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影の冒険者、最強を目指す。 〜影の魔人と契約した僕は、最速で世界を駆け上がる〜  作者: ねひつじ
三章 魏刹編・前

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【第63話】冒険者ギルド、そのメンバー。


 「初めまして、マルタの名前はマルタだよ」

「初めまして、可愛いお耳と尻尾だね」


 散らかった部屋の中になんとかスペースを作り、なんとか会話が出来る状態になった。ユナさんがちゃんと服を着せたことは言うまでもない。


 ちなみに、普段着なのかセトさんのような白衣を着ていた。


「えへへ、ありがと。お兄さんはお世辞がお上手だね」


 目の前の少女から伸びている尻尾は、先ほどからずっと右へ左へと動き回っている。


「紹介するね! この子はこの場所と超A級ダンジョンを造ったシャルル・マルタその人であり、世紀の大天才なんだよっ!」

「ユナ褒めすぎ、マルタ照れちゃう」


 マルタと名乗った少女はとてもゆったりとした雰囲気で、その声を聞いているだけでこちらも眠くなりそうだった。


「僕はハル。よろしくね、マルタ」

「ん、よろしくね。お兄さんのことは聞いてるよ。こんど、いろいろ調べさせてくれたら嬉しーな」


 調べるって言われても、僕は普通の魔族だから面白いことは何も無いと思うけど。


(……普通じゃと?)

 流石に普通は盛ったか。


「マルタは何の獣人なの? 見た感じ猫っぽいけど……」

「せいかーい。マルタは猫の獣人だよ、にゃんにゃん」


 テオルスだと獣人はあまり見かけなかったから、何だか新鮮だな。

 プラチナブロンド色の長い髪に、右目を隠すように下ろした前髪。それに、左目の金色の瞳……まるでノアさんみたいだ。


 僕がマルタをじっと見つめていると、


「気になる? マルタのカラダ……」

「「えっ」」

「あ、ごめんね。獣人といえばもっと“ケモノ”って感じのイメージだったからさ。マルタは容姿が人に近いんだね」


「うん。このお耳と尻尾以外は、ぜーんぶ人間族みたいなんだ。ほら、触ってもいーよ?」

「「ちょっ!」」

「ううん、大丈夫だよ。ありがとう、教えてくれて」

「「……はあ」」


 何故か、さっきからあたふたした様子のレンとユナさん。


(……お主よ、もはや(わざ)とやっとるじゃろ?)


 ?

(“?”じゃないわっ! 見ているこっちがひやひやするぞ……)


「お二人を一緒にしておくのは、ちょっと危ないかもですね……」

「紹介しといてなんだけど、ボクもそう思うよ……」


「マルタはこの場所で何をしてるの?」

「んー、マルタは研究とか任務とか……いろいろしてるよ。お兄さん、“機巧(きこう)”って知ってる?」

「聞いたことあるけど、詳しくは知らないんだよね。よければ教えてほしいな」

「いーよ、機巧っていうのはね……」



 機巧──正式名称を“魔導機巧”という。それは特殊なカラクリと魔力によって動く機械のこと。例えば、家事を楽にしてくれる機巧や魔物を撃退する機巧、他にも生活において役立つ様々なものが存在する。


 動力源は前述した通り“魔力”であり、核となる“魔石”に魔力を流し込むことで動作するという仕組みらしい。機巧が生まれた国、機巧国家ファルパンクではそこかしこに機巧があふれているとのこと。



