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第九十四話 なぜにレイラよ

なぜそれを、とでも言いたげな目で私の顔を凝視するリンクを見て、顔に出やすいのは弱点になるぞ〜なんて心の中で呟く。


「サーレから、聞いたんですか…?」

「少し違いますね。初めて会った時にサーレが魔道具に乗っていたんです。スクーター型の」

「!…あれを見たんですか…」


やはり自分で作った物は覚えているのか、リンクは表情を歪めながら「そうですか」と返事をした。魔道具の事、知られたくなかったのか?


「姫殿下も人が悪いですね…あれを見て興味がある程度だなんて思うはずがない」


あぁ、表情を歪めたのはそういう意味か。姉様をブラッドフォードとくっつけようとか、リンクを引き抜きたいとか、結局は私のエゴだから人が悪いと言われれば、まぁそうなのかもしれないけど。


「すみません、少し躊躇いました」

「…いえ、私の口が過ぎました。確かに私相手に魔道具の話をするのは躊躇いますからね」


すぐに頭が冷えたらしいリンクがそう言うので、私はなんとも言えない笑顔で返す。騎士の名門リディア家の人間に「魔道具が趣味ですよね?」なんて聞く人間は滅多にいないだろう。それが次期当主ともなれば尚更で、きっとパーティーなどの社交場で言えば周りから変な目で見られるんだろうな。けど、ここには私とリンク以外いないから関係ない事だ。


「少し踏み込んだ話をしましょう。リディア家次男リンクさん、貴方はリディア家にどれだけの想いがありますか?」


私の問いに目を見開く姿はどことなくリアンに似ていて、あぁここら辺は兄弟なんだなぁ、と思う。そんな事言われると思っていなかったって顔だ。


「……質問の意味がわかりません」

「では言葉を変えましょう。貴方はリディア小伯爵として、将来リディア家を継ぐ事に関して納得して──」

「姫殿下!!」


それ以上は言うな、そう言いたげな瞳が私を見つめる。そうだね、リンクは言って欲しくないんだろうね。リアンがいるのに次期当主としての努力を強いられて、自分の中の唯一であろう魔道具まで簡単に切り捨てられる。それでも母であるリディア夫人を悲しませないよう頑張って、今は苦しんでいる最中なんだろうね。だからこそ、一切の関係がない他国の姫なんかの無責任な言葉を、聞きたくはないのだろう。希望なんて持ちたくはないのだろう。


だけど、どこかで期待しているのも、事実なんだろうね。


「魔道具を専門に作る職人として、生きてみる気はないですか?」


これはリンクに、リディア伯爵家を捨てる気はあるか、と聞いていると同義。騎士の名家の息子が魔道具職人になるなんて貴族連中の良い噂の的になってしまうから、縁を切ってしまった方が都合が良いのだ。だから「私の元に来ませんか」でも「お手伝いします」でもなく、「生きてみる気はないか」という言葉にした。リディア家という家紋を捨てて、ある意味主人を探し求めたリアンと同じ選択をするかどうか。

リンクは言葉を失っていて、けれど私から視線を逸らす事なんてしなかった。


「……リディア夫人は貴方の才能に気づいていますよ」

「!」

「彼女は、貴方とリアン、二人の事を見つめ直している。そして、ちゃんと決めようとしているんです」


今チャンスを逃したら、きっと一生後悔する。それを直接言うには私はリンクを知らなすぎるし、そもそも引き抜きたいのも私や姉様の利益になると思っているから。だけど、リディア夫人が立ち上がってくれている今が、リンクの最後のチャンスなんだと思う。


「貴方も、決める時ではないですか?リンクさん」


そう問い掛ければ、リンクの瞳の奥が揺れる。リンクは不安げに視線を彷徨わせ、それから意を決したように言葉を紡いだ。


「カタルシアには、あの人もいるんです…よね…」


その言葉は全く予想していなかったもので、一瞬だけ私の記憶が荒く漁られる。

あの人?あの人って誰だ?


「騎士団長の、レイラという…」

「え?あ、はぁ、まぁレイラは第一皇女の騎士団長を務めていますけど…」


なぜにレイラよ。え、待って、なんでレイラの名前が出てくるの?本気で頭が混乱してるんだけども。


「………少し、考えさせていただけますか?」


そう言ったリンクの表情は本当に不安そうで、だけど私の頭は絶賛混乱状態だ。この表情が悩んでいるならまだ良いけど、レイラ関連で何かあった場合その対処をしておかないとどう転ぶか予想ができない。ここまで来たらリンクの事ちゃんと引き抜きたいんだけど!?


「あの……なぜ、レイラの事を…?」


できるだけ皇女としての品を落とさずに聞けば、席から立ち上がってしまっているリンクが少しの沈黙を置いて答えてくれた。


「あの人は、俺の事を見てくれたような気がしたので」


一瞬だけ次期当主としてではなく、リンク・リディアとしての顔が覗く。それからリンクは「少し失礼します」と言い残し、部屋を出て行ってしまった。

残された私の心情は皆様お察しかもしれない。けど、ごめん、叫ばせて…。


レイラ何しやがったぁあああああああ!!!!!

お読みくださりありがとうございました。

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