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【第15話】冒険者、目を覚ます。


 目を覚ますと、見知らぬ天井。

 ここはどこだろう。


 恐らく、王都デルクのどこかだとは思うんだけど……それに何だか、左腕に違和感というか、謎の重さを感じる。


「……」


 体を起こすと、椅子に座ったまま僕のいるベッドにうつ伏せになるように寝ている蒼い髪の少女がいた。


 なんか、僕の腕が枕にされてるんだけど。


(この魔法っ()はお主が寝ておる間、ずっとここにおったんじゃよ)

 そうだったのか……フェイ、長い時間ありがとう。それで、僕はどれくらい寝てたの?


 と、僕は改めて周囲を見回す。


 清潔に保たれているこの部屋はひどく殺風景で、まさに休養をとるためにだけ存在しているかのようだった。


(うーむ、ここに運ばれてから四時間くらいか?)

 じゃあそんなに経ってないじゃん。

(この魔法っ娘は、一時間経った辺りで寝たぞ)

 寝落ち早いな!


 ……いや、こういうのは時間じゃないよな。


 居てくれただけすごくありがたい、僕にはもったいないくらいだ。


「──むにゃむにゃ……はっ!」


 フェイが目を覚ます。


「や、おはよ ──」


ギュッ!


「ぐぇ」


 突然思い切り抱きしめられる。


 どうやら、かなり心配させてしまったみたいででででで! 痛い、死ぬ!


「うわぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ん! 死んじゃってたらどうじようがど思いばじだぁ゛ぁ゛!!」

「…フェイ゛…ギブ……ギブ……!」


 やばい、圧殺される! 死因が抱擁とか笑えない……いやちょっと面白いけど、普通に嫌だ!!



「落ち着いた?」

「はい……」


 なんとかフェイを宥めることに成功し、漸く解放された僕は気になっていたことを尋ねた。


「ここはどこなの? 僕が泊まってた宿ではなさそうだけど」

「ここは王都デルクにある治療施設ですよ」 

「そうなんだ。でも、そんなに大した怪我じゃなかったでしょ」

「えっと──四、五箇所骨折することは大した怪我に含まれないんですか?」


 超ボロボロじゃん。大した怪我じゃん。


(お主、あの魔族に殴られとったじゃろうが)

 いや、一発でそこまでなるとは思わないって。

(はあ……()いか? 最上位魔族というのはな、たとえ戦闘が得意じゃないやつでも、今のお主と比べたら天と地の差なんじゃぞ)


 まあでも、よく考えたら抱き締められただけで身体が痛むはずないもんな。

(いや、お主の骨折はとっくに治療されとるぞ。アレは、魔法っ娘の力が強すぎるだけじゃな)

 ええ……?


──ガチャリ


 と、部屋の扉が開いたかと思うと、そこには見知った顔が二つあった。


「あ、セインさん。それにエフィさんも」


 セインさんも無事だったみたいで良かった。まあ、超A級の魔物なんかに負けるはずはないとは思っていたけど、ちゃんと無事を確認できて一安心だ。


 「元気そうで良かったよ。君たちに何かあったら、ミネルヴァさんに何を言われるか……」

「私はレイシャに言われて様子を見に来ました。無事で何よりです」


 レイシャさん──何だか、「心配とかしてねーからな!!」という声が聞こえた気がする。


 そして二人の後に、騎士のような人が入ってきた。


「ハル殿ですね? お目覚めしたばかりのとこ申し訳ないのですが、国王陛下が一度お目にかかりたいとの事でして……」


 こ、国王だって?


(ほう、人の国の王か。ここは一つ、どんな奴か妾が直接見てやるか)

 なんでそんな上からなんだよ。というか、ディレに向かって数千年を生きたとかなんとか言ってたけど……。

(それは説明するのがものすごく面倒じゃから、また今度でいいか?)

 おい、そのままバックレる気だろ。分かってるんだぞ。


「ハル君、俺とフェイ君も呼ばれてるんだ。体調に問題がなければ、一緒に行こう」

「あ、はい」


 こうして、僕は国王と会うことになった。



● ◯ ▼



 僕は城に向かう途中、先ほど手に入れたスキルについてラティに聞くことにした。


纏影(テンエイ)というのは、妾が使った『大暴食の腕(グラトニー・ワン)』の元となるスキルじゃな)

 ああ、あのヤバイやつ……。

(文字通り、身体や武器に影を纏うことで攻撃と防御、どちらにも使えるぞ)

 そりゃ便利そうだね。この影刃斬りっていうのは?


 (うむ、剣術スキルと影刃が組み合わさって派生したものといったところか。妾には使えぬから、お主が色々試すと良い)

 おお、すごいワクワクしてきた。今すぐ魔物と戦いたい気分だ。

(スキルだけじゃなく、お主の地力もそこそこ上がっとるみたいじゃしな)

 改めて、スキル(成長者)さまさまだな。



「そういえばハル君。さっき、見たことない技を使っていたよね。あれは一体どこで習得したんだい?」

「あー……」


 別に隠すつもりはないけど、魔人に教わったっていう訳にもいかないよなあ。


「僕が住んでいる所に変わった人がいまして。その人、変な技を色々知ってたので教わったんです」

(おい、誰が変じゃ)


「へえ、変わった人か……俺も今度、テオルスに行ってみようかな」

「何もない所ですけど、良ければ案内しますよ」

「良いのかい? じゃあ、楽しみにしているよ」


 そんな会話をしていると、何やらとてつもなく強い視線を感じる。

 予想通り、その視線の正体はフェイだった。何故かふくれっ面をしている。


「私も行きたいです! 私も案内してください!」

「ははは。フェイ君はまだ学生だから、大分先になるだろうね」


 セインさんが言う。


 どうやら学生はあまり遠出が出来ないらしい。授業をサボる訳にもいかないだろうし仕方ない。


「ズルいです! 私も連れてってください!」

 

 ギャーギャーと騒ぐフェイは一旦置いといて、僕はセインさんに質問した。


「セインさん。森での戦いでセインさんが使っていた技──あれは魔法じゃないですよね?」

「ああ、そうだね。これはスキルだよ」


 そう言うと、セインさんは手に雷を纏わせる。


「俺の持つスキルは“雷神”──特殊スキルなんだ。それに、俺の使っている剣も少し特殊でね」


 特殊スキル──あれだけの力、普通じゃないとは思っていたけど。


「──さあ、御三方。着きましたよ」


 気付けば僕たちは城の前まで来ていた。


「うわあ、すごく緊張します!」

「大丈夫だよ、ヒルド王は優しい御方だから」


 そして、城内へと足を踏み入れた。


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