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第五十九話 年頃の乙女なのね

カリアーナ視点になります。

まさかあのアステアが恋をするなんて思ってもいなかった。異性に興味がなさそうだったのに、子供だと思って油断してたわ。あの子もちゃんと年頃の乙女なのね。


「カリアーナ様?ニコニコとされてどうしたんですか?」


紅茶を持ってきてくれたレイラに視線を移して、嬉しすぎてまたニッコリ笑う。


「アステアが恋をしたのよ!」


「………はい?」


レイラは間の抜けた顔も可愛らしいけど、私の妹に対してそれはないんじゃないかしら。あの子だって恋愛くらいするわよ、きっと。


「クリフィード第二王子と楽しそうに話しているところを見てね?クリフィード第二王子は女嫌いで有名じゃない。だから、きっと二人は心惹かれあって…!」

「……お二人が会ったのはパーティーの日が初めてなのでは?そんな短時間で恋に発展するとはとても思えませんが」

「一目惚れって言葉があるでしょう。恋に時間は関係ないのよ」


そんな事を言って、恋愛なんてした事はないのだけれど。

………そういえば、第一王子はどうしているかしら。パーティーの日も結局会えずに終わってしまったし、王城へ行っても会う事はできなかった。あの時感じた何かの理由を知りたいのに、会えないんじゃどうしようもないわ。


「ダメね、今は妹の応援が最優先だもの」


あの子だって恋愛はした事がないのだろうし、ここは姉として背中を押すくらいしてあげた方が良い…のかしら。あの子の場合、一人で素早く決めてしまえそうな気もするけれど、それでも姉として何か協力したい気もするし…。


「…レイラ、今日のアステアは何をしているのかしら」

「今日も王城へ行かれるとメイドの者が言っていました。おそらく誰かに会いに行くのではないかと」

「!!」


そんなの!相手はクリフィード第二王子に決まってるわよね!!あの子ったら意外と積極的だわ!!

妹の恋愛でこんなに胸が高鳴るなんて少し申し訳ないけれど、十六年の人生で一度も恋に触れた事がないから楽しくて仕方ないわ。お母様のお話を聞くのにも限界があるし、恋愛小説を見ても、美化されたものしか読ませてもらえない。


「そういえば、王妃様にお茶に誘われていたわよね…」


こんな機会、滅多にない。

私の言葉を聞いて、まだ熱い紅茶をテーブルに置いたレイラが何を察したのか、「馬車の準備はアステア様の前後、どちらになさいますか?」と聞いてきてくれた。アステアには本当に申し訳ないけれど、姉として、一人の女性として、アステアの恋愛には興味がある。もちろん応援が第一だから邪魔なんてしないけれど、一瞬、覗くくらいだったら許してくれるわよね…?


───








アステアが馬車に乗って行ったのを確認して、私も馬車に乗り込む。王城に入る理由はいくらでもあるから、バレずに着いていけば平気よね。


「緊張するわ…」


胸の前で手を握りして呟けば、目の前のレイラにクスクスと笑われる。


「カリアーナ様、もしかして相当緊張されているんですか?」

「当然じゃない。あの子の初恋よ?応援したいけど、邪魔もできないし…」

「第二皇女様は助けなどいらない気もしますね」


うぅ…確かにそうなのだけれど…。


「こんなに緊張するのは、初めての舞踏会以来だわ」

「そんなにですか!?王族同士の恋愛ですから心配するのはわかりますが、そんなに手に汗握らなくても…」

「王族同士とかじゃなく、あの子に恋愛ができるかが心配で…私だって恋愛というものをした事がないのだから、あの子はもっとわからないはずだもの」

「そうですかねぇ…」


なぜか首を傾げるレイラを見て、ふと思い出す。そういえば、レイラもリアンという青年の事を話す時、小説に出てくる可愛らしいヒロインのような表情をしていたような気がするわ…。


「レイラ、リアンさんとはその後どうなの?」

「へ…?…え!?」


ポカンと口を開けた後に、猫が驚いて飛び跳ねた後に固まる時のような顔をして声を上げる。これはもしかして、図星、というやつなのかしら。


「あ、え、あー、リアン、とは、連絡はとっていません。リアンも家の事で忙しいでしょうし、私もカリアーナ様の護衛がありますし」


私を理由のように言われても、ちゃんと出掛ける時間はあげているのに。


「会いには行かないの?」

「うっ…まぁ、行くに行けないというか、別に良いかなというか」


そういう言葉を聞くとなんだか微妙な関係のようにも感じられるけれど、数年も一緒にいればなんとなくわかってしまう。


「レイラ、今無理してるでしょう」

「えっ」


若くして騎士団長になる実力を持っているというのに自信はないし、堅物だし、女性らしい一面を異性に見せようともしない。けれど、とても可愛い子だという事は確かだ。そんな子が女の子らしい感情を持ったのに、応援しない手なんてないじゃない。


「…行き先、変えましょうか」


そう言った私を見て、レイラは目を見開くと同時に、何を言っても聞きそうにないと悟ったのか、下を向いてしまったのだった。

お読みくださりありがとうございました。

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