッとした顔をする。


「私って、支援魔法が得意だったんですね!!」

「……え、どういうこと?」

「これで全部納得いきました! だから私、他の魔法の習得が……」


 ブツブツと独り言を言うフェイ。


 ……もしかして、今まで自分の得手不得手が分かってなかったってこと? そんなことある?


(この娘ならその可能性がないとは言えんのがなんとも……)


「私、これからそっちの方向で魔法を極めたいと思います!」

「……うん、悩みが解消されたみたいで何よりだよ」


 フェイの抱えてる悩みの四割くらいは、僕でも解決出来るようなものなんじゃないかと思っちゃうんだけど。


『痕跡はなし、か……まったく、ドラゴンってのは飛んでばかりで痕跡が残りにくくてしょうがないな』


 当然のように空中浮遊しながら辺りを見渡しているギル。

 背中にある噴出口のような箇所から黒く、それでいて綺麗な何かが放出されていた。星のよく見える夜空のような、何か。


『ん? あれは……』

「何か見つかった?」

『ちょっとあそこを見てくれ』


 そう言われた僕は、浮遊魔法でギルと同じ高度まで飛んで行き、遠くを見渡す。


 ここから少し離れた場所で、何やら黒煙が上がっているのが分かった。


「山火事?」

『ま、行ってみれば分かるか。それじゃ、ハルは先に行っててくれ』


 降下し、フェイを迎えに行くギル。さて、今度は僕が勝たせてもらおうとしよう。


(……お主にプライドはないのか?)


「分かっ──」


 突然、轟音が辺りに響く。

 空中にいる僕ですら、ビリビリという衝撃を受けるほどの、壮大な爆発。


 そしてその音の出処は、確認するまでもなくあの黒煙の上がっている場所だった。僕は下にいる二人の無事を確認すると、そこへ向かう。



「なんだこれ、ひどいな……」


 見下ろすとそこには、大量の人が倒れていた。

 服装からして冒険者か……どうしてこんな山奥に? それにこの惨状は一体……。


「……?」


 地上に小さな閃光が見える。

 なんだろう、救難信号かな。


 次の瞬間──、


「──っ」


 ヒュンッ! と僕の頬を何かが掠めていく。


 まさに間一髪、まあ当たってはいるんだけど、もし気付くのが少しでも遅れていたら僕の顔は吹き飛んでいたかもしれない。


 頬から流れる一滴の血、それはすぐに『再生』される。


(くくく、どうやらお主に喧嘩を売っているようじゃな)

 なんで楽しそうなのかは知らないけど、売られた喧嘩は買わなくちゃね。


 僕はゆっくりと降下すると、身体の前で両手を向かい合わせ、


影蜘糸(アラクネ)天蓋(てんがい)


 辺り一帯を空ごと囲むように細かい網目の糸を張り巡らせる。


 倒れてる冒険者は──よし、まだ全員息があるみたいだ。


「……き、君は……影の冒険者? 今すぐ逃げるんだ、アイツ()は……ヤバすぎる……!!」

「喋らないで、傷口が広がる」


 僕はぱぱっとその冒険者の傷口を糸で塞ぐ。


「ほう、俺を前にして治療行為とは……舐められたものだな」


 と、後方からそんな声が聞こえてくる。


「君はどちら様?」

「知る必要はない。どうせ貴様はここで死ぬのだからな」


 そんな如何(いか)にもなセリフ初めて聞いたんだけど。ディエスだってもう少し捻りのあるセリフだったぞ。


「まあ、実を言うと君の正体はどうでもいいんだけど……最近この辺でドラゴンとか見なかった? 結構世間がザワついてるみたいで、早く解決する為にも情報が欲しいんだ」


「……聞こえなかったのか? 貴様はここで死ぬと言っただろう」

「じゃあ、もし僕が生きてたら教えてよ」


 目の前の大柄な男は地面を強く踏み込み、こちらに飛びかかってくる。大きく右腕を振り上げ、そのままこちらへ拳を繰り出す。


潜影(センエイ)


 僕は受け止めるでもなく、影に潜って回避した。さっき魔法飛ばしてきたくせに物理でくるのかよ、見た目通りだけどさ。


 ちなみに先ほど張った『天蓋』──これは相手を逃さない為のものでもあるけど、辺りに()が当たらないようにするという役割もある。つまり、この中じゃ僕は潜影が使いたい放題というわけだ。


 この男に、勝ち目は万が一にも──、


『大丈夫か、ハル!!』

「ハルさんっ!」


 その声と共に現れたのは、フェイを抱えたギルと、ギルに抱えられたフェイだった。


 まさか、ご丁寧に天蓋を破壊して入って来るとは……確かに全部閉じた僕が悪いんだけどさ。


 影を失くした僕は、潜伏していた場所から追い出されるように無様に地面を転がった。


「だ、大丈夫ですか!?」

「……」


(その姿、よく似合っとるぞ)


「貴様……もしや、S級冒険者とやらか?」

『ここ最近の出来事は、お前の仕業か?』

「俺が質問をしているッ!」


 先ほど、僕に飛ばしたものと同じ魔弾をギルに放つ。


 しかし、その魔弾はギルへ命中する前に()()してしまった。


『お前の言う通り、俺はS級冒険者だ。だから、万が一にもお前に勝ち目はない』

「……何だと?」


『異論があるならかかってきな』

「……」


 と、二人がやりとりしている間に倒れている冒険者の治療は概ね完了。


「手伝ってくれてありがとう、フェイ」

「とりあえず何とかなりそうですね」


 倒れている冒険者の大半は気を失っているだけのようで、ほとんどが浅い傷だった。

 何人かはかなりの重傷を負っていたが、フェイが応急処置を施したおかげで大事(だいじ)には至らなかった。


「ぐっ……」


 二人の方を見てみると、ほんの一瞬の攻防の(のち)に大柄な男が空中へ吹き飛ばされていた。


 どうやら、今回は僕の出番は無いらしい。久しぶりに強い相手と戦えそうだったから、少し残念だな。


(あの程度の相手では、どちらが勝つかは明白じゃがな)


星天波(ステラ・バースト)──ッ!』


 再び轟音──空には巨大な光線が放たれており、まるで星空のように綺麗なそれとは裏腹に、とてつもない衝撃波が発生し、全てを吹き飛ばさん勢いだった。


 僕は吹き飛ばないように抑えていたフェイの身体から手を離し、周囲を見渡してみると、元々木が少ない場所というのもあって、まるで更地になっていた。


「……ちょっとやり過ぎじゃない?」

『一応、加減はしたんだが……』

「今ので???」


 本気でやったらどうなっちゃうんだよ。


「あ、ありがとう……もし君達の助けがなかったらどうなってたか……」


 僕が最初に救助した冒険者の一人がこちらに近付いてきた。

 彼は僕を知ってるみたいだったし、この一週間の努力は無駄じゃなかったってことだ。


(“影の冒険者”というのはいささか安直な気もするが……)


『一体ここで何があったんだ?』


 ギルは状況確認の意を込めて、その冒険者に尋ねる。


「実は……」


 冒険者は、事の顛末を順を追って話し始めた。


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