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影の冒険者、最強を目指す。 〜影の魔人と契約した僕は、最速で世界を駆け上がる〜  作者: ねひつじ
三章 魏刹編・前

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【第41話】冒険者、仲裁をする。


 「ふふ……」

「なんだか楽しそうだね」

「いえ、とても仲が良いんですね。お二人は」


 僕たちは冒険者協会を後にすると、早速街の外へと向かっていた。


 少し前までと比べると、冒険者とすれ違う頻度が高くなった気がする。新生魔王の一件から時間が経った今、他の国からも多くの冒険者が訪れているのだろう。

 それがただの興味本位なのか、そうでないのかは知らないけど。


「そうだね、ヘレンさんにはとてもお世話になってるよ。あの人がいなかったら、今の僕もいないと思う……本当、返しきれないくらい与えてもらったよ」


 当時、記憶を失くして路頭に迷っていた僕を拾ってくれたのがヘレンさん。あれからまだ一年ぐらいしか経ってないのか……。


「良いですよね、そういうのって。憧れちゃいます」


 その言葉には何か含みがあるように感じた。



 それから、ちょっとした雑談をしながら街を歩いていると、


「──はあ? だから、アンタたちにもう用は無いからどっか行ってって言ってるんだけど、聞こえなかった?」

「おい、あんま調子に乗るなよっ!!」


「……」


 何やら、街中のかなり目立つ場所で揉め事が起きているようだ。まさか、この街でああいうのを見ることになるとは。

 他所がどうかは知らないけど、治安はかなり良い方のはずだ。


 やはり物珍しいのか、少しだけ人集りも出来ている。


「ワタシの方が強いんだからそりゃ調子にも乗るでしょ? それとも何、ワタシと戦いたいの?」


 めちゃくちゃ強気じゃん、あの子。金髪の華奢な魔法使い──対して相手は大男。こちらも冒険者だろう。

 よくもまあ自分より一回りも大きい相手にあそこまで強く出れるな。


(ま、それだけの実力はあるようじゃな。あんなチンピラ如きには負けんじゃろ)

 そりゃすごいな、僕が出るまでもないってことか。


「てめぇっ! いい加減に────」

「ハ、ハルお兄さん! 止めませんか……ってもういない?!」


「──── 一旦落ち着きませんか、二人とも」

「んだてめぇ!!」

「何よ、アンタ」


 ……既にちょっと後悔。

(お主のお節介ぶりには舌を巻くぞ。急いでいるのではなかったのか?)


「いや、ここ街中ですし喧嘩は良くない……みたいな? あはは」

「アンタふざけてんの?」

「そんな滅相もない。ほら、レンからも何か言ってやってよ」


(おい、最低じゃなお主)

 ラティ、これは立派な戦略なんだよ。レンみたいな可愛らしい少女に強く出るなんて、心無いことが出来るはずないだろ。


「えぇっ!? わ、わたしですか? えっと、みんな仲良く……」

「──あれ、その格好……アンタ、もしかして魏刹の人?」


 そう言って、金髪の魔法使いはレンをじっと見つめる。


「は、はい。一応、魏刹の冒険者ですけど──」

「ホント? それなら丁度良かったわ! 貴方、“特別依頼”って知ってる?」


 その言葉を聞いたレンの表情が曇る。

 焦り……いや、恐怖だろうか?


「……勿論、知ってます」

「ワタシ、その依頼に参加しようと思ってたんだけど……魏刹に知り合いがいなくて困ってたのよ!」


 特別依頼というのは、その国の国主が直々に冒険者協会に頼んで発注する依頼のこと。基本的に、その特別依頼を受けられるのはその国に属する冒険者のみ。


 しかし、その国の冒険者からの推薦があれば、()()()()()()()()依頼を受けることが出来るという制度がある。

 そしてS級冒険者や、その他特別な権限を持っている場合でも、制限なく依頼を受けることが可能になっている。


「レン、大丈夫?」

「……はい、大丈夫です!」


「この女、一人だったから俺がパーティに誘ったら、魏刹の冒険者かどうか訊いてきて──俺が違うと答えたらなんて言いやがったと思う?」


 と、先ほどまで魔法使いと揉めていた男が声を上げる。


「“じゃあさよなら、消えて”だぞ!?」

「……言ったの?」

「言ったわ」

「……」

「……」


 この空気と、レンのぽかんとした顔に思わず笑いそうになる。


「だって、ワタシより弱い奴とパーティなんて組みたくないもの。この子みたいに、魏刹の冒険者なら話は別だけどね」

「じゃあ……君が悪いかも」

「はあ!? なんでそうなるのよ! じゃあ何? アンタはお荷物抱えて任務受けて足引っ張られたいわけ?」


「パーティっていうのはギブアンドテイクだよ」

「だ、か、ら! ワタシより弱い奴だとテイクが無いって言ってるの!!」

「君は完璧で、一つも欠点が無いの?」

「……そういうわけじゃないけど」

「パーティは、お互いの足りないところを補い合うためにあるんだよ。例えば彼なら、魔法使いが苦手な前衛を張れるじゃないか」

「ぐぬぬ……」


 ふん、どうだいラティ……華麗に決まったぞ。

(ソロ冒険者であるお主にパーティについて諭されるとは、甚だ屈辱的すぎるな。妾ならば、怒りのあまり街を一つ消し飛ばしてしまうやもしれん)

 それはやり過ぎだろ。


「はあ……ごめん、言い過ぎたわ」

「あ、ああ。俺も突っ掛かりすぎたかもしれねえ……悪かった」


 なんだ、ちゃんと謝れるじゃないか。

 良かった良かった、これにて一件落着だ。


「よし、レン。僕たちはもう行こうか」

「あ、はい」


 僕たちは本来の目的の為、その場を立ち去る────。


「────ちょっと待ったーーーーーーッ!!」


「ん?」

「いや、『ん?』じゃなくて、ワタシその子に用があるんだってば! 何で“これにて一件落着!”みたいな雰囲気なの? 全然これからなんだけど!!」


「だって、レン。どうする? 時間とか……」

「私は大丈夫ですよ、歩きながらでも話は聞けますし……それに、わたしの()()についても話せるので」

「らしいよ、よかったね」


「ありがとね。まあ、用って言ってもさっき話した通りなんだけど……どう?」

「イヤです」

「──え?」


「推薦の件、お断りさせてください」


 それはもう、驚くほど即答だった。


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