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影の冒険者、最強を目指す。 〜影の魔人と契約した僕は、最速で世界を駆け上がる〜  作者: ねひつじ
二章 聖エレストル王国編

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【第33話】冒険者、魔神になる。


 「始まりの魔王──?」


 初めて聞くその単語に、僕は思わず聞き返す。


「簡潔にいえば、この世界で一番最初に魔王へ成った奴じゃ。今はもう、死んでおるがな」


 僕には、その魔神……始まりの魔王とやらの血が流れているというのか?


「……それらの話は後じゃ、とりあえず彼奴を倒すことに集中しろ。その状態がいつまで続くかも分からんしな」


 不思議と自信はある。

 今の僕なら、ディエスに対抗出来るかもしれない。


「シリウスさん、支援を頼めますか?」

「勿論だよ、最善を尽くそう」


 本当に良い人、良い魔族だな……この人が魔王なんて未だに信じられない。


「ラティは影の中で休んでて。ショーの続きを見せてあげるよ」

「くくく、お手並み拝見じゃな」



 僕とシリウスさんは、壊れた壁から中へ戻った。夜も深く、月明かりは相変わらずステンドグラスを通して大聖堂を仄かに照らしていた。


「お待たせしました」


 ディエスは、先程の戦闘によって壊れた物を修復して回っていた。


「いかがでしたか? 私からの贈り物は」

「おかげさまで、目が醒めましたよ」

「ははは、それは良かった。夜はこれからですからね」


 背中に手を伸ばして剣を抜こうとするが、僕の手は空を掴んだ。


 ……あれ、僕の剣どこいった?


(さっきの衝撃で綺麗に消し飛んでおったぞ)

 うそ、買い直しってこと? あんまり余裕ないのに。

(まあ、今のお主にはあってもなくてもあんま変わらんじゃろ)

 どこに素手で戦う冒険者がいるんだよ。

(いや、それはいると思うが……)


 そんな訳で徒手空拳で挑むことになった。


「さあ、君の本当の力を見せてください。私も全身全霊でお応えしましょう」


彼奴(あやつ)に見せてやれ、()()()()の力をな)



 終幕は近い。



纏影(テンエイ)!』


 両手両足に影を纏い、ディエス目掛けてジャンプする。

 そこそこ軽く跳んだつもりだったが、


──ドガンッ!


 石床が吹き飛ぶほどの速度で跳躍していた。


「えっ!?」


 予想以上の動きに思わず驚く。

 気付けばディエスの目の前まで迫っており、


「はっ!!」


 とりあえず蹴りを繰り出すことにした。


魔力障壁(バリア)


 結果、そのバリアにはヒビが入るも、割ることは出来なかった。


 めっちゃ硬ぇ!


「私は今、十個以上の防御系パッシブスキルを並列して発動していますが……」


希望の明光(スペス・クロル)


 ディエスの背後に魔法陣が現れ、無数の光線が降り注ぐ。


「これは、その全てを攻撃系パッシブスキルへ変えて放ったものです。一発でも喰らえば、致命傷になるでしょう」


 集中すれば避けるのは難しくないけど、これじゃ防戦一方だな。


侵略支配(インベージョン)


 するとディエスの動きが止まり、

 それに連鎖するように魔法陣が消滅した。


「なっ──!!」


「まさか、こんなに早く防御を弱めてくれるなんてね」

「ああ……貴方の()()をすっかり忘れていました」


影掌底(えいしょうてい)!!』

『“吹き飛──”』


──ドンッ!


