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影の冒険者、最強を目指す。 〜影の魔人と契約した僕は、最速で世界を駆け上がる〜  作者: ねひつじ
二章 聖エレストル王国編

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【27話】冒険者、その魔力と制御。


 魔力の制御(リミッター)を外す事による全放出(バースト)。そのメリットとして、掛けられた魔法による(一部例外はある)精神干渉の影響を無効化することが出来る。


 幻覚などの精神異常は、精神干渉系魔法によって対象に流れる魔力に干渉することで引き起こされる状態異常であり、制御を外し魔力を全放出することでその干渉を無効化する事が出来るという理屈。


 では何故、精神干渉に関する防衛・治療魔法が存在するのか。


 ──それは、魔力の制御を外す事のデメリットの方が大き過ぎるからである。


 そのデメリットとは、魔力の全消費、それによる精神の疲弊と魔力使用制限。

 これは魔力を回復してもしばらく続くもので、魔力を使う為の回路がしばらく焼き切れると考えると分かりやすい。多少個人差はあるが、一般的には半日程度と言われている。


 魔法使いからすれば、これは邪道も良いところ。己の生命線を放り投げ、魔法使いにとっての誇り(魔法)を蔑ろにする行動といえるからだ。


 だからこそ、僕に術を掛けた本人は想定していなかったのだろう。



 モヤが晴れるように辺りの景色が一変する。


 そこは先程までの迷宮とは打って変わって、かなりひらけた場所だった。メインストリートほどではないが、教会へ行くだけならばまず迷わないだろうというほど。


「まさか貴方──制御を外して帰ってきたというの?」


 僕の正面には、シスターが立っていた。

 ウィンプルはしていないけど、クレイさんのようなしっかりとしたシスター服だった。


 やはり、キリエさんがおかしいのか。


「今の僕には、それくらいしか対処法がなかったので」

「あり得ない。そんなことして、私に勝てるとでも思ってるの?」

「さあ、それは分かりません……でも、貴方は僕に勝つつもりがないらしい」

「……」


 戦闘において幻覚魔法を使う理由として、いくつかあるが一般的には二つ挙げられる。一つは、正面戦闘に長けた攻撃手段を持たず、確実に目標を仕留める為。


 もう一つは、相手を倒す必要がない、もしくは倒してはいけない“捕獲”等が目的の時。


 そもそも、勝てる相手ならば幻覚を掛けた時点、もしくはそれより前にでも倒しにいけばいい。


 しかし彼女にはそうしない理由がある。


「貴方、エドラナをどうしたの?」


 キリエさんの言い振り的にてっきりもう情報が渡っているものだと思っていたけど、そうでもないのか?


「……隠すつもりはないです、あの人は僕が殺しました」

「やっぱり」


 またしても予想外の反応が返って来た。

 敵意を向けられるとばかり思っていたから。


「どうして僕を殺さず、足止めを選んだんですか?」

「んー、どうしてって──そうしろって言われたからよ」


 僕を殺すな、という指示が出たというのか? 理由は分からないけど、既に僕の存在は知られていると考えるべきか。

 キリエさんやこのシスターさんの反応からして、人によって持っている僕の情報の量に大きな差がある。


 戦闘可能なシスター……ていうかそもそも、教会側の勢力に戦闘可能な人物はいないはずだったんだけどな。ここが魔法国家だからなのか、普通に魔法も使えるっぽいし。


 戦闘可能なシスターがどれだけ残っていて、どれだけ戦闘せずに済むかとか考えていたけど、これじゃ行く先々で戦闘になると思った方が良さそうだな。僕の顔は間違いなく割れているだろうし。


「少し前、貴方がここに来るより前。二人……私の前に現れたの。アレ、貴方の仲間でしょう?」


 二人──っていうと、ユナさんと時臣さんのことか?


「貴方、人付き合い考えた方が良いわよ。腹の底が読めない不気味なS級に、“侵略支配(シリウス)”……もうめちゃくちゃよ」


 ああ、あの魔王か……もう一人は、時臣さんのことで良いんだよな? 不気味って、あまり納得いかないけど。


「もしかしなくても、貴方も只者じゃなかったりするのかしらね」

「僕は只者ですよ。普通の、一般的な冒険者です」


 ちなみにB級です、と付け加える僕。


「ふうん。じゃあ、その化け物達が『もうすぐここに来る冒険者を、足止めは良いけど絶対に殺すな』って脅しかけてきたことについてはどう説明するの?」

「いや、知らないですけど……」


 え、本当に知らない。

 というかあの二人は、あの後ここに来てたのか。無事だったのは良かったけど、これはどういう状況なんだろうか。

 どうせなら、足止めとかもしないようにしてほしかったんだけど。


「その二人の前には雷帝と別のS級も来てたみたいだし──流石に怖くて素通りさせたけど」


 魔王はよくて雷帝はダメなのか。基準がよくわからないな。


「あの、僕にも戦うつもりはないので普通に通っても良いですか? 寧ろ、いくつか質問したい事があるんですけど」

「はあ……良いや、どうせ私の目的には影響ないし。それにしても、今日はホントについてない」

 そして、大きくため息を吐くシスターさん。


「まず、先の件があったとはいえ、どうして僕に手を出さなかったんですか?」


 僕がそう言うと、そのシスターは驚いたような、怪訝そうな顔をした。


「貴方ね、どこに侵略支配(インベージョン)と得体のしれないS級冒険者に逆らうバカがいるの?」


 まあ言われてみればそうだけど……素直に従うというのもどうなのだろうか。


「えっと、侵略支配(インベージョン)っていうのは……魔王シリウスのことですよね?」


「そう、というか常識でしょ? 特に貴方たち冒険者にとっては」


 常識らしい。僕が今、魔王について知っていることなど総数くらいで、誰がどういう魔王なのかすら知らない。


「すみません……あまりそう言うことに興味関心がなかったもので」

「へえ、じゃあ足止めついでに話してあげようか?」

「えっ、良いんですか? 僕としてはものすごくありがたいんですけど」


 正直、急いではいるけど気になってしまった以上聞いておきたい……なるべく簡潔に話してもらおう。


「私は他のシスターと違って絶対忠誠! とかじゃないしね。それに、雑談くらい大丈夫でしょ」


 大丈夫なのか……まあ、時間稼ぎにはなるから問題ないのかな。

 元より、僕が黒幕と対峙したところで何がどうなるわけでもないと思うけど──それでも、面白いものを見せると約束したから。


「時間もあまりないので、純系魔王についてだけ教えてください」


 僕はあの人の姿を思い浮かべながらそう言った。


「そう、じゃあなるべく長く喋れるように努力するわ」


 こうしてシスターさんによる魔王講座が始まったのだった。


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