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影の冒険者、最強を目指す。 〜影の魔人と契約した僕は、最速で世界を駆け上がる〜  作者: ねひつじ
三章 魏刹編・前

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【第43話】冒険者、作戦会議をする。(2)


 「今回の作戦を立てるに当たって、一番大事なことなんだけど──貴方たち、どれくらい強いの?」


 と、ミラは首を傾げてそう尋ねた。


「どれくらい強いのかって訊かれても、どういう基準で答えれば良いのか分からないんだけど」


 なんだろう、スライム百匹分とでも言えば良いのだろうか。


「んー、それはそうね。というかそもそも、貴方の職業すら知らなかったわ。格闘家なの?」

「いや、見ての通り剣士だけど……」

「……どこを見たら剣士って分かるのか教えてくれる? もしかして、そのお飾りの鞘?」

「あ、やっぱりハルお兄さんって剣士の方だったんですね……!」


 あれ?


「──お主、あの剣が壊れてから一度もその鞘に剣を収めておらんぞ」


「……完全に忘れてた」


 それじゃあ僕は、ずっと空っぽの鞘を一丁前に背負ってたってことか? 傍から見たらとんでもない間抜けじゃないか。


「あははは! それ、オシャレかなんかだと思ってたわ!」

「……ミラにはこれがオシャレに見えるのか?」

「そんなわけ! ちょーダサいと思ってたけど、別に本人の自由だし言わなかっただけよ! あーホント面白い! あははははっ!!」


 なんでだよ言えよ、ダサいと思ってたなら言ってくれよ。一番言いそうなタイプだろ。


「わ、わたしは良いと思います。不殺の剣士みたいでカッコいい、みたいな……?」

「レン、君は“時に優しさは人を傷付ける”ということを覚えておいてくれ」

「ご、ごめんなさい……」


 しかもフォローが雑だ……不殺の剣士って何だよ。


「もしかして、ラティも気付いてたの?」

「ああ──だが、今のお主は剣がなくても十分じゃからな。剣はもう使わないものだと思っておったぞ」


 くっ、こっちも理由が理由だけに責められない……どう足掻いても完全に僕が悪いのか。


「はあ……久しぶりにこんな笑ったわ……」

「そりゃ良かった。わざわざ空っぽの鞘を背負ってた甲斐があったよ」

「それで何だっけ? 貴方の職業──あ、そうか! 不殺の剣士! ぷっ……あーはっはっは!」

「よし、表出ろ。不殺の剣士とやらの実力を見せてやる」

「ふふっ」


「いつまで遊んどるんじゃお主らは……」


 とりあえず、空っぽの鞘は外しておくことにした。



「ラティの言うとおり、僕は剣を使わなくても戦えるよ」

「ふーん、魔法とか使うの?」

「まあ、そんな感じ」


 慣れている分、剣があった方が戦いやすいのだが、影術の汎用性があまりに高すぎて「別に無くてもいいか」という考えになりつつある。

 少しの間なら、月詠(ツクヨミ)を使って剣を出すことも出来るし。


「わたし、対人戦の経験はあまりなくて……」

「仕方ないわ。対人戦なんて、経験がある人の方が少ないもの」

「そうだね。僕もそれほど多いわけじゃない」


 ……ミラ、対人戦は得意って言ってたけど、どこで経験したんだ?


「この討伐作戦、間違いなくかなりの数のA級冒険者が参加しているわ。二十はくだらないでしょうね」

「二十か──A級以外も含めたら、冒険者の総数は軽く百を超えそうだね」

「そうね。だから、ワタシとハルで五十人ずつ相手するのが一番手っ取り早いわ」


 僕に期待しすぎだし、とんでもない自信だった。


「それだと、国主を相手する頃には疲れ果ててそうなんだけど」

「あはは、五十人の相手は出来るのね? 大丈夫よ、こっちには影の魔人がいるじゃない」

「……」


 それはつまり、ラティを国主にぶつけるということ。確かに、最も合理的で最も成功率の高い作戦だろう。


「いや、でもラティは──」

「面白い、乗った」


 うわ、乗っちゃった。


「折角じゃ、()()の魏刹国主とどちらが強いのか比べてやろう」

「出た、長寿ジョーク」


 その当時っていつだよ? 少なくとも四百年以上前なの面白すぎるだろ。

 というか、魏刹ってそんなに前から国主制だったのか?


