【第21話】冒険者、再び王都へ。(1)
僕はファレリアを発ち、再び聖エレストル王国領内へと足を運んでいた。
(お主よ。魔法っ娘らが仮に危険な目に遭ってたとして、当てはあるのか?)
まあ、教会に乗り込めばなんとかなるでしょ。
(お尋ね者じゃろ? そもそも中に入れるかどうか……)
変装魔法もあるし大丈夫だよ。成長者のおかげで、顔を変えるくらい訳ないし。全身を変えるのはまだ無理だけど。
(そうではなく──冒険者カードで入場出来ない今、どのようにして門を突破するかという話じゃ)
ああ、そういうことか。それについても問題ないよ、僕には影術があるから。
(……なるほど。しかし、成功率は高いとは言えんぞ)
大丈夫、なんとかなるって。
(……)
それにしてもこの森、こんな深かったっけ? 僕の記憶が正しければ、もう抜けててもおかしくないんだけど……変装魔法の習得でお世話になった森だから、迷わず抜けられると思ったのに。
(お主の記憶力が当てになるかはともかく、確かに思っていたよりも深いな。それにかなり薄いが、何かの気配がするぞ)
なんだ、何かの気配って。魔物とかいるのか?
(…………ふむ、これはやられたな)
え、何?
(何者かの干渉を受けておる。森を抜けられんのはその影響じゃろうな)
どうやら、何らかの厄介事に巻き込まれたらしい。人目につかないようにするとはいえ、この森に入るべきじゃなかったかな。こんなとこで時間を取られてる場合じゃないんだけど……。
(巻き込まれたというか、そもそも相手の狙いはお主じゃぞ)
え、そうなの? じゃあ、いつ襲われるか分かったもんじゃ────、
「やっと会えたね〜」
突然、背後から気の抜けるような声が聞こえてきた。
僕は振り返らずに、口を開く。
「……一応先に訊いとくけど、見逃してくれたりする?」
「ん〜、ディレ君の仇だから無理かも〜」
「だよね〜」
仇ならしょうがないか。
僕は背中の剣を抜き、素早く振り返って斬撃を繰り出す。
──ガシッ!
「わ、やる気満々だね〜」
く、熊の人形に止められた?!
「……そっちも殺る気満々みたいだね」
「ん、絶対殺すよ〜」
ヤバい、思ってたより殺意が高い!
(手は貸さんからな。後は頑張れ)
分かってるよ。これぐらい一人で何とか出来ないようじゃ、この先やっていけないしね。
「行け〜、ルル〜!」
魔族の少女が腕を振ると、大きな熊の人形がこちらに突撃してきた。
「なるほど、人形使いか」
こちらに向かってくる熊の人形を待ち、冷静に対処しようとする。まずは様子を見るのも大事だ。
──ヒュンッ!
しかし、僕のその行動を嘲笑うかのように眼前に迫ったのは、魔力で出来た弾だった。
「っ!!」
まさかの魔族の少女による直接攻撃。普通、こういうのって人形だけじゃないの?
「くっ……!」
咄嗟に攻撃を避けるために体勢を崩した僕は、厳しい対処を迫られることになった。あまり手の内は見せたくないんだけど、仕方ない────。
『影刃!』
人形に向けて放ったそれは、
はたして命中することはなかった。
「それ、知ってるよ〜」
え、手の内バレてるの?
……いや、あの魔族の仇が僕だと割れているなら、僕の使う技だって既に割れていると考えるのが普通か。
「あの不意打ちだって効かないよ〜?」
やはり潜影のことまで──多分だけど、影刃斬りと纏影、影縛りの情報はないはず。このアドバンテージをどう活かすかだな。
……とりあえず、まずはこの人形をどうにかしないとだな。ファンシーな見た目とは裏腹にとんでもない破壊力。一発貰うだけでも致命傷になりかねない。
「逃げてばかりじゃつまらないよ〜?」
人形使いの魔族が言う通り、僕は逃げるしかなかった。
少しずつ魔法や影術で攻撃を仕掛けてはいたのだが、どれも魔力障壁を突破するだけの威力はない。
「じゃあ、そろそろ僕も攻勢に出ようかな」
「出られると良いね〜?」
「出るさ」
僕は向きを人形使いの魔族に変え、潜影を使い思い切り突撃した。
ここは森、この間みたいに自由に動き回ることができる。
「だから〜、それは知ってるってば〜」
僕は正面に飛び出し、剣を大きく振り被る。
『生きる人形達の舞踏会!』
人形使いの魔族の周囲に無数の人形が現れる。
「メッタメタにしちゃえ〜!」
『────爆・影刃斬りっ!!』
そして、盛大な爆発音。
火属性の爆裂魔法と影刃斬りを合わせた技で、魔力をよく通すこの剣ならではのもの──今の、めっちゃ魔剣士っぽい!
(ネーミングセンスは壊滅しとるがな)
静かにして、今集中してるから。
「……びっくりしたよ〜。まさか、人形達が吹き飛ばされちゃうなんて〜」
爆発の衝撃で発生した砂煙の中に人影が見える。
「でも残念〜。私を倒せるだけの威力はなかったみたいだね〜」
人形使いの少女は大きな熊の人形に守られ、直撃を避けていたようだ。
そりゃそうだ。
だって、ソイツがいるもんな?
「ま、倒す気なんて無かったからね」
──シュンッ!
「きゃっ!」
僕があちこちに仕掛けていた影縛りの糸を引っ張ると、その糸は一箇所に勢いよく纏まり、人形使いの少女と大きな熊をまとめて縛り上げた。
「君たちをどうやって一箇所に集めようか悩んだよ。君に攻撃しても、魔力障壁で防ぐもんだからさ」
片方を止めても、もう片方がいる。
だから僕は両方を一気に行動不能にする手段を選んだ。
まさか、沢山の人形が出てくるとは思わなかったけど、魔力障壁を破る為に放ったあの技が一掃してくれたらしい。
「ぐぐぐ〜、解け〜!」
「無駄だよ。強度はかなり上げといたからね」
影縛りの糸は太さも強度もそこそこ自由に変えられる優れモノ。
影刃斬りみたいに魔力を流せたりするのだろうか──そうだ、今試してもいいかもな。
「わ、悪そうな顔してる……誰か助けて〜!」
「そんなに時間がないんだ、早く情報を吐いてくれたらお互い楽なんだけど」
「む〜、悔しいから嫌〜!」
「そうか、分かった。残念だ」
僕は剣を振り降ろす。
「ま、まま待って〜! 話すから〜」
……危ない、あと少し遅かったら首を刎ねるとこだった。
「いいかい? 僕は魔族なんだ。人の心なんて、疾うの昔に捨てたんだぞ」
「……何を話せば良いの〜?」
「知ってること、全部だよ」
現在進行中の改稿は今のところここまでなので、次話から文章ごとの間隔が変わってると思います。ご了承いただけますと幸いです。




