【第22話】冒険者、再び王都へ。(2)
「まず、君にここにいるよう指示したのは誰?」
そもそも、何故この森に魔族を配置してるんだ? 目的がエレストルならその必要はないと思うんだけど。
「……ザリィ様だよ、最上位魔族なんだ〜」
「その魔族はどこに?」
「今は王都デルクって所にいると思うよ〜」
「目的は?」
「それは知らない〜。私、下っ端みたいなものだし〜」
この子で下っ端なのか……あのディレという魔族がどれだけレベルが高かったのかが分かるな。
あれ、さっきこの子、君付けで呼んでたような。
「この森に結界を張ったのも君?」
「違うよ〜、これはまた他の魔族なんだ〜」
「そんなにいるの? 全部でどれくらいの数の魔族が関わってるんだ?」
「ん〜、十と少しくらい?」
多すぎるって訳じゃないけど、少ない訳でもない。魔王シリウスとやらが直接出てこなければ、時臣さんとユナさんが解決出来そうだ。
というか、エレストルの聖騎士団でも何とかなりそうだけど──まあ集まった魔族にもよるか。
いずれにせよ、急ぐに越したことはない。
魔王シリウスと教会勢力の目的が分からない今、状況がどう転んでもおかしくないんだから。
「……ありがと。じゃあ僕は行くから」
「えっ、これ解いてくれないの〜?」
「いつになるかは分からないけど、君の仲間が助けに来てくれるでしょ」
「そ、そんな〜……このまま誰も来なかったら、魔物に襲われて死んじゃうよ〜」
泣きそうな顔で言われても、敵だしな……うん、情けは掛ける必要はないな。
「お兄ちゃんお願い、助けて〜……」
■ ■ ■
(本当に良かったのか? 彼奴を逃がしてしまって)
まあ、うん。何か可哀想だったし。それにもう襲ってこないでしょ。
(はあ……つくづく甘い奴じゃな、お主は)
小さい子を虐めるのは趣味じゃないんだよ。出来るなら、皆仲良くハッピーエンドで終わりたいんだ。
(はっ、どうだか)
とりあえず森は抜けたし、そろそろ王都デルクに着くよ。
他の街がどうなってるのかも気になるけど、僕の最優先の目的はフェイ達の安否の確認だ。
【──ステータス加速上昇:筋力・防御力・敏捷性・体力】
【──パッシブスキル『ステータス上昇・小』を習得しました】
……え、今?
(最近アレを作った影響かも知れぬな。もう少し時間が経てば元通りじゃろ)
ああ、そういうことか。それなら特に気にしなくてもいいか。
それで今のスキルは──っと。
【──パッシブスキル『ステータス上昇・小』:全てのステータスが1.1倍されます】
おお、シンプルで分かりやすい。元の数値に倍率が掛かるなら、鍛えれば鍛えるだけ恩恵で大きくなりそうだ。
(ステータスウィンドウの数値なぞ、あまり当てにせん方がいいぞ。結局それは目安にしか過ぎず、“筋力”や“防御力”は身体の部位ごとの平均をとった数値じゃからな。経験や相性、スキルや武器で幾らでもその差を覆すことが出来てしまう)
そうなのか……まあでも、よく考えたら首と腕の防御力が全く同じ訳ないもんな。でも、そんなことよく知ってるね。
(かなり昔に、それで痛い目を見たからな)
なかなか面白そうなエピソードを持ってそうだね。今度聞かせてよ。
(時間があれば、な)
それから少しして王都デルクが見えてくると、そこに広がっていた光景に僕は息を飲んだ。
王都デルクから煙が上がっていた。
手には汗が滲み、自然と急ぎ足になる。
もう少し近付いてみると、僕を妨げるはずの門が崩壊しているのが分かった。既に魔族達が侵入した後なのだろう。
「無事で居てくれ……」
僕は駆け足で門を潜ろうとする。
影術で侵入する必要がなくなって心配事が一つ減ったけど、更に大きな心配事が出来てしまった。
──そして門を潜ると、突然強烈な疲労感に襲われる。
「……っ」
(……例の結界じゃな。お主が魔族になったせいで、結界の影響を受けるようになったんじゃろ)
なんだそれ、最悪だな。半分魔族の亜人種ってだけで、完全に魔族判定されるのか……。
(ん、まあ魔族といえばそうなんじゃが──お主はこの結界の影響を半分しか受けてないぞ)
半分でこれなのか……ラティは平気?
(……妾をあまり見くびるなよ。お主はとにかく目的を果たすことだけ考えろ)
そうだ、時臣さんとユナさんは先にここに来てるはず……もしかして、あの二人も間に合わなかったのだろうか。
しかし、辺りを見ても特に大きな被害が出てるようには見えない。煙が出てるのは中央広場の方だろうか。
人っ子一人見当たらないな……一体、何が起きてるんだ? 聖騎士団員すらいないなんて。
もう少し進んで中央広場に着くと、そこには二つの人影があった。
片方は倒れていて、片方は──時臣さん?
僕は近くに身を潜める。
隠れる必要はなかったと思うが、一応。あそこに倒れているのは魔族だろうか……時臣さんが倒したのか?
「いやあ、参ったでござる。ユナ殿の居場所も分からぬし、この者は一体……」
「うぐ……」
何か喋ってるみたいだけど、ここからじゃあまり聞き取れないな……隠れてる必要もないし、声を掛けようかな。
「時臣さ──」
──ガバッ!
「んぐっ!?」
突如僕の口が覆われ、声を遮られた。




