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第六十話 真逆の雰囲気ね

前話に続きカリアーナ視点です。

リディア邸に着いて、レイラを馬車から降ろす。終始オロオロとしていたレイラだけれど、屋敷の前まで来てしまえばもう逃げ場はないと諦めたらしく、素直にリディア邸の門を叩いた。


「夕方になったら迎えに来るわね」

「え!?行っちゃうんですか!?」


見捨てないで!と言うような目で見てくるけれど、リアンさんとお話するくらいなら大丈夫でしょう?だって、お友達なんだものね。


「夕方には戻ってくるから」


少し意地悪く微笑めば、私が揶揄った時と同じ顔をするレイラに笑ってしまう。いつもは凛々しい女性騎士だけれど、今は迷える子犬みたいね。

どうにか私を引き止めようとするレイラを置いて馬車の中に戻れば、馬車には当然私一人。少し寂しくもあるけれど、レイラには幸せになってもらいたいもの。我慢しなくちゃ。それに、私はアステアの恋を見守りたいのだし。


けれど、世の中思い通りには行かないみたい。


御者に声をかけて馬車を発進させようとすれば、御者は申し訳なさそうに、「す、すみません!」と声を上げた。


「どうかしたの?」

「車輪が歪んでしまったみたいで上手く進みそうにないんです。少しお時間いただければ新しい物と交換いたしますので!!」


皇族を乗せる馬車であってはならない事。

それは、事故はもちろん、皇族の時間を奪う事だ。移動手段である馬車が逆に移動を遅らせてどうするんだ、という話である。

フィニーティス側が用意した馬車なので、もし私が一言でも怒ればフィニーティスの顔に泥を塗ったという事で、この怯える御者は罰せられてしまうだろう。……こういう時、本当にアステアの言葉に頷きそうになってしまうのだ。


──背負えないんだ、私には──


皇族として生まれたのにも関わらずそういう事を平気で言ってしまうあの子は、ある意味凄い。そんな事、きっと私やお兄様は絶対に言えないから。


「わかったわ。リディア家にご挨拶するのも良いと思っていたの」


できるだけ優しい声色で告げれば、御者が「本当ですか!?」と聞いてくる。その声がいくらか希望を抱いているようで、とりあえず一安心だ。


───









馬車の車輪を交換するなんてすぐだと思ったけれど、どうやら馬車に積まれていた予備の車輪までもが壊れていたらしく、御者が顔を青くしてホテルまで走ったのがついさっき。リディア伯爵に言えばすぐに直せるのだろうけれど、それだと御者の失態がバレてしまうから、できるだけ穏便に済ませるためにリディア家を見て回る事にした。


「応接間でお待ちいただく事も可能ですが…」


執事長であるらしい男性が言ってきたけれど、なんだかもったいないような気がしてレイラと一緒にリアンさんを探す事にする。レイラは屋敷に入った瞬間から心臓が飛び出そうな顔をして、緊張しているのがすぐにわかった。


「友達なんでしょう?なんでそんなに緊張してるのよ」

「確かに友人ですが、別にそれ以上というわけではないですし、迷惑かもしれないし…」


雰囲気を見て感じただけだけれど、そんな事を考えそうな人じゃないと思うのだけどねぇ。レイラしか知らないリアンさんの一面があるのかしら。それならそれで、気を許されている気もするわ。


「とりあえずリアンさんがいそうなところに行きましょう。執事長には内緒にしてもらっているから、この際驚かせましょうね」

「えぇ!?」


初心な反応で可愛らしい。騎士としてもちろん素晴らしいレイラだけれど、こうして見ると普通の女の子なのよね。あ、これがアステアの言う萌えというものなのかしら、それとも尊死?……あの子が言ってる事って時々わからないわよね。


───









まず最初に向かったのはリディア家の稽古場。騎士だというなら稽古をしていてもおかしくはない。


「いない、ですね…」

「いないわね」


ガッカリしたのか安心したのかわからない反応のレイラを見て、私も肩を落とす。せっかくだからレイラの恋の応援だけでもできればと思ったけれど…役に立てそうもないわ。私もブラッドフォード第一王子と会えていないし……もしかして、私のせいで会えていないのかしら…?


「ごめんなさいね…」

「え!?なんで謝るんですか!?」


私の発言で慌て始めてしまったレイラを軽く宥める。こういう素直なところを異性に見せていけば、すぐに結婚できると思うのだけど…。素直なレイラは可愛いのに、と慌てるレイラを見て思っていれば、どこからかノック音が聞こえてきた。


「よろしいですか?カリアーナ第一皇女殿下」


稽古場の入り口に立ってドアを叩いていたのはリディア小伯爵で、どうやら私へ挨拶に来たようだった。


「父が不在でして、ご挨拶が遅れてしまい申し訳ありません」

「いいえ、私の方こそごめんなさいね。不躾に歩き回ってしまって」


そこまで申し訳ないとは思っていないけど、形式上の謝りを入れれば、リディア小伯爵は顔色一つ変えずに「ご自由にしてくださって構いませんので」と言い放つ。


……なんだか、リアンさんとは真逆の雰囲気ね。

お読みくださりありがとうございました。

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