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影の冒険者、最強を目指す。 〜影の魔人と契約した僕は、最速で世界を駆け上がる〜  作者: ねひつじ
二章 聖エレストル王国編

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【第38話】冒険者、祝宴を開く。


 「あれは動体視力が極限まで研ぎ澄まされた為に起きた現象じゃな」


 ラティは腕を組み、話を続けた。


「そしてもう一つ。あれは……()()()()()()()といったところか。他に納得の行く理由が思い浮かばんしな。あの馬鹿げた身体能力も、妾の技を模倣したのも……動体視力さえもその影響かもな」


「ちょっと待ってくれ、想像を創造って……その力は────」


 一週間前の僕だったら、そんなものあり得ないと大笑いしていただろう。


「────願いの起源(オリジン・メア)。習得時期から考えれば、間違いなくルーツはそれじゃろうな」


 それを聞いて、僕はふと思う。スキルを発動した時に視えるあの世界は、もしかしてあの夜の再現なのではないか、と。


「……複雑だな」


 これは、ディエスに感謝すべきなのだろうか?


「完成された願いの起源(オリジン・メア)には到底及ばんし、あの様子では時間制限に反動もあるみたいじゃがな」

「そうだね。それでも、これは大きな進歩だよ」

「間違いない。それに、そのデメリットはあくまでも()()の話じゃからな」

「……と、言うと?」


「言葉通り、鍛錬次第でいくらでも化けるという意味じゃ。これから更に面白くなりそうじゃな?」



 ということで、回想終了。



「何か考えごとですか?」

「ちょっとね」


 宿屋(リベルタス)では多くの人がそこかしこで盛り上がっていた。あんな事があったのによくもまあという感じだが、飲まないとやってられないという人もいるのだろう。


「あ、そうだ! 時臣くんから言伝を預かってるよ、ハルくん宛に」


 同じ卓に座っていたユナさん。その手には焼き鳥のようなものが握られていた。


「言伝ですか?」

「うん、えっとね……『歩む道が同じならば、いずれまた相見(あいまみ)えるだろう』だってさ! よく分かんないけど、多分また会おうみたいな感じだと思う」

「……そうですか」


 あの人が僕に会う気があるのなら良かった……っていうか、時臣さんと会ったの?


