【第134話】裏側。
遅れてしまい申し訳ございません。
「ふんふんふーん」
「やけに機嫌がいいな。何かあったのか?」
「あはは、分かっちゃう? いやあ楽しみでさ」
冒険者ギルド、その拠点の中にある私の部屋。そこで私はクロエと雑談をしていた。
さっきまで例の四人について色々話し合ってて、今はちょっと休憩中。
四人とも最初は不安そうにしてたけど、あれから一週間近く経った今は、少しだけこの世界に慣れてきたように思える。
「もうすぐファルパンクで面白いことが起きるから、ついね」
「ふむ……ファルパンクというと、ユナや我が盟友が“おつかい”とやらで向かった場所だな──もしや、何か仕組んだのか?」
ジトっとした目でこちらを見るクロエ。
「そりゃねー。マルタがあの二人に仲良くおつかいデートとかさせる訳ないじゃん」
「ならば、其方が我が盟友と共に向かえば良いのではないか?」
「それは無理だよ」
「何故だ?」
「マルタがだーりんに何するか分からないから」
「……」
「……」
まあ、それはさておき。
「それで、その面白いことというのは?」
「うん。二人には、ルヴァリに“新しい機巧人形をつくるための核”を届けてもらってるんだけど……実はそれ、コアじゃないんだ」
「ほう」
「パッと見はコアにしか見えないんだけど……あのパーツじゃ、どう頑張っても機巧人形はつくれないように出来てるから」
「何の為にそのようなことを?」
それから、私はたった今ファルパンクで起きているであろう出来事を伝えた。
ティファレトの身に起こってることや、彁羅の関与について。
「ルヴァリは今頃気付いてると思うけど、あれは“武器”を作るためのものなんだよ。元々、あのコアでつくった新しい機巧人形にファルパンクの全機巧の制御権やらなんやらを付与して、最終的にティファレトを止めてもらうっていう計画だったんだ」
だけど、それじゃ納得いかなかった。
私も、ルヴァリも、だーりんもね。
どうせだーりんは「手伝わせてください」とか言って、首を突っ込んでくれるから。
あとは、全てがうまくいくように私が調整すればいい。
敢えてコアの形にしたのは、念の為。どこで誰が見てるか分からないからね。
「多分、今はだーりんとティファレトが戦ってるんじゃないかな」
「……我が盟友に勝ち目はあるのか?」
「ないよ。だーりんが最初から魔王結界を使ってくれればもしかするかもだけど、普通に考えてあり得ないし」
それに、今のだーりんにはあの魔人さんがついてない。
今頃、その魔人さんは屋敷でハプニングに巻き込まれてるだろうなあ。面白そうだし、視ておけばよかった。
「成る程、その為の武器なのだな」
「正解〜。まあユナもいるし、とりあえず何とかなると思うよ。それに……面白いのはその後、だよ」
「……その後?」
■ ● ▼
「出来た……!!」
俺は完成させた武器を掲げる。
我ながら天才なんじゃないかと思わされる出来栄えだ。
まったく……俺でなければ、完成させるどころか意図にすら気付けなかったぞ、マルタ君。
「さて、ハル君に届けるとするか──」
ガチャッ!
「大変ですルヴァリさん! 都市中の機巧の動作が突然停止しました!」
「……何だって?」
思っていたより相手方の動き出しが早いな……後手に回ることになるのはまずい。
──待てよ。機巧の動作が停止だって? 暴走じゃなくてか?
俺達が気付いてることに気付いたのか? 相手方にとって、これは予想外だったということか? それによって、未完成の計画を実行に移したということか?
いや、まだ早計だな。いくらでも可能性は考えられる。
敢えて暴走ではなく停止を選ぶ理由を挙げるとすれば何がある?
……いずれにせよ、彼が危ない。
「分かった、原因は俺が探ろう。とりあえず、最低限の生活に必要だった機巧の代替品を国民に配布してくれ」
と言っても、原因は明確。
後はこの剣を彼に届けるだけだ。
マルタ君。君がそうしたいのならば、俺はそれに付き合おう。
俺だって、国の為だからといっておいそれと彼女を見捨てることは出来ないからな。
今までこの国に尽くしてくれた彼女に為に、今度は俺達が頑張る番だ。