【第67話】冒険者、そしてS級冒険者。(1)
次の日の昼頃、僕とフェイは太珪の冒険者協会に訪れていた。
「急な任務なのに付き合ってくれてありがとな!」
「気にしないで、僕も楽しみにしてたから。彼女が僕の友人のフェイ、魔法使いだよ」
「よ、よろしくお願いしますっ!!」
「ああ、ヨロシクな!」
今から四日前の出来事、太珪に一人の魔法使いが到着した。
「久しぶり、フェイ。元気そうで何よりだよ」
「久しぶりです! 宣言通り、ちゃんと来ましたよ!!」
一体どんな手段を使って学校を休んでいるのか、非常に気になるところではあったけれど、敢えて聞かないことにした。
「早速だけど、紹介したい人達がいるんだ」
ちなみに、フェイを連れてきた当の本人であるユナさんは、フェイを僕のところに送り届けるや否や「水入らずで楽しんでおいで!」と言って颯爽とどこかへ去っていってしまった。
僕としては、ユナさんも入れて皆でどこかへ行こうと思ってたので少し残念。
僕たちは他愛もない雑談をしながら冒険者協会に向かい、待たせていた二人と合流した。
「や、待った?」
「全然? 出ていってから十分も経ってないし」
「そりゃそうか」
「どうも初めまして、エレストルから来た魔法使いのフェイです」
ぺこり、と丁寧にお辞儀をするフェイ。
「あ、どうも……わたしは蓮花です。レンって呼んでください」
「ワタシはミラ。ワタシも魔法使いよ、よろしくね」
「えっ、ミラさんってもしかして──リングストン魔法学校のあのミラリア・アシュリットさんですか!?」
やはり三人は年齢が近いだけあって、すぐにでも打ち解けそうだな。
「フェイはミラのこと知ってるの?」
「もちろんです! エレストルの魔法使いでその名前を知らない人はいませんよ!」
「へえ、すごいね」
「どう? 少しはワタシのこと敬う気になった?」
「言われるまでもなく尊敬してるよ、ミラのことは」
「……ふーん。ならいいけど」
そう言って、ミラは顔を背ける。
「それで、本当に悪いんだけど……これから僕、指名の入った依頼があるから行かないといけないんだ。二人共、フェイの案内任せてもいいかな?」
そう、実は嬉しいことに僕に直接解決してほしいという依頼が舞い込んできたのだ。
(妾の了見じゃと、その依頼を通してお主のことを試そうとしてる奴がいるぞ)
試されてるなら丁度いいじゃないか、しっかりと証明してあげよう……僕という冒険者の、その存在を。
(なんじゃそのキザな台詞は……)
それに、僕はあまりこの国に詳しくないからね。レンなら色々詳しいだろうし、ミラは魔法使いだから話も合うだろうし、配役は完璧だよ。
「そういうことなら分かったわ、それじゃ行きましょうか」
「ハルお兄さん、行ってらっしゃい。それと、行ってきます」
「魏刹、初めてなのですごく楽しみです!」
遠くなる背中を最後まで見送った僕は、依頼の場所へと向かった。
補足しておくと、この依頼があの記事の見出しに繋がったのだが、特に深掘りするような話でもないので省略させてもらう。
と、ここまでが回想。あの三日後、ギルと任務をするという話になったのでフェイを連れてくることにしたのだ。
余談だが、レンとミラを呼ばかった理由は単純に時間が合わなかったからだ。
レンは一緒に付いて来たがっていたが、どうしても外せない用事らしく、とても残念そうにしていた。
「今回の任務、聞いてるとおり“ドラゴンの群れの討伐”……だが、最終目標はその原因の究明なんだ」
「ドラゴンですか……たしかにここ最近、目撃情報が増えてるらしいですね。エレストルでも少し話題になってました」
と、フェイ。
それは僕も耳にしている情報で(マルタから聞いた)、どうやら近頃、東側諸国でドラゴン……つまりは竜種の魔物が増えてきているのだ。
竜種と古龍はまったくの別物で、危険度や強さは古龍の方が遥かに上だが、竜種は数がそこそこ多く身体も大きいので厄介なことには変わりない。
「原因不明の竜種大量発生か……」
何か思い当たることはある?
(さあな。一口に竜種といっても、翼竜のような古龍とはかけ離れた姿のものから、古龍に限りなく姿が近いものまでいるからな。ただ、魔物の不自然な発生には必ず原因があると言っていい。竜種となれば尚更な)
やっぱりそうだよな……面倒なことにならなきゃいいんだけど。まあこっちにはS級冒険者が付いてるし、なんとかなるか。
「少し前に他のS級が調査してたんだが、手掛かりは殆ど手に入らなかったみたいでな」
……S級冒険者が調査して手掛かりがないんじゃもう誰にも見つけられない気もするけど。
「これから向かうのは、最後にドラゴンの群れが発見された場所だ。結局、ここからはパワープレイになるってことだな」
「パワープレイ……ですか?」
「ああ、実際にドラゴンと接触して直接情報を集めるんだ」
ドラゴンを仮に発見したとしても、ドラゴンの飛行速度は僕たちじゃ到底追い付けるようなものではない気もするが、その辺は大丈夫なのだろうか。
それから数時間を掛けて堅衡山という、太珪から見て神洛山よりもう少し奥にある大きな山に辿り着いた。
一見した感じだと、神洛山よりは傾斜が緩やかだった。
「……これ、もしかして登るの?」
「そのとおり! ああそうだ、どっちが先に頂上に着くか勝負しないか?」
それはもちろん受けて立つんだけど、浮遊魔法を持たないフェイには少し厳しいんじゃ……。
「大丈夫だ、フェイは俺が連れてく。だから、思う存分戦おうぜ」
「分かった、それじゃ本気でやるよ」
流石ギル、頼もしい。
「そうこなくっちゃな──」
そう言うと、ギルは腰に提げていた短剣を抜き、それを自身の身体に突き刺した。
『星剣:特殊装甲形態・ゼロ』
「うわっ」
「きゃっ!」
辺り一帯に蒸気のような白煙が立ち込める。
次の瞬間、ガシャンッという音と共に白煙から姿を現したのは、全身が装甲に包まれたギルだった。
「す、すご……」
なんか背丈も伸びてるし、全身が銀色の鋼のようなもので出来ている。これが話に聞いてた“機巧を纏う”、か──めちゃくちゃカッコいいな。
「私、生で見たの初めて──わぁっ!」
ギルはフェイを小脇に抱えると、その場に軽くしゃがみ込む。
『のんびりしてると、置いてっちまうぜ?』
そして、跳躍。
いや、跳躍というより発射と表現した方が正確かもしれない。それほどに強烈な“離陸”だった。
「もう見えないんだけど……」
──サァァァァ……
「とりあえず、全力で追おう」




