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第四十八話 死ぬくらいなら全然マシだ

──ブラッドフォード・フィニーティス・フェルン──


今は第一王子だが、国に帰還した丁度今の時期に王太子となる男だ。ゲームではあまり語られる事がなかったので、私は転生してからブラッドフォードの名を聞くようになった。噂は滝の如く民衆の間を流れているが、実際に声を聞いた者や、姿を見た者は滅多にいない。いるとすれば、戦場で共に戦った者か敵くらいだろう。

だがまぁ、第一王子なのだから肖像画くらいはあるもので。

フィニーティスの王城には王族家の絵画が飾られており、一応は見た事がある。まだブラッドフォードが幼い頃に描かれたという絵は、王妃様の祖母から受け継いだらしい黒髪が印象的で、おそらくはレイラのように緑などの他の色が混ざっていない、純粋な黒。

その絵画も私が本当に幼い頃に見ただけ。その当時は前世の記憶も曖昧だったから、全くと言って良いほど覚えていない……はず、だったんだけど。


「アレは…どう見てもそうだよね…」


特徴的な黒髪は緩いオールバックで、幼少期の幼さはなくなっていた。イケメンというよりは男前という言葉が似合う。顔立ちは王妃様似なのか…。って、まじまじ見ている場合じゃない!!


「クリフィード!これどういう状況!?」

「俺に聞かれても…おい、お前今呼び捨てにしただろ」

「るっさいアホ!さっさと説明しろ!!」


姉様とブラッドフォードにバレない程度の小声でクリフィードの首を締める。

え?国の関係悪化?姉様関連でそんな些細な事を気にしてられるか!


「く、くるしっ……あ、兄上は、パーティーが苦手、なんだ…よッ!」

「じゃぁ、サボりに来たって事!?それで姉様と遭遇できるってどんな奇跡!?」


羨ましい!と叫びたい気持ちを抑えて、クリフィードの首から手を離す。ゲホゲホと咳き込むクリフィードには悪いが、少し静かにしてくれ。姉様達の会話が聞き取れないから。


「少しお話いたしませんか?」

「……いえ、私はこれで失礼しますので」


何姉様の申し出を断ってんだあの男は!何様じゃ!!

ブラッドフォードがすぐに立ち去ろうとするのを、姉様が「待ってください!」と止める。え、なんか姉様必死じゃないですか…?


「第一王子殿下、あとで改めてご挨拶させていただきたいのですが、よろしいでしょうか…」


緊張しているのか姉様の手は微かに震えていて、いつもとあからさまに様子が違っていた。……いや…いやいや、ちょっと待ってくださいよ…。あり得ないって、そんなまさか。


振り向いたブラッドフォードは、少しだけ微笑んでいて。


「また、お会いできましたら、その時は」


そう言うと、小さく頭を下げて次こそは会場の方へ消えてしまったブラッドフォードの背中を見つめ、姉様は一つ息を吐いた。どこか熱の籠もったその息は、遠目でもわかるくらい、姉様を可愛くさせていて、私の息が止まる。


「こんな事って、ありですか…」


思わず溢れた言葉を頭の中で反復して、それで、なんとなく、「なしではないのかもしれない」と、思った。


───









「ヤベェ、兄上が女に惚れた…」

「姉様が誰かのものになっちゃうぅうううう!!」


意気投合してるように見える?そうなら眼科に行ってください。絶賛私は目の前のクリフィードと向かい合って、姉様が誰かに取られてしまうと落ち込み中だ。

クリフィードも、まさかブラッドフォードが姉様に惚れるとは思っておらず、ショックを受けている様子である。


「まじでないだろ、女に惚れるとか。兄上は違うと思ってたのに…」


目の前でブツブツと言っているアホはとりあえず放っておいて、これからの事を決めよう。リディア伯爵の事はシメたいけれど、優先順位が変わってしまった。

姉様が一位なのは当然なのだから、まずは姉様の気持ち確認。次にブラッドフォードの身辺調査&姉様をどう思っているのか確認。サーレとリンクの事ももちろん確認だ。……こう考えると、結構リディア伯爵の優先順位が低いな。まぁ、おっさんより若者の恋と才能の方が大事だものね。


「クリフィード、アンタこれから予定ある?」

「はぁ?なんで俺が女に予定教えなきゃいけないんだよ」

「アホか。今の状況考えなさいよ。姉様とブラッドフォードがくっついたら…」


………ん?ちょっと待てよ?

ブラッドフォードはフィニーティスの第一王子だ。それで、姉様はカタルシアの第一皇女。身分的には申し分ないどころか、物凄く良い相手。しかも、姉様がフィニーティスに嫁げば、自然と姉様がリリアの身代わりとして子供を産む未来は消えるし、サーレも同様だ。結婚相手のブラッドフォードが他国の姫とくっつけば、サーレが利用される事はない。

………良い事づくめな気がしてきたんだけども。


「予定変更だわ。クリフィード、協力して」


姉様を取られるのは心底嫌だし阻止したいけど、死ぬくらいなら全然マシだ。


お読みくださりありがとうございました。

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