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【第124話】冒険者、そして国主と機巧メイド。(1)


 「ほえ〜。まさかハル君があのS級冒険者さんと知り合いだったなんて……」

「黙っててすみません。わざわざ言うことでもないかなと思ったので」


 あれからあのお店を出た僕達は、例の道具屋近くまで戻って来ていた。


 ユナさんによると、店を出て僕を探していると、最初からユナさん(と僕)をつけていたという謎の人物からの情報提供で僕の居場所を把握したらしい。

 よくもチクってくれたなと思ったが、よく考えたら普通に僕が悪いので今回は見逃すことにした。



「……あ、もしかして今日はお忍びのデートか何かだったの?」


 と、エヌさんが耳打ちしてくる。


 ユナさんにサインを貰ったからだろう、やけに上機嫌だった。


「あはは、やめてくださいよ。ユナさんは友人ですよ」

「……え、ボクたちって親友だよね?」

「まあ、それは状況によりますね」

「あれ、友情ってそんな可変的なものだったっけ?」


 状況で変化する関係というのもなかなか悪くない。


「それにしても妬いちゃうなー。ハルくん、目を離したらすぐ友達つくっちゃうんだもん……しかも異性!」

「良いことじゃないですか」

「そうだけどさ、そうじゃないんだよ。分かんないかなー? ボクには異性の友達はハルくんしかいないんだよ?」


 しれっと異性の友達リストから消されてる同じS級冒険者のギルとラスタリフさん、そして時臣さんに涙を禁じ得ない。

 今頃何してるんだろうな、皆。平穏無事に過ごしてるといいけど。


「大丈夫ですよ。僕の異性の友人の中ではユナさんが一番なので」


 ラティは相棒の中で一番、ヘレンさんは冒険者協会関係者の中で一番、フェイは元パーティメンバーの中で一番、レンは魔王軍の中で一番……という風にしていけばまあ嘘ではない。


「ホント? じゃあどれくらい好き?」

「これくらいですね」


 と、影蜘糸で大きめのハートを作る。


「えへへ、なら許しちゃう」

「よし」


 ユナさんがいる方とは逆側の手で軽いガッツポーズをキメた。


「……あれ、二人ってカップルとかじゃないんだよね? ウチにはそうにしか見えないんだけど」

「? これくらいは普通ですよね?」

「うん、ボクも普通だと思うけど……」


「……ウチがおかしいのかな? それとも、冒険者の普通があれなのかな?」

 


 と、しばらく歩いている内に目的地へ到着した僕達。


 ファルパンクの国主がいるという大きな建物。

 この建物も例に漏れず、全体的に機巧感あふれる特殊な造形になっている。


「それじゃ、ウチはこっちだから! 時間があったら寄っていってねー!」


 手を振って去って行くエヌさん。


 どうやらエヌさんはこの近くでお店をやっているらしく、そこそこ有名な機巧屋なのだとか(本人談)。

 機巧には興味があるし、この用事が済んだら行ってみようと思う。


 プシュゥゥという如何にもな音とともに扉が開くと、僕達は建物の中に足を踏み入れて行った。



 中に入ると、そこはかなり豪勢な内装になっていて、受付らしき場所には機巧人形が立っていた。


「やっほ! ルヴァリさんはいるかな?」

「ユナ様ですね。ゼクシオ様はあちらの部屋でお待ちになっております、どうぞお通りください」

「ありがと! よし、それじゃ行こうか」


 僕がその受付さんに会釈をすると、返って来たのを見て「お〜」という感想を抱きつつ、ユナさんの後をついて行った。



「いらっしゃいお二人さん、待ってたよ」

「お待たせしましたー!」


 入った部屋にはソファに腰を掛けている一人の男性と、そのソファの後ろ側で姿勢よく待機している一人の機巧人形がいた。

 お世話係なのか、ヴィクトリアン給仕(メイド)服を来ている。


 この初老の男性こそがファルパンクの国主であり、ギルの父親だという“ルヴァリ・ゼクシオ”なのだろう。一見した感じ、かなり気の良さそうな人物だ。


「マルタ君から話は聞いてるよ。例のパーツを持って来てくれたんだろ? まさか、頼んでから一週間で完成させるとは思わなかったよ。流石と言わざるを得ないな」


 ははは、と愉しそうに笑うルヴァリさん。


 それに関しては、依頼をされること自体を未来演算(ラプラス)で把握していただろうし、マルタならもっと早い段階でそのパーツとやらを完成させていてもおかしくはないだろう。


 ただ、この人がマルタのことを()()()()知っているのか僕は知らないので、黙っておくことにした。


「その“例のパーツ”なんだけどさ、これって何に使うやつなの? ボク、マルちゃんから何も聞いてないんだよね」

「うーん、そうだな……言っていいものか悩ましいところだが……まあいいか」


 と言うと、ルヴァリさんは付近で待機していた機巧人形を一瞥してから僕の方を見る。


「ユナ君は知ってると思うが、彼女の名前は“ティファレト”と言ってな。彼女の正式名称は“完全自律型防衛機巧・司令塔ティファレト”というんだ」


 と、話を切り出すルヴァリさん。


「その名の通り、彼女はこの国の防衛全てを担ってる。要するに、ファルパンクの機巧兵士や機巧兵器の最終的な統御及び統帥権は彼女が持っているということだな」


 ルヴァリさんがそう説明すると、ティファレトというメイドさんはこちらに一礼をする。

 その所作はまさに洗練されたお給仕さんそのものだった。


「そしてこのパーツは、彼女のような存在を()()()()()()()()()為のものだ」

「「えっ」」


 ユナさんと声を重ねたのは、僕ではなくティファレトさんだった。


「えっえっ、ティファレトちゃんみたいな子をもう一人増やすってこと? もしかして、世界最強の軍事国家でもつくろうとしてる??」

「今の話は初耳です、マスター。私一人では力不足なのでしょうか。僭越ながら、私はあの純系魔王に勝利を収めること出来る()()()を持つ超優秀なエリート機巧人形なのですが」


 と、二人はルヴァリさんを問い詰める。


 ティファレトさんの自画自賛具合には若干驚かされたが、その内容は非常に興味を惹かれるものだった。


 純系魔王に勝てる可能性を持っているというのは、どういう意味だろうか。



 ────ただ、それよりも気になることが一つ。



「ははは、落ち着きな二人とも。もちろんこれには訳があるんだ」


 この人は、何か嘘を吐いている。


 もしかしたら題名を変えることがあるかもしれません。

 ある程度原型は残す(予定)ので、「あー変わったなあ」くらいの認識で大丈夫です。

 

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