【第34話】冒険者、不意の再会。
「──ハルさん?」
「フ、フェイ…………なんでここに? そもそも、どうして僕がここに居るって分かったんだ?」
「そんなの、心配だったからに決まってるじゃないですか! この場所は、不思議なシスターさんが教えてくれたんです」
……シスター、だって? 〝不思議な〟という形容動詞が相応しいシスターなど、僕は一人しか知らない。
「ボクとセインくんは結界の制御装置を止めに行ってたんだ。魔族と神父が交戦しててどうしようかと思ってたけど、魔族側に付くことにしたんだよね!」
「その魔族は一度だけ面識のある魔族だったんだ。結局、突然現れた別の魔族に回収されてどこかへ行ってしまったよ」
どうやら、結界の問題は二人が解決してくれていたらしい。
シリウスさんの話から考えれば、突然現れた魔族とやらは恐らくディレだ。そして二人はここに来る途中でフェイとばったり出会ったという流れだろうか。
「ハル君、この人達は?」
傍から一連の流れを見ていたシリウスさん。
「僕の友人です、この人は冒険者で──」
「あーーーっ! 魔王シリウスじゃん!!」
シリウスさんに紹介しようと、ユナさんの説明に入ろうとしたところで突然大声を出すユナさん。
「君はいつぞやの……」
「あれ、お二人って接点あったんですか?」
思い返してみると、ユナさんがそんな感じのことを言っていた気もする。
「三ヶ月くらい前かな。ボクがテオルスで起きたちょっとした異変について調べてた時に、ディグランの森でちょっとね……あっ、ハルくんも話に聞いてるよね? あそこに魔王が出たっていう話!」
話に聞いてる、っていうか。
僕、当事者なんだけど。
「僕もちょっとした調査の一環でね──僕ら魔王としても異常事態だったんだ、新たな魔王の出現は」
ノアさんが、他の魔王の協力があったみたいなことを言っていた気もする。やはり、いずれかの魔王の独断で行われたものだったのか。
「ち、ちょっと待ってくれ。ハル君、その姿は……それにどうして魔王と一緒にいるんだ?」
セインさんのその疑問はごもっともだった。それはフェイも同じで、二人は僕が魔族であることを知らない。
つまり、僕は二人に嘘をついていたということだ。
(時期的に考えても、お主が嘘ついたことにはならぬじゃろ)
たしかにそうかもだけど……まあ気持ち的な話だよ。実際、人目があったとはいえフェイには伝えるタイミングはあったわけだし。
(変なとこで誠実じゃな、お主は……)
「はあ、今はそんな場合ではないというのに……」
なんと、ラティが影の中から半分だけ姿を現していた。
「ええっ!? ハルさんっ! 影の中に何かいますよっ!!」
「落ち着け魔法っ娘。あまり時間がない──今はこれで納得してくれ」
そう言うと、着ていた服を捲り上げ背中の紋様を見せるラティ。
ちなみに初耳だし、初見。そんなのあったの? もしかして僕の背中にもあったりするのだろうか。
「それは契約の紋様──ということは、ハル君は彼女と契約を結んでいるのか!?」
「ま、待ってください。たしかに契約はしてますけど……」
「……ちゃんと、大切な仲間です」
我ながら小恥ずかしいことを言ってしまった。しかし、ラティの身を削るような行為(具体的な意味は分からない)を見過ごすことはできなかった。
「契約を結んでいるということは、そういう事だろう? これ以上の説明は要らないさ」
「二人は契約していたんだね。久しぶりに見たよ、それ」
と、セインさんとシリウスさん。
よく分からないけど……契約って、結構有名だったりするのか? なんの証明になってるかさっぱり分からないんだけど。
「あ、あの……ハルさん」
と、フェイがどこかよそよそしい様子で声を掛けてくる。
「ああいう感じの子がタイプなんですか?」
「はあ?」
突拍子のなさすぎる質問に思わず声が漏れる。
「ああいやっ、答えたくないですよね! すみません……」
「いやそう言うことじゃ……」
なんか話が拗れまくってる気がするんだけど。
「ま、そういうわけじゃ。そろそろ戻らんと、彼奴が──」
「その必要はありませんよ」
大分待たせてしまったのか、ディエスが教会から出てきていた。
「人も増えてきたみたいなので、あそこでは狭いかと……」
まさか黒幕に気を遣わせてしまうとは。
「教皇様……? どうして──」
そういえば、フェイはまだ事の成り行きを知らないのか。
「これがこうで……」
軽くあらすじを説明することにした。
〜〜説明中〜〜
「な、なるほど……」
この国で長い時間を過ごした者には、受け入れ難い真相だろう。
さて……人も揃って、お相手方にもわざわざ出てきてもらった事だし、僕のちょっとした考察を披露しようかな。
「ディエスさん。僕は貴方のその力について、幾つか気付いたことがあります」
「ほう」
聞かせてみろと言わんばかりの反応が返ってくる。
「一つ、貴方が同時に習得を維持できるスキルの数は多くて二十が限界ということ」
「二つ、スキルを複数同時に入れ換えるとき、貴方は数秒の時間を要すること」
「最後に、貴方のその力は“願いを叶える”ではなく、“想像したものを創造する”、ですよね」
僕はいい感じのキメ顔でそう言った。
もし本当に願いを叶える、というのが能力なのだとしたら、僕達の“死”を願えばそれですべてを終わらせることができてしまう。
そして彼は“死”を直接想像し、創造できない。何故なら、それは神の領域だからだ。だから、人間(+古代の遺物)の彼にはそれをイメージ出来ない。
「なるほど、概ね正解と言って良いでしょう──」
「──今は、ですがね」
ディエスがイマイチ決定打に欠ける攻撃(僕にとっては致命的)しかしないのは、善意だとか罪悪感とかによるものではないのだろう。
ただ、ディエスは待っている。
願いの起源の進化を。
もし、その力が更に一段階上へ到達してしまえば──、
僕達に、あの人と神を区別することはできなくなってしまうだろう。