「それに、ガルグの様子も気になるしな」


 ラティはレンを一瞥し、そう言った。


「ラティさんって、お父さんに会ったことがあるんですよね?」

「まあな、古代四龍の奴らとはいっつも喧嘩ばかりしておったぞ」

「け、喧嘩ですかっ?! てっきり仲が良かったのかと……」



 古代四龍、それは太古の時代にこの大陸を支配していた四匹の龍。魔物として現存している竜族(ドラゴン)竜人族(ドラゴニュート)等とは一線を画す存在。


 これまた太古の時代、突如現れた二人の英雄によって大きく力を削がれ、それからは大陸の端へ追いやられてしまう。現在、四龍の内の一匹は討たれ、残りの三匹は行方をくらましている。


 何故これまで残りの三匹の龍が討たれなかったのか、古龍自体が発見されにくいのもあるが、何より“未だに力が強すぎて討伐が不可能”という理由が最も大きかったという。



「喧嘩するほど仲が良いって聞くけど、もしかしてそんな感じ?」

「うむ、ガルグが妾をどう思っとるかは知らんが……少なくとも妾は嫌いではなかったな」

「古龍ガルグといえば、唯一大体の所在が割れてるのよね」


 そう──他二匹の龍とは違い、古龍ガルグは長い間魏刹のどこかに居を構えているのだ。


「わたしの一族が匿っているので、正確な居場所はバレていないはずだったんですが……」

「レンの一族って、古龍と付き合いがあるの?」


「はい。わたしの一族は、翡翠を司る仙人の一族なんですけど────」


「……」

「……」

「……」


「「……えっ?」」

「おいおい、びっくり人間過ぎるじゃろ……」


 聞けば聞くほど驚きの事実が判明していく。


「ってことはレン、君は──古龍と仙人の混血(ハーフ)ってこと?」

「そういうことになりますね!」

「やっぱりそういうことか〜」


 いや、どういうこと?


「仙人って言ったら、あの魏刹の都市圏から離れた山岳に住んでるって噂の?」

「そうですね」

「ほ、本当に実在したのね……」


 と、まるで神話生物でも見るかのような視線を送るミラ。


「流石にもう何もないよね? 後から実は二百歳でしたとか()めてよ」

「あっ!」

「えっ? 嘘でしょ──」


 二百歳というだけじゃ飽きたらず、実は魔王でしたとか言い出すんじゃ……。


「冗談です!」


 冗談だった。


「こら」


 レンの額を人差し指でつん、と突く。


「えへへ……」


 楽しそうに笑うレン。


 レンにも冗談を言えるだけの余裕が出てきたのなら、とりあえず良しということにしておこう。



 レンの話によると、翡翠の一族は古龍と深い交流があるらしく、古龍を仙術で匿っていたらしい。元々それほど人が訪れる場所ではなかった為、滅多なことがなければ居場所がバレるはずはないとのこと。


 しかし、何処からか情報が漏れ、今回の古龍討伐作戦へと繋がった。それが偶然訪れた冒険者などによるものなのか、はたまた……。


「仙術か……」


 ラティは何やら考えごとをしているようだった。


「そういえば僕、討伐作戦がいつ始まるのか知らないんだけど」

「ワタシが聞いた話じゃ、人が集まり次第開始って感じらしいわよ」


 ということは、正確な日時は分からないのか。


「じゃあ、人さえ集まらないようにすれば作戦は始まらないんじゃない?」

「そりゃそうでしょうけど、どうやって止めるのよ?  『参加しないで〜』、で済めば良いわね」


 違いない。


「それなんですけど……実は、既に参加人数は定員をオーバーしてるんです」

「え、それじゃあ──」


「明後日か、遅くても明々後日には始まってしまうと思います……」

「ちょっと、嘘でしょ? 定員オーバーって……もうそんなに集まってるの?」


「先ほどは言いそびれてしまったんですが──わたしが魏刹を離れた時点で、既に二百人近くの冒険者が参加していたと思います」

「……まずいわね。ワタシとハルで百人ずつ倒せばどうにか──」

「流石に無理だって」


 多勢に無勢がすぎるだろ。一瞬でけちょんけちょんだ。


「定員オーバーと言っても、予定より多かったというだけで減らすつもりはないみたいで……」

「それじゃ、その二百人近い数の冒険者がそのまま僕たちの相手になるってことか」


 少し──いや、大分(だいぶ)戦力が足りない。

 翡翠の一族を戦力に入れて考えたとしても、二百人もの冒険者を相手にするとなると厳しい戦いになるだろう。


「それに、魏刹には“四神”が──」

「げっ、そういえばそうだったわね……」


 四神……? 聞いたことはあるはずなんだけど、何だっけ?

 

「おいお主ら、もしやその数の相手と馬鹿正直に正々堂々戦うつもりではあるまいな?」

「そりゃ、僕たちは地の利を生かして奇襲とか出来るだろうけど……」


「そうではない。こちらには、彼奴(あやつ)がおるじゃろ?」


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