「よっ、英雄様。調子はどうだ?」


 休憩中なのか、レイシャさんがやってきて空いていた席に座る。かなり忙しそうだけど、休憩して大丈夫なのだろうか。


「レイシャさん、おかげさまで元気ですよ。あと、英雄はやめてください」

「えー、もったいないなあハルくん。君が胸を張れるのは今だけなんだよ?」


 今だけってことはないと思うんだけど──ないよな? この先一生見せ場なしとか、流石に嫌すぎる。


「それにしても……あれは何が起きてるんですか?」


 僕が目をやったのは一つ奥の卓。他と比べてやや目立ちにくい場所にあるのだが、問題はそのメンツだった。


「それじゃあ、これからは友好関係を結ぶ方向で話を進めようか」

「ああ、よろしく頼むよ」

「雷の小僧よ〜、妾とも友好関係を結ばぬか〜? 丁度、思い通りに動かせる国が欲しいと思っておったとこでな〜」


 その卓には魔王シリウスと国主代理であるセインさん、そして何故か酔っ払っているラティが座っていた。


 ……なんかヤバいこと言ってない? あの酔っ払いと知り合いだなんて思われたくないんだけど。


「そうでしたハルさん! あの子とはどういう関係なんですか!? 詳しく聞かせてください!」

「あ、ボクもそれ知りたい! ファレリアで会った時から気になってたんだよねー」

「どういう関係って言われても……」


ガタンッ


「ほれ、お主も飲め〜」


 あちらの話に飽きたのか、こちらに来て突然絡み始めるラティ。

 そんな目の前にお酒置かれても……。


「見ての通りですよ──ってちょっと、まだお酒飲める歳じゃないんだって」

「まさか、妾の酒が飲めないと言うのか〜?」


 ぐっ……くそ、力が強すぎる。


「なるほど、すごい仲良しなんだね!」

「むむむ……見せ付けてくれますね……」

「見てないで助けてくださいよっ……!!」


 決めた、これからは絶対ラティにお酒を近付けないようにしよう。


「あのさ、さっきからずっと気になってた事があるんだけど……ハル、その頭の角って────」

「あれ、まだ聞いてなかったんですか。僕、魔族なんですよ」

「ええっ!?」


 期待通りの良いリアクション。レイシャさんに敢えて伝えなかったのは、これのためと言っても過言ではない。


「じ、じゃああれは誤解とかじゃなかったのか……」


 あの事件の後、僕の出禁は無事に解除された。そしてなんと、聖エレストルは『魔族と友好な関係を築く』という方針になったのだ。

 今まで魔族嫌いでやってきた国家、新たな方針が国民に浸透するのはだいぶ先になると思っていたのだが、既に馴染みつつあった。ここに魔人も魔王もいるしね。


 あれもこれも、セインさんの手腕によるものが大きいのだろう。


 僕も折角なので変装魔法を解いている。皆どうせいつか慣れるんだし、変装しようがしまいが変わらないだろというのが本音。


「驚きました?」

「いやまあ……変わった奴だとは思っちゃいたけど、まさか魔族だとは思わなかったよ」

「私も最初変わった人だなって思いました!」

「ハルくんは変わってるよねーやっぱり。そこが面白いんだけどさ!」


 変わった人って……別に褒めてないよな、これ。悪意がないのが余計に辛い。


「そうだ、ハルくん! 今度一緒に魏刹(ギセツ)に行かない?」

「……魏刹、ですか?」

「そそ! 多分一週間後くらいになると思うんだけど、どう? 予定あったりする?」


 魏刹って、テオルスから見てエレストルとは逆方向の隣国だったっけ……どうしようかな。


 ラティにも意見を聞こうとしたが、既に寝てしまったようだった。何をどうしたらそうなるのか、僕の左膝に干されるような形で。


「行きます」


 まあ、断る理由もないし。


「よし来た! いやあ、ハルくんがいるならいくらか気まずさも薄れるってもんだよ!」


 ……ん?


「えっと……何か嫌な予感がするので、やっぱり────」


──ガシッ!


「え、もう無理だよ? ボクの中の予定ではハルくんの同行はもう確定してるから」

「……はい」


 嵌められた!


「わ、私も行きたいです!」

「お、フェイちゃんも来る〜?」

「はい、ハルさんが行くなら行きます!」


 まずい、被害が拡大しそうだ。


「あー、フェイは学生だから遠出は無理だと思うぞ……?」

「うぐぐ……何かしら理由をこじつけて公欠を取れればなんとか……」


「何やら面白そうな話をしてるね」


 そう声を掛けて来たのはシリウスさん。その横にはセインさんもいた。二人の話し合いは無事に終わったらしい。


「あ、シリウスさんにセインさん……どうやら僕はまた面倒事に巻き込まれるみたいです」


「ふふふ……ボクからは逃げられないぞ……!」

「ははは、ハル君はそういう体質なんだろうね」


 愉しそうに笑うシリウスさん。


「魏刹か──あそこは一度行っておいて損はないだろう」


 と、セインさん。


「行ったことあるんですか?」

「ああ、少し前に。貿易と武術がかなり盛んで、愉快な催しも多い……君も気に入るはずだ」


 武術か……確かに面白そうだ。不安要素はあるけど、それを加味してもギリギリ行く方に軍配があがるな。


「ほれほれ〜、行きたくなったじゃろ〜?」


 くっ、ここぞとばかりに……なんか喋り方も鬱陶しくなってるし。



 そんなこんなで同行が確定したところで、僕たちは雑談に戻って祝宴を楽しんだ。


 途中、ラティが目を覚まして朦朧としながら僕の影の中へ戻っていったり、シリウスさんとセインさんのどちらがお酒に強いかという勝負になったり、いろいろあったが無事に祝宴は幕を閉じた。


「それじゃ、一週間後にファレリアの冒険者協会で待ってるからね! 逃げないでね? 逃がさないけど!」

「はいはい……分かってますよ」


「ハルさん! 私、何としてでも付いて行きますから!!」

「あ、うん……頑張って」


 何故、フェイは明らかな面倒事だと分かっていて首を突っ込もうとしているのか、僕には分からなかった。



 フェイの姿が完全に見えなくなるまで見送ると、僕は宿屋に戻り、二階へ登って行った。


「はあ、部屋がまだ空いててよかったよ……」


 思い返すと、かなり濃い一週間だった。明日はファレリアに帰って、ヘレンさんにいろいろ報告しないとだな。


(妾の気の所為かもしれぬが、お主──前より明るくなったな)

 そうかな? 多分、人と関わることが多くなったからだと思うけど……それが本当なら、皆には感謝しないとだね。


(昔は妾から見ても近寄りがたいオーラが溢れておったぞ。無愛想というか、なんというか)

 そんなつもりは少しも無かったんだけどな。よく顔に出やすいとも言われるよ、僕。

(お主は顔に出やすいが無愛想なんじゃ)

 なんだそれ。


 そんないつも通りのやり取りをして、僕は眠りに就いた。


 ということで、これにて第二章『聖エレストル編』はこれにて終幕です!

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