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【第52.5話】S級冒険者、そして調停者。


 これは、ボクが神洛山に行くに至った経緯。


 少し前、ボクは機巧国家ファルパンクでの任務を終えて一段落していた。



「今日はありがとな、ユナ。こんな時間だ、気を付けて帰れよ」

「うん、ギルくんも気を付けてね!」


 目の前の青年はギル・ゼクシオ。同じS級冒険者で、ファルパンクの国主ルヴァリ・ゼクシオの息子。変わった力は持っていないけど、特殊装甲機兵の『ゼロ』に変身して戦う、カッコよくてめちゃくちゃ強い冒険者!


 今回はファルパンクでの任務だったから彼に協力してもらったんだけど、そのおかげで予想よりも早く任務が終わっちゃった。



「よしっ、これでハルくんとの約束の日まで随分と暇になったし、どっか遊びに行こっと!」


 うーん……でも、時間があるとはいえ東側諸国は遠いし、やっぱりテオルスに行こうかな。いくつか依頼を受けて、ついでにハルくんに会いに行こう!

 あ、ハルくんもどうせ暇だろうし一緒に依頼をやるのも楽しそう……。



 そんな感じで、半日ちょい掛けてテオルスのファレリアに向かったボクは、冒険者協会に訪れていた。


 深夜だけど、受付は交代制だから何時でも依頼や任務を受けれるようになってるんだよね。更にボクの調査の結果、この時間にはヘレンちゃんがいるのだ!


 ……ボクの調査が間違っていなければ、ヘレンちゃんってずーっと受付にいるけど、大丈夫なのかな。


「ヘレンちゃーん! 手に負えない依頼とか来てないー?」

「あっ、ユナさん! お待ちしてましたよ」

「およ? もしかしてボクに指名入ってる依頼があるの?」

「あ、いえ……そういうわけではないんです。ユナさん宛に言伝を頼まれてまして」


 冒険者協会経由の言伝ってことは、やっぱり依頼関係かな? もしそうなら、なるはやで終わらせちゃおっと。


「ハル君からなんですが──“楽しみすぎて先に魏刹へ向かいました。待ってます”、と……」

「……へっ? それじゃ、ハルくんはもうファレリアにはいないの?」

「はい……昨日の昼頃に、ここを出て行ってしまいました」


 ていうか、楽しみすぎてって何? え、なんで先行っちゃうの?? 魏刹じゃなくてここで待っててよ!!


「ぐあーっ! やられた!! くっ、ハルくんのしたり顔が目に浮かぶ……!」

「あら、奇遇ね」


 その声に振り返ると、ノアちゃんがいた。


 またの名を、“調停者”。冒険者どころか、世界中にその名を轟かしているS級冒険者。忖度なしに、めちゃくちゃ強い!


「ノアちゃん?! 何でここにっ!?」

「私は依頼だけど。そっちは?」


 ノアちゃんはそのまま受付に向かうと、「はいこれ、調査書」と言って紙を他の受付嬢さんに手渡す。


「そうだ、ノアちゃんってこれから暇だったりする?」

「んー……まあ一応、緊急のものは特にないけど。流石に寝ようかな──」

「よし来たっ! それじゃあ今から、一緒に魏刹に行こう!!」

「え、待って……」

「いいからいいから! ヘレンちゃん、また来るねー!」


 そうしてボクは、ノアちゃんの手を引いてそのまま冒険者協会を後にした。



「へへへ……やっぱり、やられたらやり返さないとね」

「はあ、一体何に付き合わされるのやら……」


 ノアちゃんはハルくんの憧れの人だから、もしボクが連れて行ったらめちゃくちゃ驚くだろうなあ。


 今から魏刹の首都明瑶(メイヨウ)を目指すなら、到着は昼過ぎくらいになるかな。


「魏刹といえば、何かとても大変なことになってるって聞いたんだけど、大丈夫なの?」

「あー、古龍討伐作戦のこと? それなら大丈夫! これから魏刹の国主に掛け合って特別依頼を取り下げてもらう予定だったから!」

「……それ間に合うの? 予想以上に人が集まったとかで、予定より早めに開始するって話らしいけど」


 え、それ初耳……ボクの見立てだとまだまだ余裕があったはずなのに。

 もしかして、もうすぐ天下武神典礼だから冒険者たちが皆やる気になってるのかな……どうしよう、完全に忘れちゃってた。


 ここから神落(シンラク)山なら、明揺よりは近いよね。ボクたちならかなり時短出来るし……。


 よし!


「ノアちゃん、一緒に山登らない?」

「……」


「そ、そんな分かりやすく嫌そうな顔しなくてもいいのに! 一生のお願い!」

「それ、この前も聞いたんだけど」

「じゃあ今月のお願い!」

「希少性を下げてどうするのよ……こんなことなら、時臣かクロエを身代わりに連れてくれば良かったわ」


「流石にそれは二人が可哀想だよ……」

「どうしてその可哀想は私には適用されないの?」


 そんなこんなで、ボクはノアちゃんと一緒に(半ば強制)神洛山に向かうことにした。


 途中で神洛山の空──正確には暗雲が綺麗に割れたりした時は驚いたけど、ボクたちは無事目的地に辿り着いたのでした。


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