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第八十一話 受けて立とうじゃないか

リディア夫人と話をしてから三日ほど経った時。


「クリフィード第二王子殿下からです」


届いたのは一通の手紙で、その内容は簡単に言えば「兄上と母上の全面戦争勃発!!」だった。


………少し放っておいた間に何があったよ…。


───










「たったの三日放置しただけで何がどう転んだら全面戦争になるわけ?」


つめた〜い視線を突き刺すように向けてやれば、私の足元で正座をしているクリフィードが申し訳なさそうに視線を彷徨わせる。


「不可抗力というか…」

「は?」

「お、俺だってこんな事になるとは!!だって兄上と話してる時に母上が入ってきて、あーなるとは思わないだろ!!」

「だからその「あーなる」の部分を説明しろって言ってんの!!」


呼び出しておいて説明を一向に始める気配のないクリフィードの耳を思いっきり抓る。すると涙目で「痛いぃ」と嘆くクリフィード……性格変わりすぎじゃないか?初対面の時の俺様寄りのツンデレはどこいったのよ、一応あんたヤンデレ属性も持ってんでしょうが。

なんて、私の心の声が聞こえるはずもなく、クリフィードは瞳に涙を溜めながら、やっと話し始めた。

曰く、ブラッドフォードといつものようにくだらない、ようは兄弟間で行われるような普通の会話をしていたらしい。そんな二人に声をかけたのは、二人の母親である王妃様。王妃様はなぜか二人を見比べて、こう言い放ったそうだ。


──貴方達、カリアーナちゃんを取り合っているのに随分仲が良さそうね──


その一言でクリフィードは宇宙を見た猫のような表情を浮かべ、ブラッドフォードは表情ごと固まった。

………王妃様って実は天然なのか?それかわざとかき回しているとか…どっちにしろ、ちょっと考えられない発言である。

先に正気に戻ったのはクリフィードの方で、どうにか「好意すら持っていない!」と弁解すれば、クエスチョンマークを浮かべた王妃様は「じゃぁ誰が好きなの?」と平気な顔で聞いてきたそうだ。

そこで、ん?と首を傾げる私を見て、私が何を予感したのか察したのだろう。クリフィードの頭が一段階下がった。


「や、でも言い出したのはお前だし、俺だけが悪いわけじゃ…」

「……あんたまさか…」


私が唖然と言葉を溢せば、クリフィードはコクンと頷いた。


「信じられない!言い出したのは私かもしれないけど!それは姉様と第一王子にだけわかるようにする予定だったでしょ!?そもそも二人に接点ができた今!言う必要なんてないじゃん!!」

「仕方ないだろ!?俺が第一皇女を好きだって勘違いされてる方が問題だろうが!!兄上と母上の誤解をできる限り薄くするにはそれしかなかったんだよ!!」


それでもあり得ない!!とばかりに目を見開けば、流石に罪悪感が募ってきたのかクリフィードの言葉の語尾が多少小さくなった。


「わ、悪かったと思ってる…俺だってお前とそんな風に思われるの嫌だし…」


女嫌いだからこそ、嫌いな人間とそういう風に思われる事が精神的に苦痛だと理解しているのだろう。私の場合、クリフィードをそこまで嫌っているわけではないが、未婚の、しかも滅多に社交界に出ない第二皇女のそういう話とあっては、色々と目立ってしまう。

加えてそれが多様な人間が行き交う国の王妃に知られたとなれば、広まるのは時間の問題だ。私は頭を抱えながら、それでも話はまだ終わっていないと顔を上げる。

すると目が合ったクリフィードは、重い口をまた開いた。


「…母上が言った言葉が問題だったんだ。俺の発言を聞いた後、母上が言ったのは、そんな事許さない、だったんだよ」

「………は?」


いや、いやいや、常識がないと言っても限度があるだろぉ…。

まぁ?貴族の世界では政略結婚も多いし、親が決める事の方が多い。けれど、ブラッドフォードもいるわけだし、それはあまりにも直球すぎるんじゃないか…?


「それで俺が、その、お前にそういう感情を向けているって知った兄上が母上に「それはあまりにも理不尽だ」って反論したんだよ。そしたら母上も怒りだして…」

「わかった、もーわかった。今はどんなん状態?」

「父上が少し気づき始めたから二人とも大人しくなってるな…けど、いつ爆発するかは…」


一つ問題を解決したと思ったらこれだ。私は顔を俯かせ、湧き出てくる思考に思いを馳せる。

クロスのストーリーが始まってからなぜか働き詰めのような気がするんだけど気のせい?いや、気のせいじゃない。


「は、はは…もうあったまキタ…リディア夫人が可愛く思えてきたよ」


そんなに私を働かせたいなら受けて立とうじゃないか。今までオブラートに包んできてやったお返しがこれなら、もう遠慮する必要はない。

他国の王太子問題?他国の貴族?他国の騎士団長?国同士の亀裂ぅ?はっ!知った事か!!


「クリフィード、これでも私って軍事力最大である帝国の姫なんだよ」

「は?そんなの知ってるけど…」

「しかもフィニーティスは父様の友人が王様の友好国」

「お、おい…?」


俯いてた顔をあげ、ニッコリと笑ってやればクリフィードの顔があからさまに青くなった。


「少しくらい無礼な事したって、平気だよね!」


私って、面倒な事が大っ嫌いなんです。

お読みくださりありがとうございました。

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