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第五十話 全速力で向かわなきゃ

状況を整理すると、サーレはリンクが好きで、姉様はブラッドフォードが好き。


「第一王子殿下も姉様の事好きなんだよね…」

「嘘つく時の癖直ってなかったからな。ていうか、なんで俺はお前なんかと話してんだよ。帰る」

「帰らすかボケ。話聞いてけ」


グイッと髪の毛を引っ張ってやれば、数本毛が抜けたあたりでクリフィードが抵抗をやめる。大人しく隣に座ったのを確認し、私はまた話に戻った。


結果。


「………クレイグに聞こう」


やっぱり年長者の意見が一番だと思う。


───






「だからなんで俺はここにいるんだ」

「記憶喪失ですか?あ、アホでしたね」

「殺すぞクソ女」


なんだかクリフィードの口調が段々と荒くなってきたのが気になるところだが、まぁ問題はない。私は目の前で多少驚いているらしいクレイグを見る。


「アステア様は何度私を驚かせれば気が済むのでしょうなぁ…」


驚かせているつもりはないんだけど、今回に限っては同意しちゃいますね。だって、女嫌いで有名なクリフィードが隣座ってんだもん。でも、今重要なのはそんな事じゃないのよ。


「とりあえず姉様と第一王子をくっつける事にしたから意見ちょうだい。あと、サーレ達の事調べて?」

「……カタルシアへ帰る馬車は手配済みなのですが…」

「父様に手紙送るよ。だから大丈夫」


長居するつもりではないけど、結果的に長くフィニーティスに居座ってしまうかもしれない。姉様も引き留めないといけないから、父様からの許可は必須科目だ。


「皇帝陛下がお許しになるとは思えません」

「だったらお母様にお願いする」


お母様はどちらかと言えば放任主義だが、子供からのお願いを断った事は一度もない人だ。それにお母様が言えば父様の言葉なんて、「え?空耳?」と聞きたくなるレベルで小さくなる。それくらい、父様にとってお母様は大きい存在なのだ。

私の口からお母様の名前が出るとは思わなかったのか、クレイグは本当に驚いたような顔をして、「かしこまりました」と頷いて見せた。


「男爵令嬢様と小伯爵様の事についてはただいまエスターが情報収集をしております。明日の朝にはお伝えできるかと」

「エスターが?」

「獣人の五感は優れておりますから。情報収集ならばエスターが適任です」


そう言いながら微笑むクレイグは物凄く性格が悪いと思う。確かにエスターなら正確な情報を持ってこれるかもしれないけど、適任はやはりクレイグだ。クレイグ以上に私の要求に応えられる人なんていないだろうから。


「…まぁいいや。姉様と第一王子くっつける良い案ない?」

「気の向くままでよろしいのでは?若さや時間が解決してくれますとも」


それじゃ遅い。もしリリアが兄様かクリフィードを選んでいたら、多少の誤差はあっても姉様かサーレが死ぬ未来が待っている。二人を救える未来が見えてきたんだから、全速力で向かわなきゃ。


「案はないわけね、了解。じゃぁ、情報収集だけよろしく」


少し苛ついた様子で私が言えば、クレイグは珍しいとばかりに目を見開いた。

…さっきから驚きすぎじゃないかな?


「かしこまりました。…くれぐれもご無理はなさらないように」


私の機嫌を窺うように頭を下げたクレイグに手を振れば、視線の端で自分の頭を押さえているクリフィードの姿が見えた。


「…なにやってんの…?」

「いや、お前女のくせに力強いし、何より頭引っ張るし…」

「私が暴力的みたいに言わないでくれる!?」


そう言ってクリフィードの耳を掴む。


「〜っ!!暴力的じゃねぇか!!これだから女は嫌いなんだよ!!」

「これだからの意味がわかりませんぅ!女嫌いも程々にしとけ将来ヤンデレ男が!!」


クリフィードの耳を突き飛ばすように離せば、相当痛かったのは耳が真っ赤になっていた。クレイグは氷でも持ってくるかとクリフィードに聞いたけど、クリフィードは私を睨みつけるだけで終えた。


「じゃ、クリフィード第二王子殿下には王妃様の後押しをしてもらいましょうか」

「はぁ!?」


私が睨みつけて怯える女に見えたのかね。さっさと仕事してもらいますよ。


「王妃様に囁くだけで良いの。「カタルシアの姫を滞在させるのも良いかもしれませんね」って」

「……なんの意味があんだよ」


地面にしりもちをついた状態で聞いてくる姿は物凄く間抜けだ。

しかも質問も間抜け。


「女嫌いのアンタが他国の姫の話をするんだから、しかも気に入っている姫の話を。姉様の名前を出さなくても想像膨らませて「あの子はカタルシアの姫君に興味があるんだわ!」ってなるよ」

「なっ!?それじゃぁ俺が気になってるみたいだろ!!」

「口に出すだけで良い楽な仕事だよ〜?棒読みでもたぶんイケる」


クリフィードの顔には、あり得ない!と書いてあるが、これを言ってもらわないと私と姉様の滞在理由がなくなってしまう。友好国の王妃が望めば、父様も渋々聞いてくれるだろう。

だが、嫌がるクリフィードを見る限り言ってくれそうにない。


………これは、最終手段を使うしかないか。

お読みくださりありがとうございました。

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