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【第123話】機巧の都スールパーチ


 「おお……!」


 予定通り四日後の昼頃、ファルパンクの首都“スールパーチ”に到着した僕達。


 実は馬車での移動中に一度盗賊の襲撃があったのだが、ユナさんの姿を確認した途端、蜘蛛の子を散らすように退散してしまったので、その話は省略させてもらった。


 スールパーチの門を潜ると辺り一面機巧、機巧、機巧。そこかしこに機巧があふれている。


 門を警備している兵は数名を除けば全て機巧兵士だったし、遠くにそびえ立っている塔のような建物の一番上には巨大な時計が置かれていた。


 この〝時計〟というのは、ファルパンクが生み出した有名な発明品の一つで、現在の時刻が分かるという優れもの。

 そして、あの時計塔の示す時刻が世界の標準時刻とのことらしい。


「はえ〜、すごいですね……」

「うんうん分かるよその気持ち、ボクも初めて見た時はかなり驚いたからね! 最近は“機巧列車”っていうのを開発中らしくて、あと一、二年もすればファルパンク中を簡単に移動出来るようになるんだって! ホントすごいよね〜」


 革命だな。さっき転移魔法陣云々の話をしたけど、もし機巧列車とやらが世界中に普及すれば、交通や物流が一気に数段先のステップに進むじゃないか。


「そして更に驚きポイント! 今からボクたちが会いに行くのは、“ルヴァリ・ゼクシオ”っていう人なんだけど──なんと、ファルパンクの国主にしてギルくんのお父様なのです!!」

「へえ、すごいですね」


「あれ、思ってたより反応が薄いなあ……“どわ〜〜〜!”って感じになると思ってたのに」

「そんな反応するタイプだと思われてたんですか……?」


 今まで一度も「どわ〜〜〜!」なんて言ったことないはずなんだけどな。もっと言えば、僕が失った記憶の中でも絶対に言ってない自信がある。


 というかそもそも、「どわ〜〜〜!」って何だよ。


「僕には古龍の娘兼、龍人族兼、仙人の知り合いがいるので、今更ですよ」

「あはは、たしかに!」


 まあ後は超長生きしてる幼女とか、偉大なる吸血鬼とか、人類最強の国主とかいろいろ。


「それじゃあさっき伝えたとおり、このお店に用事があるからちょっと寄ってくるね。すぐ戻るから、少しの間好きに遊んでていいよ!」

「分かりました」


 という訳で、ユナさんは目の前のお店に入って行った。

 このお店は街一番の道具屋らしく、人の出入りも多い。何やら、依頼のことで話があるのだとか。


「さて、何して時間をつぶそうかな」


 今まではずっとラティと一緒にいたし、久しぶりの一人だな。とはいえ、魔力はリンクされてるから厳密には一人じゃないのかもしれないけど。


 ラティと結んだ〝契約〟は、どちらかが死ねばもう片方も死ぬという、まさに道連れの契約。魔力が共有され、生命力も共有される。


 一応、どれだけ離れていても僕の“感情”だけはラティに伝わるらしいので、どの道あまり変なことは出来ない。


 まあ、思考がリアルタイムで伝わらないだけまだマシか。


「……それにしても、冒険者が少ないな」


 辺りを見回してみても、冒険者らしき格好の人物はほとんど見当たらなかった。


「それはね〜、この街では冒険者業があまり賑わってないからなんだよ!」

「へえ、そうなんですね──ってうわっ!」


 気付けば、僕の背後に見知らぬ女性が立っていた。

 まさかこんな簡単に背後を取られるなんて。


「あははっ、ずっと突っ立てるもんだから迷子なのかなって思って声掛けちゃった! もしかして迷惑だった?」

「とんでもないです」


「よかったー! ウチってよくお節介な人って言われるから、またやっちゃったかもって思っちゃった!」


 そう言って、片手を頭の後ろに回す女性。


「それで、冒険者業が賑わってないというのは……」


「そうだったそうだった! スールパーチの周辺はほとんど整備されてて魔物がまったく出ないし、機巧兵士が巡回してるから出てもすぐ倒されちゃうんだよね……」

「なるほど……」


 確かにそれなら依頼や任務も少なそうだし、冒険者が少ないのも頷ける。


「それに、機巧兵士じゃ手に追えないような魔物が出てきたら、この街の冒険者さんにも大体手に追えないからね〜。そういう時は、S級冒険者さんの出番というわけ!」

「ああ、だからか……」


 ユナさんはかなりこの街に訪れてるみたいだったし、そういうことなら納得だ。


「実はウチ、あのS級冒険者のユナ・ライゼンさんとギル・ゼクシオさんに会ったことあるんだよ! すごいでしょ!!」

「それは……すごいですね」

「あーでも、ギルさんはこの街出身みたいだから、ここの人たちからしてみればそれほど珍しくはないのかも……?」


 と、腕を組んで考え込む仕草をする。


「ということは、お姉さんはこの街出身じゃないんですか?」

「うん、そうだよ! ウチは五か月くらい前にスールパーチに来たんだ〜。あ、でもこの街にはそこそこ詳しいつもりだから、君さえよければウチが案内しようか?」


 それは願ってもない申し出だけど……そんなに遠くにいく訳にもいかないんだよな。まあ近場を案内してもらえばいいか。断るのもあれだし。


「それじゃあお言葉に甘えて、お願いします」

「よし来たっ! ウチ、魔族の友達ってドワーフばかりだったから、君と友達になれて嬉しいな!」


 言いながら、キラキラとした視線を僕の片角へ注ぐ。


「僕はハルです。よろしくお願いします」

「……あー、ウチは──エヌだよ! よろしくね!」


 僕達は軽い握手を交わした。


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