 詠唱し切るよりも早く、僕の攻撃が命中する。


「ぐっ!!」


 ディエスは大聖堂の奥へ吹き飛ばされる。


 手応えはあったが、倒し切れていない。

 攻撃が軽すぎる。

 

「……惜しい、もう少し威力があれば倒せていたかもしれませんね。私、体力にあまり自信はないのですよ」


 一度で削り切らないと再生されてしまう。恐らくディエスは魔力に制限がないから、このままじゃジリ貧だ。


「そういえば、道中シスター達に会ったんですけど──彼女達に戦う力を与えたのも貴方ですよね」


 僕は気になっていたことを訊いてみる。


 ユナさんの話によれば、戦闘のできる人はいないはずだった。しかし蓋を開けてみれば、なかなかクセの強い人たちばかり。


「シスターですか? たしかに、つい最近新入りが数名来ましたが、私が力を与えたのは信頼出来る司教・司祭数名だけですよ」


 ……何だって? 今、かなり重要なことを言った気がする。


「──それより集中してください。貴方にこれを避けるのは、少々難しいかもしれない」



大海乱波(マグヌス・フルクタス)──』



(お主よ、飛べ)

 はっ? どうやって……?

(気合いじゃ、さもなくば死ぬぞ)

 ふざけんな、もうちょっと具体的に……、


 てか僕、今魔力使えないんだけど?


(……)

 頼む、頼むから諦めないでくれ。


 前方からは高さ約5mほどの巨大な波がとてつもない速度で迫っていた。

 とりあえず背を向けて全力ダッシュする。今の僕じゃなきゃ間違いなく速さが足りなかっただろう。


「ハル君、飛べるかい!!」

「無理! 無理です!!」

「了解!」


 僕の前を飛んでいたシリウスさんは振り返ると、


侵略支配(インベージョン)!』


 大波は動きを止める。


「何とか少し時間を稼ぐから出来るだけ遠くへ!」

「ありがとうございますっ!」


 ファインプレー過ぎる!


「ははは、無駄ですよ!()の私にそれは効き辛い!」

「承知の上さ──!」


氷風雪の大槍(ブリザード・ランス)

  氷雪の槍(アイス・スピア)

  氷柱雨(アイシクル・ショット) 』


 魔法の並列詠唱だって?! しかも三つ……!?

(ほう、やるな)


 その光景を尻目に、僕は既に壊されている扉から外へ飛び出た。


 よかった、ディエスが修復する前で……というか、なんで修復し回ってたんだろう。



 外へ出ると、すぐに教会正面の上の方の壁をぶち抜いてシリウスさんが出てくるのが音で分かった。


「シリウスさん、大丈夫ですか!」

「ごめん、完全には止められなかった!」


──ザァァァァァ……


 ……バァァァァンッ!!


 大波は大分勢いを緩めていた。

 それでも教会の壁を破壊するのには十分だったが、波が外に出ると同時に勢いは完全に消えた。


「けど、ここならもう大丈夫……ん?」


 先程、大波が通った場所をなぞるように氷塊が勢いよく生成されているのが分かった。


 どうやら、先程で溜まった水を媒体に辺り一帯を氷漬けにするつもりらしい。かなり広い範囲が水浸しになっているので、もしかしたら氷山とかが出来るかもしれない。


(言っとる場合か……)


「彼の魔力は本当に底無しみたいだね──ハル君、逃げよう」


 僕とシリウスさんが急いでその場を離れようとすると、聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。


「あっ、いたいた! ハルくーーーん!!」

「ユナさん!? なんで……」


 その後ろには、人影が二つ見えた。

 辺りは暗く、明かりも少ないので声の主であるユナさん以外は誰か分からなかった。


「な、なんでここに……っていうか、逃げてください!」


 シュン、とそんな僕の横を高速で駆け抜けて行くユナさん。


「ノンノン! ハルくん、こういう時は『助けて』でしょ?」

「ユ、ユナさ──」


『──ファイヤーパーーーーーンチ!!』


 えっ、ダサ!


──ドガァァァァァァァンッ!!


 その一撃で大量の氷塊は吹き飛び、辺りには粉々になった氷の欠片が雪のように降っていた。


 す、すごい。名前はもう少しやりようがあっただろうけど、おかげで助かった。


「ありがとうございます、ユナさん」

「お礼なんて良いよ……ってわわっ! どうしたの、その格好!」


 そうだった、今の僕はまだ──、


「──あの……」

「……え?」


 どうして、ここに? だって、今は避難所にいるはずじゃ……。


「……ハルさん?」


 僕が振り向くとそこにはフェイ、そしてセインさんがいた。


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