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影の冒険者、最強を目指す。 〜影の魔人と契約した僕は、最速で世界を駆け上がる〜  作者: ねひつじ
三章 魏刹編・前

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【第55話】冒険者、束の間の休息。(2)


 「これとかどう?」

「めちゃくちゃ軽いですね」

「えっ、これ軽いですか……?」


 僕たちは、剣が大量に並べてある場所で僕が使う為の剣を探していた。


「気付いたらまた一段と強くなってるね、ハルくん。一ヶ月くらい目を離したら、魔王にでもなってるんじゃないかって思うよ」

「ユナさんには、僕が魔王への昇格条件を達成するような人に見えてるんですか?」

「…………まさか〜」


「え、何ですかその()は」

「あはは、冗談だよっ!」


 普段ふざけてる分、ガチっぽい雰囲気出されると普通に信じちゃうからやめてほしい。


「これとかどうですか……?」


 レンがかなり重たそうに抱えて剣を持って来る。


 そのサイズでそんなに重いことある? と思いつつ持ち上げてみると、一つ前の剣よりは圧倒的に重いが、片手で十分なくらいだった。


「あー、丁度いいかも」


 僕は場所を少し移動してその剣をぶんぶんと振り回してみる。


「……それ、たしかこの店で一番重い剣だよ、ハルくん」

「え、そうなんですか?」


(お主、力を付けすぎて感覚がおかしくなっとるのではないか?)

 マジか、もしかして僕って強いのか?

(いい感じではあるな)

 うーん、抽象的。


「どうしようかな、魔力とか流せたら一番良いんだけど……」


 鏡の剣(スペイクロソード)を気に入っていた僕は、聞いてみる。


「んー、それなら魔剣とか良いんじゃない? 雰囲気もピッタリだよ」

「魔剣ですか──でも、そう簡単に手に入るものじゃないですよね」


 僕がそう言うと、ユナさんはニヤリとした表情を浮かべ、店員さんの所へ向かう。


「店員さん、“裏”行ってもいいかな!」

「あ、はい! もちろんです、どうぞお入りください」


 何、裏って……初めて聞いたんだけど。


「いいって! ほら、早く来なよー」


 言われるがままに店の奥へ進むと、先ほどまでいた場所とはまるで毛色の違う品物の並んだ部屋。

 置いてあるのは、いかにも高級そうな防具や武器、道具だった。


「どう、すごいでしょ?」

「何ですかここ……」

「なんかすごいですね……!」


「ここはA級、それにかなりの実績がないと入れない部屋なんだよ。大きな装備屋には大体あると思うよ」

「へぇ、初めて聞きました。これ、僕が入っても大丈夫なんですか?」

「んー……分かんないけど良いんじゃない? ボクが付いてるから」


 S級の顔パスすごいな、本当にどこでも入れるんじゃないか?


「ラティ、出ておいで」


 すると、影の中からひょこっと姿を現すラティ。

 ちなみに、頭だけ。


「ここなら大丈夫そうだし、一緒に見ようよ」

「それなら影の中からでも十分ではないか」

「……ほら、引きこもってないで出てきなさい」


 僕はぐいっとラティの腕を引っ張って影の中から引きずりだすことに成功した。


「い、嫌じゃ……あの赤髪と同じ部屋にいとうない……」

「えっなんで!? なんかし……てたね、ごめん」

「……ユナさんって、もしかしなくても小さい子好きですよね」


 僕はレンとラティを一瞥(いちべつ)してから、再びユナさんを見る。


「誤解を招くような言い方だなあ……可愛いものは可愛い、それだけだよ!」

「なるほど、どうやらお主と同じ趣味のようじゃな。此奴も先日、そこの古龍の娘をイジもごごご……」

「こらこら、ややこしいことになるからやめようね」


 結局、僕はラティ肩車しながら装備を物色し始めた。


 誰も使ってるのを見たことないような武器だったり、噂に聞いたことのあるかなり希少(レア)な道具があちこちに並んでいる。


「魔剣は特別な力を持っておることが多い、お主との相性を考えて選ぶと()いぞ」

「相性か……やっぱり、スピード重視の戦い方が多いから、それに合ったやつが良いな」

「しかし、ただ軽い剣が良いというわけでもないんじゃろ?」

「……うん」


 さも当然のように心を覗かれていたことには触れないでおくとして(慣れた)、ラティの言う通り、僕が今欲しいのはなるべく重い剣。


 あの時、僕の攻撃は天黎に「軽い」と一蹴され、折角の好機をふいにしてしまった。だから、今の僕には“重さ”が必要だと考えたのだ。


「あの攻撃を受け流せる人間はそうそうおらんがな……重さを重視しすぎるあまり、長所である速度を捨てるような真似はするなよ」

「大丈夫、それはちゃんと分かってるから」


 ざっと見た感じ、どの武器も基本重量級っぽいから、後は相性を考えれば良さそうだな──これとかどうだろう。


「ふむ、ヘルトミラドか……たしか、自身が魔剣に流した魔力より弱い魔法を完全反射できる効果を持っておったな」

「それ、めちゃくちゃ強くない?」

「ま、使い手次第じゃな。反射にも技術が必要な上、あまりに強力な魔法には無力じゃからな」

「へえ……それじゃこれは?」


 僕はすぐ近くにあった別の剣を手に取る。


「グレリアスじゃな。魔力を込めて斬ると、同じ箇所に時間差で二度目の斬撃が発生するぞ」

「よく知ってるね……」

「ああ、知人に武器マニアがいてな──よく話を聞かされておったんじゃ。今は生きているのかすらも分からんがな」


 上目遣いにラティを見ると、物憂げな表情をしていた。


 やっぱり、四百年もあんな所にいたら外の世界にどれだけの変化があったのかなんて分からないよな。

 四百年前の時点でのラティの知り合いは、どれだけこの時代に残っているのだろう。


「これにしようかな、なんか面白そう」

「そんな理由で決めて()いのか?」

「応用効きそうだし、重さも十分だからね」


 値段は──うわ、流石に高いな。普段あまりお金を使わないから買えるには買えるけど、(しばら)くは節約生活になりそうだ。


「えぇっ、本当に良いんですか?」

「折角強くなったのに、装備が追い付かないんじゃ勿体ないからね! ほら、早速付けてみよっ!」


 あちらでは、ユナさんがレンの装備を見繕っていた。どうやら、装備を買ってもらえるらしい。

 昨日、レンのオープンフィンガーグローブが龍人化状態の攻撃に耐え切れずに壊れてたみたいだし。


 そうして、僕たちは各々の買い物を済ませて店を出た。時間はそれほど経過しておらず、まだ昼前といった具合だった。


「早速これ、試してみたいんですけど」


 僕の背中に提げられている鞘には、今度こそ剣が収められていた──しかも、魔剣。

 こんな簡単に手に入るものなのかと驚きはしたが、A級上位の冒険者には特別珍しいものでもないらしい。


「それじゃ行っちゃう? ダンジョン。幸いなことに、この街はダンジョンには困らないからね!」


 ということで、僕たち三人は太珪の近くにあるダンジョンに向かった。


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