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影の冒険者、最強を目指す。 〜影の魔人と契約した僕は、最速で世界を駆け上がる〜  作者: ねひつじ
二章 聖エレストル王国編

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【第28.6話】雷帝、そしてS級冒険者。

 ちょっと長めかもです!


 あれから中央広場へ戻ると、人影があった。

 かなり若い……もしかして、避難所が分からずに逃げ遅れたのだろうか。


「そこの君、大丈夫かい!」

「あっ! 来ちゃダメ!!」


 突如向けられた大声に動揺しつつ、すぐさま動きを止める。

 しかし、どうやら少し遅かったようだ。


「あっちゃー、間に合わなかったかぁ」

「君は……」


 格好を見る限り、冒険者だろうか。王都デルクに寄ったところ、運悪く巻き込まれたのだろう。


「あれ!? お兄さんって、もしかしなくてもあの“雷帝”. !?」

「あ、ああ。たしかにそうだが……」

「うわ、ボクってば超ラッキー! まさか雷帝さんをナマで見られるなんて!」


 反応に困るな……こんな状況でなければ良かったのだが。


「あ、ごめんね! ボクはユナ。冒険者をしてるんだけど、任務でここに寄ったんだ!」

「実は今、魔族が襲撃してきているんだ。危ないから、君も早くここを離れて避難した方が良い」

「そう、まさにそれ! いやー、間に合ったと思ったら早速始まっちゃってさ……どうしようかなあ」


 もしかして、彼女はこの異変を解決しに来たのか? だがこれは一般の冒険者にどうこうできるような範疇じゃない。


 やはり、今すぐ避難を──、


「──まず、これをどうにかしないとね」

「!!」


 その時、空から無数の魔弾が飛んできた。


轟く雷刃(ルージャン・フェルス)!!』


──ドガァァァァン!!


 弾幕はほとんど空中で四散する。軌道からして、明らかに二人に標的を絞ったものだった。


「すっごい、流石雷帝さんだね!」


 彼女はとても余裕そうだった。

 まだ事の重大さを把握できていないのだろうか。


「あれ、どっちかは殺ったと思ったんだけどな」


 上空から人型の魔族が降りてきているのが分かった。


「弾かれたとはいえ、いくつか手応えはあったんだけど……」


 恐らく教会側の、そして魔王シリウスの手先だろう。奴が上級魔族ならまだなんとかなるか……?


「ちょっと君、教会なんかと組むの辞めてよ! 何も良いことないよ? 私の仕事も楽になるしWIN-WINじゃん?」


 WIN-WINというよりはWIN-FLATじゃないか?


「もう組んでなんかないよ。だから今僕たちは王都に攻め込んでるんだし……だから最初から辞めた方が良いって言ったのにさ」


 もう組んでないだと? どういうことだ、この襲撃は教会と魔族が作り上げた脚本じゃないのか?


「えぇっ!? なにそれ、どういうこと?」

「どういうことも何も──裏切られたんだよ、僕たちはね。アイツらは気付かれてるか知らないけど、ザリィ様はあんな風でかなり鋭いからね。本当はこのまま帰っても良かったんだけどさ……」


