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第九話 第一章一話、出会いの舞台


何が「花姫」だ。

美しい容姿も、王族という地位も、親から、人から愛されなければなんの意味もなさない。

姉様を苦しめて幸せになるヒロインだけど、人としては凄く純粋な人。

だからシスコン兄様でも惚れたんだ。


「クレイグ」


一言、名前を呼べばすぐにクレイグが現れた。

クレイグは私の顔を見ると複雑そうな顔をして、「どういたしましょうか」と聞いてくる。


「どうもこうもないよ、私には関係ない事だもん。……ただ、少し胸糞悪いから、八つ当たりくらいはしても良いかなって思ってるけどね」

「…では、八つ当たりの相手にピッタリな方の元へ行きますか?」

「いい。先に頼んでた所に連れて行って」


私の機嫌が悪い事を察しているらしいクレイグは、ただ頷いて答えた。


───






“出会いの舞台”と称される第一章、一話ではヒロインが攻略対象と出会う。

その出会いは様々で、ヒロインの行動やセリフを選択すると少し変わったりするのが特徴だ。

兄様の場合は3パターンあって、国王へ挨拶しに行く時に一目惚れするか、アルバの王太子と話している時にヒロインの事が話題になって興味を示すか、そしてもう一つは…。


「ここで出会うんだよなぁ…」


賑やかな会場に対して風の音すら拾えてしまう静かな場所。

美しく華やかなものを好むアルバの国王の城とは思えないほど、白い薔薇で統一された小さな庭は、唯一ヒロインのためだけに用意された“リリア”の居場所だ。

兄様はここでヒロインと出会い、下を向くばかりだった姫の安らかな顔を見て惚れてしまう。そして私にとってのバットエンドへ向かうわけだ。


「人払いは?」

「済ませてあります。ですが他国の城ですので、完璧とまでは…」

「そう。じゃぁ兄様が来たら追い払ってね」

「かしこまりました」


白薔薇の庭同様、静かに消えて行ったクレイグを見送ってから、大理石でできた美しい床に腰を下ろす。

明かりもろくに無い暗くて寒い、あるとすれば白い薔薇だけの庭。美しさを追求したと言えば聞こえは良いが、花以外にはベンチも何もあったものじゃない。スチルで見た時はただ綺麗だと思っていたけど、こうして見ると質素で虚しい気分になる。

ヒロインの扱いを知ってしまったから余計に。

………クロードルートに進めばヒロインは皇后となり、この環境からは抜け出せるはずだ。

きっと、ゲームでは描かれていないけど、王宮の人間はヒロインを虐げていた事を後悔する。

だけどそれは、姉様を傷つけて勝ち取った場所で。

そんなの私は許さないし、幸せになるだけなら他のキャラのルートに進ませれば良い話だ。


「アステア様……?」


ビクッ。

無意識に丸まっていた背筋を伸ばす。

人払いしても追い払えない人、それは当然この城の人間で、あの会場から抜け出せるなんて限られている。

当然と言えば当然だが、いきなり現れないでほしいものだ。

意を決して振り向けば、琥珀に輝く瞳と目が合った。


「リリア王女殿下…」


私がここにいるなんて思いもしなかったのだろう。

リリアは最大限に目を見開いて驚いていた。


「……あ!え、えっと、こ、ここになんの用…ですか…でしょうか?」


どう話して良いのかわからないらしく、拙い言葉で聞いてくる。


「…申し訳ありません。美しい白薔薇に目を奪われてしまって見惚れていました。ここはリリア王女殿下の庭なのですか?」


できるだけ刺激しないように優しく微笑みかければ、リリアは何故か顔を真っ赤にして「は、はい!」と答えた。

風に揺れる金の髪は柔らかそうだけれどストレートで美しく、恥ずかしげに伏せられた琥珀の瞳に魅せられる。

………これは…一目惚れするのもわかるな。

しかも人に慣れておらず、今まで虐げられてきた王女様。

世の男どもが嬉々として保護しようとしそうだ。

まぁ、私の一番は姉様に変わりないけど。


「…リリア王女殿下、少しお話をしませんか?会場は賑やかすぎて少し疲れてしまったんです」

「え!?あ、え、えっと…わ、私なんかで良ければ…」


王女が「なんか」など、謙遜以外で使う場面などないだろうに。

たぶんリリアは本心でそう言っている。………あー、ダメだ。またあの国王に苛々してきた。

娘一人愛せずに何が王か、背中を這いずり回る不快感に蓋をして、なんとかリリアと向き合う。

するとリリアはまた顔を赤くして、「き、綺麗…」と呟いた。


「?…薔薇の事ですか?確かに綺麗ですね、手入れをしている人は凄腕なのかしら」

「あ、ち、違います!アステア様が綺麗で…その…」

「えっ、私ですか?」


アステアはどっちかというと可愛い感じだと思うんだけど…。

まぁ良いか、褒めてくれている事に変わりはないし。


「ありがとうございます。でも、私の姉の方がもっと美しいですよ」

「お姉さんですか?」

「はい。美しい人と言えば私の中で姉以外はあり得ません。可愛らしい性格をしていますが、優しく儚い雰囲気を持っていて、見惚れてしまうくらいの美人です」

「大好きなんですね…」


リリアの言葉に「もちろん」と答えれば、何故か笑われた。

………リリアは思っていたより表情豊かな人らしい。


中途半端なところで終わってすみません!

お読みくださりありがとうございました。

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