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第六話 私の使用人が普通じゃない!!

アルバに着くとまず最初に向かったのは服屋だった。


「……なぜ」

「なぜも何も、お前とカリアーナ、あと皇后陛下に贈るドレスを選ばないといけないからだろう」

「姉様と母様は良いですけど、なんで私まで?ドレスなんて有り余ってます」

「そう言うな。他国に来て何も買わないと、その国の商業を蔑ろにしていると取る輩もいるんだよ」


めんどくっさ!!!

裕福な皇族に生まれて姉様の妹に生まれてめちゃくちゃ感謝してるけど、皇族とか王族のこういう面倒な諸々の事は本当に嫌いだ。

それもこれも国の転覆を狙う大臣とか他国の間者とかのせいだよ。

本当、カタルシアほど貧富の差が少ない国なんて滅多にないんだよ?国民の事考えてみ?…なんでも良いからほっといてくれって言うのが本音だ。

大臣とかいなきゃ困るけど、代わりはいるし…。


「あっ…私が育てるのも有りか…?」

「なに変な事言ってるんだ。さっさとお前の決めろ」


頭を軽く小突かれて「いてっ」と声を出せば、「皇女がそんな声を出すな」と言われた。

だったら小突くなって話だ。

いけどクロードは悪戯好きで、麗しい見た目に似合わず好戦的なキャラクター。小突くくらいで済んでるって言うべきか?……いや、妹とはいえ皇女の頭を小突くのはないな、確実にない。

ああそういえば、こんな性格のくせに皇太子として質の良い教育を受けているし、シスコンとまで来ていたから誰だって分かる通り攻略難易度はマックスレベルだったな。

ゲームをプレーしていた時もよく「またクロードの選択肢間違えたぁああ!!」と叫んだものだ。

………別に楽しんでいたわけじゃない。


「アステア?」

「…兄様って本当に顔だけですね」

「いきなりなんだ。普通の兄だったら怒ってるぞ」

「兄様は普通じゃないので」

「わかってるじゃないか。俺はお前とカリアーナの事を愛しているからな。さ、そろそろ本当にドレスを選べ」


なんでそういう事がサラッと言えるのか心底不思議だ。

見てみる?私の腕の鳥肌凄いぞ?


「?…早くこっちに来ないか」


シスコン兄に妹の心情を察する能力はないようだ。


───





結局、服屋では兄の着せ替え人形にさせられた。途中から完全に面白がってたな、兄様め。

普段は私のドレスを選ぶのを楽しんでいるエスターでも顔をやつれさせるほどには疲れた、超疲れた。


「アステア様、明日のパーティーで着るドレスを選んでいただけますか?」


兄と別れ、やっと自由になれると思ったホテルのスイートルーム。

クレイグから告げられた言葉は私を絶望のどん底に突き落とす力を十分に宿していた。


「い……」

「い?」

「いやぁあああああああああああ!!!これ以上ドレス着るのいやぁああああああああああああ!!!」


駄々をこねるのは得意だ!どうだクレイグ!これで降参してくれ!!


「防音なので音漏れの心配はありませんが、もう十四になられるのですから落ち着いてください」


全くの正論デスネ!

ヤバイ、これでも中身は少し早い天寿を全うした大人なのよ?

エスターより随分年上なの、精神年齢が少し体に引っ張られているだけなの。

そんな正論を突き刺さないで。


「アステア様?」

「……わかった…でも着るのはなし。全部サイズぴったりのやつでしょ?」

「もちろんです。エスター、持ってきたクローゼットを出すのを手伝ってください」

「あ、はい!わかりました!」


持ってきたクローゼットって何。

そういえばカタルシアからアルバに来るまでずっと私の荷物を見ていない…。

てっきり他の馬車に積んであるんだと思ってたけど、馬車の台数って四台だったよね?

私と兄様の馬車と、使用人の馬車、護衛の馬車、兄様の荷物類が入っているらしい荷物用の馬車。カタルシアの騎士は優秀だから護衛を最小限に抑えて、この数台で他国へ訪問する事ができるわけだが…。

あれ?私の荷物用の馬車ないな?…って、事はまさか…。


「では、この五着のドレスの中からお選びください」

「…クレイグさんクレイグさん」

「はい?」

「あなた、空間魔術使えたの」

「?…ああ、もしかして言ってませんでしたかねぇ」


言ってないよクレイグさん!!

なんなの!?空間系はめちゃくちゃ高度な魔術式がないと使えないって聞いたことあるんですけど!?


クレイグの手元に渦巻く黒い靄からエスターが慣れた様子で荷物を引き出していく。


「待って、エスターなんで慣れてるの」

「え?だっていつも荷物運びはクレイグさんがしてくれてますし…」

「知らなかったの私だけ!?」

「いえ、皇族の方にも使えるとは報告しておりませんよ。報告義務なんてないですから」

「クレイグは信用ならん!エスター!」

「本当にしてないですよ。大丈夫です!」


オッオウ………それでもショックだよ。

だって自分で選んだ執事のファンタジー要素見逃してたんだから。

アンデットって部分に意識引っ張られすぎて、空間魔術なんて便利なもの無視してた。

ヤバイ、というか、使用人の力を測り切れないなんて主人失格なのでは…?

いや、でも誰だって秘密にしている事の一つや二つあるし、秘密にする事で私が得られる利益だってあるかもしれない。

クレイグが父様や母様に空間魔術を報告していないのだって、いつかは切り札になるかもしれないし。いやそう考えると荷物用の馬車がない時点で勘付かれてるよな?

……そもそも、クレイグは隠し事が多すぎるんだよ。

エスターは素直だけど時々キレると手がつけられなくなるし、拾った当初は口悪くて教育するの大変だったし。

待って、私の使用人やばくない?結構スペックが高いのは知ってたけど。


…………結論。



「私の使用人が普通じゃない!!」



「もしかしてアステア様は二重人格というやつなのでしょうか。今更すぎる事実もよくお叫びになられますし」

「ただ表と裏の顔が激しいだけですよ。第一皇女殿下や皇太子殿下には絶対にお見せできないお顔ですな」


若干、ほんのちょっと使用人に変人扱いされた今日この頃。


さぁ、いよいよ明日はヒロインと攻略対象が出会う運命の日だ!クレイグの新たな一面に驚かされたけど、頑張りますか!ハハッ!


お読みくださりありがとうございました。

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