 その魔族はニヤリと笑みを浮かべる。


「仕返しみたいな? 人間を殺しても裏切ったアイツらが悪いみたいな? 良くない? 最高じゃない?」


「ディレ様もシリウス様も、なんか人間との共生を目指してるらしいじゃん。でもさ、それって面白くないしさ……」


「ディレ様ももういなくなっちゃったし……もう暴れちゃってもいいかなって、さ!」


 その魔族は再び魔弾を放つ。先程と同じ追尾型。

 俺は大丈夫だが、 ユナさんは今度こそまずいかもしれない。


「あーもう、どうしてそうなるかなぁ! あ、雷帝さん! こっちはお構いなく!」


 心配だが、本人がそういうのならば仕方あるまい。

 俺は俺で、攻めさせて貰おうか。


雷閃(ライセン)!!』


 追尾型系の魔法(魔弾が魔法かどうかは怪しいが)の欠点は、弾速そして着弾までが通常より遅いことだ。


 俺なら間を潜り抜け最速で斬り伏せることができる。


「ウソ、それ攻めてくるの?」


多重歩行(ラグ・ステップ)!!』


 背後から彼女の声が聞こえる。


「はぁっ!!」

「ちょっ速っ……」


 構えた剣を、横一文字に振り抜く。


「ぐあっ!」


 魔族はその場に崩れ落ちた。


「……とりあえず一段落かな」

「うへー、雷帝さんやっぱ強いねえ。もし良かったら冒険者にならない?」


 なんとも呆気ない決着だった。彼は恐らく上級魔族、それもかなり若い方なのだろう。


「考えておくよ」


 冒険者か──今回の件が片付いたら、旅のついでに冒険者をしてみるのも悪くない。見えてくるものがあるかもしれない。今の俺に必要な何かが。


「あ、そういえば話聞くの忘れてた! 流れで倒しちゃったけどさ!!」


 倒れている魔族はまだ息があったものの、まるで会話できるような状態ではなかった。


「申し訳ない……一応、かなり力を抑えてはみたんだが」

「ぐっ……ふざけやがって!!」


 どうやら魔族はまだ戦う気らしい。恐らく彼に勝ち目はないし、これ以上無理をすれば彼の命が危ういはずなのだが……。


炎槍(フレイム・ランス)──』


 魔族は魔法を唱え攻撃を仕掛けようとするが、果たしてそれは叶わなかった。


「くそ、力が入らない──もう戻しやがったか。しかも前よりずっと強い……」

「……?」

「あ、結界が元に戻ったのかな?」


 結界というのは、この王都を守る対魔結界のことか? 魔族の襲撃には結界の解除が必須。

 だからこそ魔族連中は、結界を管理している教会と手を組んでいたはずなのだ。


「……なるほどな。どうやら教会は君たちを一網打尽にしたいらしい。裏切りというのは本当のようだ」


 今回の異変、その魔族側のリーダー格の一人であるディレという魔族をハル君が倒してしまったとこから裏切りは始まったのか。


 教会は彼らを裏切り、予定通りに進めるフリをして殲滅し更に名誉を手に入れるつもりだった。

 しかし彼ら魔族はそれに気付き、撤退せずに敢えて騙され、抵抗する道を選んだのか。


 しかし、腑に落ちない。俺が知る限りでは魔王シリウスは衝動で行動に出るような性格ではなかったはず。

 大切な部下を一人失ったとき、更に大きな被害を出るような選択をするような人物ではないはずだ。


「もしかして、魔王シリウスは今回の件を知らないのか……?」


 すると、ユナさんはハッとした顔をする。


「あ、あり得る! それだいぶあり得ると思う!! なーんか納得行かなかったんだよね。ボク、シリウスと何回か話したことあるんだけど、すごい良い人……良い魔族というか、思慮深いイメージがあってさ!」


 ……ん?


「シリウスは人類との共生を望んでるのに、こんな荒いやり方はおかしいと思ってたんだ! 元々の計画がどういう内容であれ、シリウスは無意味に何かを傷付けるのを嫌うような魔王なんだよ」


 彼女は魔王シリウスと接点があるのか?


「すまない、ユナさん。貴方は一体何者なんだい……?」


 その言葉にユナさんは首を傾げる。


「あれ、さっきも言わなかったっけ? ボクは冒険者で、ランクは〝S〟! どう、凄いでしょ?」


 そう言って手をピースをこちらに向ける。

 思わず絶句してしまう。


「S級……だって?」


 結界の影響か、かなり苦しそうに魔族が言う。


「通りで……通りで攻撃が当たらない訳だ。本当、相手が悪いってレベルじゃない……」

「あーこらこら喋んないで、いつ死んでもおかしくないくらいなんだから安静にしててよ」

「ふっ、なんだそれ……情けでも掛けてるつもりか?」

「生意気だなー、ホントに」


 そう言いながらも魔族を引き摺って安全な場所へ移動させ、座らせる。

 どうやら彼女は本気で彼を助けるつもりらしい。助けるというより、殺す気がないのか。


「ここなら君の仲間が来た時、気付いてもらえるでしょ? 大人しくしててよ」

「……」


「しかしユナさん、ここでは人目についてしまうよ。もし事情を知らない冒険者や教会勢力が来てしまえば彼は危ない」

「それもそうだね……どうしよう? 布とか被せておく?」


 それではまるで、もう手遅れのように見えてしまいそうだが。


「おい……もう僕には構うな。殺す気がないのなら、さっさと何処かへ行ってくれ」


 そして、その魔族は先程のようなニヤリという笑みを浮かべる。


「今、他の魔族がこの忌々しい結界を制御している建物に向かっているんだ……早く行かないとどうなるか……分かるだろ?」

「うげ、全くやらしいな君は……雷帝さん、どうする?」


 それは勿論止めたい。これ以上魔族に好き勝手暴れられては困る。しかし、教会側の味方をすることになってしまうのは癪だ。


「一旦、向かいながら考えようか」


 結界の制御をしている魔導装置は、教会へ続く大通りを途中で逸れた道の先の施設にある。


「それもそうだね! それじゃ名も知らぬ魔族君、さよなら!」

「僕は……レグリー……だ」


 そう言い遺すと(死んではいない)、すぐにその魔族は目を瞑って横になった。


 その様子を見たユナさんは、こちらを向いてにへらと笑った。


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