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第四十六話 ヨルよ、すまん

レイラと一緒に会場外の中庭の方へ足を向けた姉様を見送って、会場の中で待っていたヨルを呼ぶ。会場の中にいても良いのだが、私に話しかけてくる連中は姉様目当てか、カタルシアの軍事力目当ての奴ばかりなので相手をしても無駄なのだ。


「リディア伯爵を見て率直な意見をどうぞ」

「普通」


私の後ろについていたヨルの返答を聞いて、私はガックリと肩を落とす。

確かに国王陛下の玉座近くで大人しくしてたけども。


「…どうしようかいまいち思い浮かんでないんですよ、実は」

「姫さんは考えてるようで何も考えてねぇからなぁ」


うっ…気に入らないってだけで他国の伯爵兼騎士団長をシメようとしてるので、反論ができない…。


「本人がって言うよりは周りの人間がしっかりしてるタイプだな、ありゃ。面識ある奴から落としてくのが一番だと思うぜ?」

「そう思います?……だったら小伯爵を攻めてみるのも良いかもですよね」


泣いていたサーレとどうなったかも気になるし、話して探りを入れるのが今一番良い手なのかもしれない。

どうしようかと悩む私を見て、ヨルは意味深に笑って見せると「姫さんなら伯爵家潰しても大丈夫そうだけどな」と言い放った。


「それどう言う意味ですか」

「そのまま。なんだかんだ守られるか、のらりくらり避けるか、文句言ってきた奴ら全員にガン飛ばすかしそうじゃねぇか」


なんだその三択は。私の事なんだと思ってんのヨルさん。


「否定はしませんけど、一応カタルシアの事も考えてるんです。……って、あ」

「?」


カタルシアや姉様に迷惑をかけず、尚且つ私が得して伯爵が嫌がる方法、あるにはあるかも。いや、でも、できるか確証はないし、これはリンクの気持ち次第なところもあるよな…。


「……何悩んでんのか知らねぇが、姫さんのやりたいようにやれば良いだろ」


ヨルが呆れたように言うが、私の考えてる事はそう簡単じゃない。だって、おそらくリディア伯爵が一番嫌がるのは、リアンがリディア家の当主になる事だ。何を思っているのか知らないが、伯爵は跡継ぎをリンクにし、リアンを騎士にしたいらしい。リンクの才能に見向きもしていない。

それならリアンを当主にできれば伯爵の面白い顔が見れるだろう。あわよくば跡継ぎでなくなったリンクを引き抜けるかもしれない。けど、それをしてしまうと、他国の伯爵家に大きく干渉した事になって、国王陛下は良いとしても王妃様が黙っていないかもしれないのだ。

父様が仲の良い国王陛下に許してもらうために姉様を差し出しでもすれば、本末転倒と言うか、父様と戦争でもしてしまう、これは確信だ。


「…リディア小伯爵の意思を聞いて決める事にします」


やっぱりそこに落ち着いてしまう。サーレとの事も聞けたら聞きたいし、鍵を握るのはやはりリンクだ。計画性皆無だとクレイグに何を言われるかわかったものではないので、さっさと方向性だけでも決めておかなければいけないな。


「ヨル、リディア小伯爵を探してきてくれませんか?」

「あぁ?…護衛は」

「こんなところで襲われたりなんてしませんよ。私はここを動きませんから」

「…それ、動く奴が言う事だぞ」


ジト目で見てくるヨルに、私は微笑んでやる。


「はい。動くので早く帰ってきてくださいね」


じっとしている気だけど、これでヨルが早く帰ってくるならそれに越した事はない。私の言葉を冗談と取ったのか、本気と取ったのか、ヨルは呆れたように「わかったよ」と返事をした。


───






パーティーは夜に行われる事が多い。ダンスを踊る系は特にだ。まぁ、今回も例に漏れず夜に行われていて、外は真っ暗。テラスは会場からの光で照らされているとは言え、やはりどこか寂しげな雰囲気がある。

ヨルが会場に戻って、正真正銘ここには私一人きり。会場内から聞こえてくる話し声や笑い声、大層な音楽のせいで寂しさは倍増だ。だから、ちょびっとだけ、人が来ないかなぁと思ってしまった。

思ってしまったのが悪かったのかもしれない。


「こんなところで何してんだ」


声をかけてきたのは、まさかの人物だった。


「第二王子殿下!?」


──クリフィード・フィニーティス・フェルン──


女嫌いなクリフィードが私に声をかけるなんてあり得ないはずなのに、なぜぶっきらぼうにも声かけてきたんだコイツ。


「もう一度聞く、何してんだ」

「え…?いえ、ただここにいただけですが…」


ギロっと睨みつけてくる目は、私を確かに蔑んでいる。というか、警戒してる…?


「あの…」

「うるさい!お前、先生に何かしようってなら容赦しないからな!」


せ、先生…?誰だそれ。こんなに意味不明な奴じゃなかったはずなんだけど…。

とりあえずクリフィードを落ち着かせるために、私が無害だという事を教える。ゆっくりと立ち上がって、私が落ち着いた様子で頭を下げれば、深かった眉間のシワが多少和らいだ。


「……お前、ちょっと来い」


……ヨルよ、すまん。私は動き回るだけじゃなく、厄介ごとに巻き込まれるかもしれない…。

お読みくださりありがとうございました。

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