相転移
そこが別世界だという印象は全くない。
わずかに感じるのは、光がゆがんでいるためだ。
それもすぐに戻る。
何も変わらない日常を歩んでいる人々を前にして、本当にここがそうなのか、ということを疑いたくもなる。
だが、計器を確認すると、確かに物理法則が少し変わっていることに気づいた。
「……成功だな」
独り言をつぶやく。
別世界への相転移に成功したようだ。
まあ、だからと言って、本当に相転移ができたか、と言われたら疑問も残る。
それを証明する手段がないためだ。
少し、生活してみたらそれも分かるだろうと思い、この世界を調べてみることにした。