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第五十七話 タイミングって大事だよね…

最近わかった事、姉様が物凄くわかりやすくて可愛い人だった。

王妃様のはからいでフィニーティスに留まる事になり、国王陛下に王城へ呼ばれ、会食をした時の反応なんてすごく可愛かった。軽く頬を赤らめて、いつもより少し幼気に見える化粧と、できるだけ可愛らしくした髪型と服装。気合が入っているのが見た目だけでバリバリ伝わってきた。

…まぁ、ブラッドフォードは姿を現さなかったわけだけど。


「どういう事か今すぐ説明しろ」

「く、くびっ、くるし…」


二度目の対面にしてお約束となったシバき。クリフィードは、一応最低限の教育はされているのか女である私に手をあげる事はしないが、物凄い力を込めて私の腕から逃れた。クリフィードの胸倉を掴んでいた私の手は行き場をなくしてしまって、即座に私の腰へ置かれる。


「せ、説明も何も、今日は気分じゃないってだけの話で…」

「だけ?それだけで姉様を悲しませたの?あんなに「惚れました」って顔してたくせに?何様!?」

「次期王太子だよ!」


だからなんじゃない!姉様を悲しませるボケは家畜以下じゃ!!


「って、あん?王太子になんの?」

「お前仮にも姫なら言葉遣い気を付けろよ…」

「いつもは気をつけてますよ。で?」

「……父上がそろそろ退位を考えてるみたいな噂があるからな」


噂かよ。ま、王太子になる事自体は嘘じゃないんだろうけど。

しかもクリフィードには王太子になる意思はない。元々兄を尊敬している事もあって、臣下がブラッドフォードに毒を被らせた事を知った時は激怒していたはずだ。兄を尊敬していて、王位に興味がない。王弟としてすごく出来た人物だが、周りは簡単に納得してはくれないだろう。特に第二王子派の連中は。


「あんた、自分の派閥の人間相手に愛想とか振りまいてる?」

「はぁ?いきなりなんだよ!そもそも普通聞くか!?そんな事!」

「口答えしないでさっさと吐け!」


その髪全部むしるぞ?と冗談交じりで言ってやれば、クリフィードの顔が一気に青くなる。いや、冗談だからな?流石にそこまではしないよ、私だって。


「…別に、仲良くしようとはしてない」


ボソリと呟かれた言葉に、まぁそうだろうな、と頷く。兄を尊敬している弟が、わざわざ兄への敵対行動なんてするはずがない。そこは同じ弟妹の立ち位置にいる身として理解できる。


「じゃぁ、第一王子は王太子になるわけね?だったら姉様との縁を断る理由なんてもっとないと思うんだけど」

「兄上は女相手に免疫ないからな。どう対応して良いかわからないんじゃないか?」

「女嫌いがどの口で…」


でも、クリフィードの意見も一理ある。サーレと結婚してからも、必要最低限の接触はせずに、結局は心のない夫婦として終わっていたはずだ。

いつも戦場にいる男に魅力を感じる女は多いのかもしれないが、滅多に会えないのではどうしようもない。おそらくブラッドフォードは女性関係以前に、恋心すらまともにわからないのではないだろうか。


「そう考えると面倒だな。姉様がやる気になってても相手が鈍感じゃ無理なんじゃ…」


そもそも、姉様がいくら綺麗で可愛くて完璧でも、会わせない事にはどうにもならない。


「クリフィード、やるよ」


私がそう言えば、クリフィードは最悪だと書いてある顔で「やりたくない…」と吹けば飛ぶような小さな声で呟いていた。


───






クリフィードと協力して姉様とブラッドフォードをなんとか会わせようと努力してみた。

幸いブラッドフォードの予定は剣の稽古で埋まっていたため、クリフィードが上手く誘導して外へ連れ出すのは簡単だった。問題は姉様と会わせるタイミングだ。

ある時はブラッドフォードの部下が「稽古をつけてください!」とどこからともなく申し出てきて、ある時は姉様のドレスに王城のメイドが持っていた飲み物が溢れる。とりあえずドレスの染みは取れたが、その姿を見せるわけにもいかず、会わせ損なってしまった。他にも、国王陛下の話に捕まったり、姉様の美しさに見惚れた馬鹿貴族どものおべっかに付き合わされたり、軍事を取り仕切る軍人と話し込んでしまったり。ブラッドフォードと姉様、それぞれが何故か足止めを喰らってしまい、目を合わせる事すら未だ出来ていないのが現状だ。


「恋に試練は付き物なんでしょうかね…」

「知らん。もう俺は疲れた…」


毎回ブラッドフォードを誘導するために頭を使っているだけあって、クリフィードの疲れは溜まっているはずだ。私だって姉様を王城に連れてくるのに凄く頭を使っている。


「そろそろ理由も尽きてきたよね。どうしよ…」

「なぁ、もう良くないか?諦めたって」

「はぁ?諦めたらそこで試合終了ですけど?姉様の未来がぱったんこですけど?」

「頼むからちゃんと人間の言葉で話してくれ」


理解できないのを私のせいにすんな!


「アステア…?」

「えっ」


クリフィードの態度に若干苛つきながら、椅子に座り直した瞬間、聞こえてきた声に目を見開く。いや、あー、そうですか。このタイミングで来ちゃいますか…。


「姉様、なんでそこに…」


ホント、タイミングって大事だよね…。

お読みくださりありがとうございました。

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