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影の冒険者、最強を目指す。 〜影の魔人と契約した僕は、最速で世界を駆け上がる〜  作者: ねひつじ
三章 魏刹編・前

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【第52話】武神、そして冒険者たち。


 『覇道(はどう)


 その両の瞳には()()の模様が浮かんでいた。


 天黎は構えを取る──。


「あれは……皆さん、攻撃に備えてくださいっ!」


『──瞬風(しゅんぷう)


 気付けば天黎はミラの目の前まで接近しており、今すぐにでも蹴りを繰り出しそうな勢いだった。


「魔法使いは接近されてはいけない、これは常識だ──」


外界を断つ氷の鳥籠(アルヴィス・ケージ)

月詠(ツクヨミ)──』


──そして、暗転。


 月詠で一瞬だけ最高速度に達した僕は、素早くミラの前に飛び出し、天黎の蹴りを同じく蹴りで相殺、周囲に強烈な衝撃波が発生する。


「重っ──!」


 なんだよこの蹴り、脚に1トンの重りでも入ってるのか?


 背後に目をやると、ミラの周りには彼女を守るように氷で造られた鳥籠が出来ていた。どうやらヨシュアの魔法によるものらしい。


「ミラ、気を抜くな」


 と、ヨシュア。


「……ワタシってお姫様だったっけ? これじゃ何もできないんだけど」

「大人しく守られててよ、魔法使いさん」


 僕はそう言うと、一度天黎から距離を取った。


「はぁっ!」


 その天黎の背後にはいつの間にかレンがおり、鋭い拳を繰り出していた。


 しかし、レンの攻撃は天黎の腕で防がれる。またしても強烈な衝撃波、それはレンのその一撃の強力さを物語っていた。


影掌底(えいしょうてい)!』


 僕はその隙を逃さず、素早く距離を詰めて技を繰り出す。


 月詠で威力を底上げし、更に加速による最大速度で繰り出された最高威力の一撃──。


流水(りゅうすい)


 にも(かかわ)らず、その一撃は軽く流されてしまった。


「速いが、まだ軽い」


 腕を掴まれ、勢いを利用されて投げられた僕の身体は宙に浮き、思い切り地面に叩きつけられそうになる。


『“止まれ”』

「……!」


 天黎の動きが停止した瞬間、地面にもう片方の手をつき、そのまま蹴りを繰り出す。結局、この蹴りも命中する直前で防がれてしまった。


──月が沈む。


「くっ……」


 流石に限界か。

 それに、反動のせいで月詠はもうこの戦いじゃ使えそうにないな。


「君も使()()()のか」

「……何の話ですか?」


「その()の話だ」

「眼……?」


 反動によって生じた痛みの残った左眼に手を置く。

 もしかして、天黎の()()も似たような力なのか?


「妾を前に雑談とは、いい度胸じゃな」


影の踊り子ダンサー・イン・ザ・シャドー

流水(りゅうすい)


 ラティの繰り出した無数の斬撃は流され四方に飛んで行き、命中した樹木を両断していた。


 僕たち当たったらどうするんだよ……。


失われた光シャドーライト・シフト


「わっ、何も見えません……!」

「ちょっと、巻き込んでるわよ!」


 突然、何かに腕を引かれる僕。


影蝕(イクリプス)

飛花流落(ひかりゅうらく)


 闇に包まれていたその空間は次の瞬間、轟音と共に崩壊する。


 ラティによって奪われた視界が元に戻ると、驚きの光景が広がっていた。


 辺り一帯の樹木がすべて、綺麗さっぱり両断されていたのだ。


「彼女は本当にハルの仲間なのか?」


 ヨシュアが言う。

 次の瞬間、いつの間にか僕たち全員を囲んでいた鳥籠は、音を立てて真っ二つに崩れ落ちた。


「な、何が起きたんだ……?」


 そこに立っていた天黎、その腹部には斬撃痕があり、血が流れていた。


「……防ぎ切れなかったか」

「誇って()いぞ、この技を受けて五体満足だった奴は貴様で三人目じゃ」

「まさか仲間すらも巻き込むとは──完全に予想外だった」

「当たらぬよう調整するつもりではあったが、その必要はなかったようじゃからな」


 つまり、この鳥籠が僕達への攻撃を防いだってこと

か。


「この魔法が一撃で壊されたのは初めてだ。まだまだ改善の余地アリだな」


 ヨシュアは言った。

 さっき僕の腕を引いたのはヨシュアだったのか。流石の判断力だな。


「はあ……死ぬかと思ったわ」

「すごく怖かったです……」


 今まで僕が見たラティの技の中で一番の大技だった気がする。

 それに、天黎はどうやってあの攻撃によるダメージをあそこまで抑えたんだろう。


「さて、この状況でもまだ戦うつもりか?」

「ああ、俺はまだ生きているからな」

「お前のような奴は、そう遠くない内に死ぬぞ」

「承知の上だ。だが、それは今日ではない──」


業火炎拳(ごうかえんけん)!』


 その聞き覚えのある詠唱と共に現れたのは、四神の朱雀だった。

 こちらへ向かってくる朱雀、真っ先に反応したのはレン──翼で朱雀の方へ一直線に飛んでいくと、相殺するように拳をぶつける。


「お引き取り願えますか……! 今、貴方と戦ってる場合じゃないので!」

「ちょっ、今カッコいい登場シーンだったのに!」


 と、朱雀。


 龍の心が馴染んで完璧に扱えるようになったら、とんでもないことになりそうだな。翡翠の紋章というのもまだ発現していないらしいし……。


「がっはっは! 漸く我らの出番のようだな!」

「もう一度戦う機会が訪れるとはな……白銀、琥珀!」


 盾を持った大柄な男と先ほど戦った青龍が現れ、更に冒険者がこの三人に続くように集まってくる。

 例の作戦に参加している冒険者全員というわけではないだろうが、それでもかなりの数だ。


「げっ、またアイツ? しかも玄武(ゲンブ)までいるし……」

「場所が開けて戦い易くはなったが、流石に数が多いな」


 まだまだ冒険者が集まってくる可能性を考えたら、なるべく長期戦は避けなければいけない。


 月詠が使えない今の僕で、どこまでやれる?


「決戦と行こう、影の魔人」

「ああ、幾らでも相手してやるぞ────」



「ストーーーーーーーーーップ!!」


 その時、とても大きな声が響き渡った。



 僕だけでなく、その場にいた誰もが動きを止め、その声の方を見る。


「何これ、どういう状況なの?」


 僕は思わず息を呑む。

 まさか、こんな場所で再会するとは思わなかったから。


 そこにいたのは、S級冒険者のユナさん──そして、同じくS級冒険者のノアさんだった。


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