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【第7話】冒険者、任務を受ける。

新章突入!


 あれから三ヶ月ほど経ったある日、僕は冒険者協会に訪れていた。


「ヘレンさん、こんにちは。この依頼良いですか?」

「あっ、ハル君! B級昇格おめでとう! すごいよ、C級になって三か月足らずでB級冒険者だなんて!」


 そう、僕はC級冒険者からB級冒険者になっていた。冒険者ランクはE〜Sまで存在し、無論上に行くほど昇級が難しくなる。

 本人の能力(戦闘能力や所持スキル等)、そして依頼・任務を熟した数などを基に受付嬢が判断し、許可が降りれば昇級任務を受けることが出来るという仕組み。


 この街(ファレリア)──というか、冒険者業が活発でないテオルスにおいて、B級冒険者はまあまあ珍しい方だ。


「そうですね。僕も驚きですよ」

「いや〜私も鼻が高いよ! ハル君ならやってくれると信じてた!」

「やめてください、流石に照れちゃいます」


(ふん。分かりやすく調子に乗りおってからに……)

 げっ……。

(げっ、とはなんじゃ! げっ、とは! 大体、お主がB級とやらになれたのも全部、ぜーんぶ妾の──)


「一応、これが初めてのB級任務なので、少し緊張します」

「良いね〜! 如何にも冒険者って感じだね!」

(おい、無視するでない! 大体お主はいつも──)


 僕が受注した任務は、『聖エレストル王国王都近郊の森に生息する軍狼上位種(アーミーハイウルフ)を討伐せよ』というものだった。軍狼は、名前の通り群れを成して、軍隊のように狩りをする狼である。


 そして、今回の標的である軍狼上位種はその軍狼を束ねる軍狼の指揮官なものだ。一匹一匹は大した強さではないが、上位種によって統率され、数が多くなれば当然危険である。


 場所は聖エレストル王国──そこそこ近いとはいえ、テオルスの外に出るのは初めてかもしれない。勿論不安もあるが、一番は高揚感だった。


 改めて、僕は冒険が好きなのだと実感した。いずれ、世界中を旅してみるのも悪くないかもしれない。


「軍狼はかなり好戦的で、違う群れ同士の縄張り争いとかもあるの。軍狼上位種を倒すということは複数の魔物を相手にするってこと。ハル君、私の言いたい事分かる?」

「パーティ、ですね」


 僕は建物内を少し見回して、そう答える。


「そう、C級まではソロでもなんとかなったかもしれないけど、B級はソロでやるには危険すぎるわ。そもそも、B級以上の任務はほとんどパーティ前提なのよ」


 パーティか──三ヶ月前、とあるパーティと一緒に冒険をした事を思い出す。

 思えば、ラティと出会ったのもその時だったか。それももう、大分昔のことのように感じる。


「わかりました。考えて置きます」

「考えて置きますじゃなくて、必ず組むこと! 良いね?」

「……はい」

「うん、それじゃいってらっしゃい。気を付けてね」


 僕はそうして冒険者協会を後にした。


 その後すぐラティを宥めることになったのは言うまでもないだろう。



★ ☆ ☆



 「──さて、出発するか」


 僕は今回の任務に向けての準備を終え、早速目的地へ向かおうとしていた。


 折角近くに行くなら、王都に入って色々見て回るのもいいな……一泊くらいしてみようか。


「おい、お主よ。計画を立てているとこ悪いんじゃが、パーティとやらは組まんのか?」


 僕の影から姿を表したその魔人の少女は、そう問いかけてきた。

 左手にはケーキが乗ったお皿が、右手にはフォークが握られていた(僕がラティ宥める為に献上したものだ)。


「うん、僕一人で行くつもりだよ。特に問題もないだろうしね」

「あまり自分の能力を過信しすぎるなよ? 妾の力を共有しているとはいえ、スキルは習得からまだ日が浅いんじゃからな」


 もちろん分かっている。確かに、僕だけで十分という自信も少なからずあるけど、同じB級冒険者を探すのが手間というのもある。

 規則的には一人でも受注条件を満たしていれば全員がB級である必要はないが、出会って間もない人を危険に晒す気はない。


 それに、王都近くの群れなら大して数も多くはないはず──というのが僕の了見だった。


「何より、一人のほうが気楽なんだよ」


 ラティはいるけどね、と僕は付け足す。


「ふむ、それならばやむ無しか……」

「そうそう、仕方ないのさ。だからこれは、ヘレンさんの忠告を無視してるわけじゃないよ」

「結果的には無視してるようなものじゃろ」

「こういうのは結果じゃなくて過程が大事なんだよ」

「ああ言えばこう言うな、お主は」


 そんな会話を終えて、僕は最後にステータスのスキル項目を確認した。


【特殊スキル:成長者】

【スキル:解析】

【スキル:隠密】

【相伝スキル:影術(3)】


「よし、じゃあ行こうか」


 僕は借りている家屋の一室を、そしてファレリアを発った。



▼ △ △



 「それにしてもハル君、もうB級かあ……」


 手元の冒険者カードを見つめる。


 あの子がB級に昇級した時に更新したものだ。カードを更新すると、そのデータが冒険者協会に残る仕組みになっている。


 データといっても、氏名や年齢、性別にランクなどの大まかな情報だけ──しかし、“冒険者協会”という名前の信頼度は非常に高く、その為、殆どの国では身分証明の役割を果たしている。


 ただ、長い間更新がされていないと入国時の審査(基準は国による)に引っ掛かったりするので、昇格の有無に関わらず定期的に更新する必要がある。


「うーん、無茶しないといいんだけど」


 本人に自覚があるかは分からないけど、C級になってから三ヶ月でB級なんて、全体的に見てもかなり珍しいのよね。そもそも、半年でE級からC級まで昇格すること自体が珍しいことなのに。


 しかもハル君の場合、魔法を一切に使わず、誰ともパーティを組まずに、完全に〝個〟の力だけでここまで来てる。


 良く言えば才能がある、悪く言えば経験に乏しいということ。だからこそ、私がしっかり支えてあげないと。


「貴方と肩を並べる程の大物になるかもね、ノアさん」


 あの子の憧れであり目標である貴方が少し羨ましい──なんて。


 とにかく、無事に帰ってきてね。


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