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第四十四話 可愛過ぎません?え、この人が私の姉?

フィニーティスに来て、やっと四日目だ。

初日は姉様と一緒で嬉しいけど個人的には大嫌いな服屋に行って、二日目はリディア伯爵家に言ってうるさすぎる家族と出会い怒りの助走が始まり、三日目にして怒りが爆発した。色々ありすぎだろ…って、あれ?これ昨日も思った事だっけ…?

………まぁ、今となってはどうでも良い。今この瞬間だけはその怒りを収めよう。え?あんなに怒ってたのになんでって?…そりゃ、目の前に広がる光景を見れば分かりますよ。


「どうかしら」


そう言って優雅にドレスの裾を持ち上げた姉様は、まさに「カタルシアの天使」と言って過言ではないだろう。いや、天使ではなく私の中では女神なんだけども、女神って言うとお母様にベタ惚れの父様と「姉様お母様どっちが女神か問題」で喧嘩になるから言わない。


「こんな綺麗な姉様と一緒にパーティーに出れるなんて嬉しいよ!」


自覚できるほどのニッコニコ笑顔で言えば、姉様は少し目を伏せて恥ずかしそうに「それなら良かったわ」と呟く。………可愛過ぎません?え、この人が私の姉?可愛いにも程があるじゃありませんか。


「カリアーナ様、第二皇女様、そろそろお時間です」


冷静、まさに冷静な口調で言い放ったレイラは、軍服のような格好をしているが、所々女性らしいデザインが光っていて、デザイナーの腕の良さが見え隠れする正装を着ている。毎回同じ格好でパーティーに出席しているのに、見飽きないのが不思議だ。


「レイラも相変わらず綺麗だね。うちはヨル以外はいつもの執事服とメイド服のクレイグとエスターだけだから、ちょっと残念なんだよねぇ」


私が本当にガッカリとした様子で言えば、姉様が私の頭を撫でてくれた。それだけで舞い上がってしまう事は簡単にできるけど、それでもやっぱり残念だ。

だって、あの二人美形なんだよ?

エスターは言わずもがなだけど、クレイグも相当整った顔をしている。私の後ろで控えている時は、年代問わず令嬢方から熱い視線を送られる事なんてザラだし、何よりイケオジですから。オーラが半端ないんですよ。

本当にあの二人を着飾れないのは残念だ。使用人が主人より目立っちゃダメなんて誰が決めたルールなんだかね。


「ありがとうございます、第二皇女様。リアンの事も、お世話になりました」


あっ…と私の動きが止まる。その様子を見て首を傾げたレイラと、咄嗟に目を逸らした。

リアン自体は悪くないと思っているので、騎士にする事はしないが別に懲らしめようとは思っていない。というか、怒ってすらいないのだから当然だ。でも、その親をちょっとシメてやろうと思っている身としては、後ろめたい部分がある。


「……まぁ、リアンの事は悪いようにはしないから。安心してね」

「え?あ、はい。あの、もう解決したのでは…?」

「んー、あはっ。ま、良いじゃん!いこいこ!」


無理矢理姉様とレイラの背中を押して部屋から出る。外で待っていたクレイグとヨルに何を勘づかれたのか呆れた目で見られたが、そんな事を気にしていたらキリがないので気にしちゃいけない。


───







私達が乗る馬車を確認してくれていたエスターからokが出て、さっさと美しく装飾された馬車に乗り込む。

国全体は活気が溢れて最新のものを取り込んでいるイメージだが、王宮や王家は意外と歴史を重んじるタイプのフィニーティスだ。なので、馬車の外装も趣があり、結構私好みで嬉しい。


「アステアと馬車に乗るのは久しぶりね」

「そうだね〜。私はいつでも乗って良いんだけど?」

「ふふっ、そうね」


クスクスと笑う姉様は混沌とした私の精神に舞い降りた天使です。

異論は認めません。

私達の護衛として隣に座っているレイラとヨルを盗み見れば、レイラは慣れた様子で外を眺め、ヨルは男が自分だけだから少し居心地が悪そうだった。


「……姉様、一ついい?」

「うん?何かしら」

「もしかしたら、ちょっと迷惑をかけてしまうかもしれないんだけど、良い?」


申し訳なさそうに、本当に申し訳なさそうに聞いてみれば、やっぱり優しい姉様は「良いわよ?」と不思議そうに答えてくれた。自分達の中だけで収めるつもりではいるが、姉様を巻き込まないと断言はできない。

少し天然気味な姉様相手にこんなわけのわからない言い方はズルイかもしれないけど、ちょっとした保険くらいは持ったって良いはずだ。もし巻き込んでしまったら、妹の可愛さフル稼働で今の言葉を引き合いに出してやろう。

私の意図に気づいたのかどうなのか、私の隣に座るヨルは小さく笑いやがった。なんだ、なんか文句あっか。


「姫さん、姉ちゃん相手には弱いんだな」

「第一皇女って呼ばないと引っ叩きますよ。あと、小声で話すと姉様に変な目で見られるからやめてください」


珍しく私がヨルを睨みつければ、ヨルは「へいへい」と生返事を返す。私は耳打ちしてきたヨルを弱めに小突くと、姉様との楽しい&癒しの会話を思う存分楽しんだのだった。

お読みくださりありがとうございました。

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