「そんなものがあるんだ」

「マルタは機巧づくりしたり、それを使って魔物を倒したりしてるんだよ」

「ハルくんには、機巧のすごさを教える為にもう一人紹介したい人がいたんだけどね……」


「だいじょーぶ、ギルならもうすぐ来るよ」


 すると、思い切り扉の開く音。

 そこには、茶髪に赤色のメッシュの入った青年がいた。


「悪いユナっ! 遅れた……ってめっちゃ汚え!! なんでだよ、この間掃除したばっかだろ!?」

「ギル、部屋を汚すのに時間は要らないんだよ……?」

「なんで俺が変みたいになってんだよ??」

「えへへ……」

「褒めてねーって!!」


 その青年は僕たちに気付いたのか、無い足場を通ってなんとかこちらに近付くと、手を差し出す。


「悪い、変なトコ見せちまったな……俺はギル、ヨロシクな!」


 あまりにも明るいオーラに気圧されながらも、返すように手を差し出し、握手する。


「僕はハル、よろしく」

「わたしはレンです、よろしくお願いします」

「この人はね、まさしくその機巧を身に纏って戦うS級冒険者なんだよ! 本当にすごいんだから!!」


 機巧を、纏う……? なんだその聞いただけでも物凄く面白そうな予感のする言葉は。

 どうやらレンも気になるらしく、目を輝かせていた。


「ふふふ、すごい気になってるみたいだから見せてあげてっ、ギルくんっ!!」


「…………ここでか?」

「マルタのお部屋が吹っ飛んじゃうよー」


「「「……」」」



★ ▲ ◆



 結局、お披露目は場所の問題で出来ず、今度一緒に依頼を受けるときに見せてもらうことになった。


「この流れでお預けとか、あり得ない……」

「わ、悪い……」

「いや、ギルは何も悪くないよ……本当に」


 僕はバツが悪そうに横を歩くユナさんに視線を送る。


「あ、あははー……早とちっちゃったかなーみたいな? まったく、ボクってばうっかりさんだね!」

「……」


「あの、ユナさ……ギルさん。冒険者ギルドってどのくらいの方がいるんですか?」

「ぐはっ──!!」


 レン、それは効くって。

 あの直後に、目の前で違う人を頼られるのは。


「あっいや、違いますよユナさんっ! 折角なので皆さんと話したいなって……ごめんなさい……」

「いいんだよレンちゃん……ボクなんかじゃなくてギルみたいなしっかりした主人公くんを頼りなよ……」


 あ、拗ねた。

 面倒くさ……。


「どうせ今も面倒臭いとか思われてるんでしょ──特にハルくん」


 なんか名指しできたんだけど、バレてるし。


「ま、まあそんな気にしなくていいぞ。どうせすぐに立ち直るしな……それで、メンバーについてだが────」


 マルタに慰められているユナさんを尻目に、ギルは説明を始めた。


「この“冒険者ギルド”……創設されたのはたしか三年前くらいか。名前がそのまま過ぎるのはマルタのセンスのせいだな。メンバーは十八人で、S級六人とマルタみたいな例外を除けば、全員がA級上位の冒険者なんだ」


「そーだね。だから、お兄さんとレンちゃんが入ったら二十人になるんだよ」

「冒険者ギルドですか……でも僕もレンも、まだB級冒険者なんですけど」


「超A級ダンジョンを突破したのに、それ言っちゃうの? もう十分資格はあるよ、二人ともね」


 気付けば既に復活しているユナさん。


「条件はあるが、上限はない。いつでも新メンバーは大歓迎だ!」

「そういうことなら、お言葉に甘えて……」

「わたしも入ります!」


「ん、それじゃ早速お兄さんはマルタと一緒に研究室に行こっか」

「「え?」」

「うわっそうだった!」

「……ハル、言い忘れてたことがある。冒険者ギルドのメンバーは、マルタの命令には逆らえないんだ……」


 ギルは遠い目をしていた。


「なんだその独裁制……?!」


 無茶苦茶すぎる。


「マ、マルちゃん! ハルくんはこれから用事がっ──!」


「それじゃ、あでぃおす」


 マルタが僕の身体に触れると、突然僕の視界は真っ暗になり、次の瞬間には先ほどまでいたマルタの部屋の中にいた。


「な、何が……」

「マルタのスキルだよ。マルタは瞬間移動(テレポート)出来るの。条件もあるし、スキルはそれだけじゃないんだけど、今はそれだけ教えてあげるね」


(瞬間移動じゃと……?)


 今まで、多くの魔法使いがその魔法の術式解明に命を捧げ、今も尚“転送魔法陣”という超厳しい条件付きの設置型でしか扱うことのできない魔法。


 それをスキルでいとも簡単に……マルタは一体、何者なんだ?


「それで、僕は何をすれば────」

()()()、どこまで使えるの?」


 マルタは自分自身の左目に指を差す。


「……これ、知ってるの?」

「うん、マルタもお兄さんと同じだから」


 マルタが右目を隠すように掛かっていた髪をかき上げると、そこには紫色の瞳。いわゆる、オッドアイ。



「────マルタの右眼には“未来演算(ラプラス)”って言う力があってね、遠い未来のことまで分かるんだよ」


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