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第四十三話 大きな勘違いが一つ混ざってる

えー、ここで説明入れましょ。

「土下座」とは、土の上に直に頭を付け、平伏して礼を行う事ですね、はい。お願いだったり、謝罪だったり、最近では用途が多くなってたりなってなかったりする、全くと言って良いほど見る事のない、言わば「最終奥義」です。

………最終奥義はちょっとふざけました。

まぁ、まとめると、私は目の前の中年男性の考えが全く理解できないという事で。


「いい加減にしてください」


本音中の本音ですよ。本当にいい加減にしてほしい。伯爵家の当主が地面に頭を擦り付けるなんて、歴史ある自分の家を貶しているのと同じですし。そもそもリディア伯爵は騎士だよ?しかも国王陛下の。なのに跪いて頭を下げて、は?意味がわからない。


「あの子の才能を潰したくはないんです!!」


いや、土下座やめろよ。

この世界に土下座っていう概念はないが、それでもこの行為が屈辱的な事に変わりはない。きっとあの子というのはリアンの事で、リアンのためならどんな屈辱的な事にも耐えるという事なんだろう。


………ふざけんな。


「才能ですか」

「はい!リアンには才能があるのです!!あの子は剣技の才能がずば抜けて素晴らしい!!」

「では、なぜアルバで捕まっていたのでしょう」

「それは…あの子は剣技以外が少し劣っておるところがありまして、リンクは全てそつなくこなしますが、リアンはドジを踏む事が日常生活である子です。あの子は騎士以外歩む道がない子なんです!」


この時、私は強く誓った。こんな馬鹿な奴がいる国と個人的に仲良くする事など、意地でもしない、と。


───








結論を言えば、リディア伯爵を部屋から追い出した。できる限り「拒否に近い検討」という形で納めたが、所々怒りが治らなくて殴りそうになったけど、なんとか抑えた私は偉いと思う。

それで、次に私がとった行動といえば、自分の部屋に、クレイグとエスターとヨルの三人を呼ぶ事だった。つまりは私が側に置いている三人だ。


「あの伯爵様マジで弟の事考えてねぇんだな…」


ヨルが心底呆れたように溜息を零せば、エスターも同意せざるを得ないとばかりに頷いて見せた。


「差別という事ではなく、おそらくは無意識なのでしょう。ですが、あれはあまりに親として愚かな行為でした」


クレイグの言葉を聞いて、私は「だよね」と呟く。


「正直物凄く頭にきたよ」


いつもヨルが騎士になってくれて嬉しくて笑っていたから、おそらくヨルの前では初めて怒りを見せたと思う。


「姫さん、聞いて良いか?」


思いの外、私の不機嫌を気にしていないらしいヨルが小さく手をあげる。私が「良いですよ」と答えれば、ヨルはどこか探るような目で私を見た。


「確かに姫さんが怒るだけの条件は揃ってると思うが、それでも俺の予想じゃ、姫さんは事が終わるのを待ってると思ったんだが?」


最もですね。ヨルの意見は素晴らしい、リディア伯爵にヨルの爪の垢を…いや、もったいないから煎じてすらやらん。

だが、ヨルの質問には大きな勘違いが一つ混ざっている。


「事が終わるのを待つ?なんで私が耐えなきゃいけないんですか。そりゃもちろん楽かもしれませんけどね、そこまで自分が大人しい人間だとは思ってないですよ」


そんな出来た人、きっといない。面倒だって言って怒らない人もいるけど、それでも怒る事は必ずある。私の場合はそれが今なだけ。どうしようもなくあの伯爵をどうにかしてやりたいのだ。


「…じゃあ、質問変えるぜ。姫さんが怒ってる理由はなんだ?」


こういう質問はくだらないから嫌いだ。怒ってる理由なんて色々あり過ぎて一つにはまとめられないし、人の怒りなんてその時の気分で荒波レベルに変わるに決まってる。私の場合、姉様と満足いくまでお喋りできていないから、今は荒波以上、津波状態だ。

けど、一つだけ選ぶとしたら、私は間違いなく一番今の感情に似合っている言葉を知っていると思う。


「気に入らないから」


ただ、ただただそれだけ。

弟であるリンクがどんな思いを持っているかなんて知った事ではないし、リアンを思う父親の心情なんて心底どうでも良い。ただ、それに私を利用した事が、家族の事に私を巻き込んだ事が、リディア伯爵の態度が、全てが気に入らない。


「他に理由なんて入りますか?」


私が聞けば、ヨルはわざとらしく口角を上げて、「全く」と答えた。


「やっぱり姫さんはおもしれーな」

「それはどうも」


人の感情なんてその時々で変わるものだ。一貫性がない?そんなの誰にだって言える事で、今私が思っているのは、とにかくあの伯爵が気に入らないって事。

至極真っ当な行動理由でしょ?


「とりあえず、あの馬鹿家族ひっくり返して諸々掃除するから。そのつもりでお願いね」


少しでもリディア伯爵の顔がチラつくと噴火しそうになる怒りを乗せて放った私の言葉を聞いて、三人は笑いながら頷いた。


「「「仰せのままに」」」


どこかの悪役のボスみたいな気分になったのは、内緒だ。

お読みくださりありがとうございました。

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