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第三話 姉様とのお茶

「姉様!ごめんなさい!遅くなった!?」


エスターに見繕ってもらったワンピースを翻し姉様に駆け寄れば、姉様は笑顔で「そんな事ないわよ」と答えてくれた。


「相変わらず元気ね。……元気すぎかしら?」

「元気なのは良い事でしょう」


私がそう答えれば、姉様はクスクスと笑う。

その姿は画面越しに見ていた時とは少し違っていて、本当に幸せそうな笑顔だった。


──カリアーナ・カタルシア・ランドルク──


ヒロインであるリリアと対立し、最後には兄の手によって死を迎えるクロスの敵キャラ。

カタルシアの皇族特有の紫の瞳と、血の濃い者だけが受け継ぐ事ができる白雪のような美しい髪から社交界では「カタルシアの天使」と謳われているほどの美貌の持ち主だ。

いつ見ても見惚れてしまいくらい綺麗…。


「アステア、座って話しましょう。ずっと立っていると疲れてしまうわ」


私が来るまでに用意してくれていたらしいお茶菓子が並ぶガラスのテーブル。

同じようにガラスで作られた椅子に座った姉様は、手招きをしながら私を目の前の椅子に座らせた。


「こうしてアステアとお茶をするのも久しぶりね。お兄様と一緒にパーティーへ行きたいと言ったのだったかしら?」

「えっ、もう姉様の方に情報行ってるの…?」

「ふふっ、私の所にいる侍女達は噂好きだもの。すぐに知ったわよ」


不敵に微笑む姉様も綺麗!

本当に綺麗な姉を持てて前世も今世も幸せだよ。


「そんなに行きたいなら私が連れて行ってあげたのに…本当にお兄様に懐いているのね」


あ、拗ねた。

姉様の拗ね方は少しわかりづらいのだが、コツを掴むとわかりやすかったりする。

社交界によく顔を出す姉様は、きっと「最初は私が一緒にいて教えてあげよう」と思ってくれていたに違いない。

なんて優しい姉なんだ。女神だ。

兄様に懐いていると勘違いされているのは少し嫌だけど。


「ごめんなさい。でも兄様が行くパーティーは同世代の姫君達も来ると聞いたから行ってみたくて。姉様が嫌だったわけじゃないんだよ?」


私がそう言えば「わかってるわよ」と言いながら姉様はどこかホッとしているようだった。

可愛い、天使だ…あとでクレイグに惚気を聞いてもらおう。


「アルバは多くの人が行き来する国だから、きっとパーティーには色んな方達が来るんでしょうね」

「姉様はアルバに行った事ないの?」

「えぇ、残念な事にね。フィニーティスにはよく誘われて行くのだけれど」


そこで私は思わず「あー…」と呆れや同情の混ざった声を出してしまった。

理由?そんなの簡単だ。

フィニーティスは観光地の名所も多くあり、交流のある国なのだが、いかんせん王妃様の圧が強い。

しかも姉様を気に入っているときた。

姉様を気に入る審美眼は称賛に値するが、あわよくば姉様を自国へ嫁がせようとする所がなぁ…。

第一王子のブラッドフォードは戦場へ行っていて社交界が好きな姉様からも話を聞いた事がないし、そもそもの問題として第二王子は攻略対象だ。


──クリフィード・フィニーティス・フェルン──


極度の女嫌いで、気に入らない相手は即座に切り捨てる性格のねじ曲がった奴。

ツンデレとヤンデレの要素を持った弟系で、攻略にちょっと苦戦したキャラクターだった。

そんな戦場から帰ってこない男と、性格がねじ曲がった攻略対象がいる国に姉様を嫁がせるわけにはいかない。姉様の気持ち第一だが、嫌がってるなら全力阻止一択である。


「姉様、私や兄様が帰ってくるまで絶対にフィニーティスには行かないでくださいね」

「え?それは構わないけれど…」


姉様は少し天然な所があるから心配だ。

まあ、一応言った事は守ってくれるので大丈夫だろうけど。


「それにしても、アステアも社交界に出る年齢なのね。ずっと可愛いままかと思っていたらすぐに大きくなっちゃって…」

「なんだかお母様みたいな事言うね」

「そう?思った事を言っているだけよ」

「私は姉様の妹だから可愛く育ったんだよ。世界の真理だね」


そんな冗談を言えば、姉様は穏やかに笑って「そうなの?」と聞いてきた。

私は胸を張って「もちろん!」と答えたのだった。



───────





姉様とのお茶会も一段落して、私は屋敷の廊下で背伸びをする。

外の空気が廻るこの屋敷は気持ちが良いのだ。

この屋敷…というのも、カタルシアの皇族は幼い頃から屋敷を一つ与えられる。

そして基本的には皇城ではなく、その屋敷で暮らすのだ。

ここは姉様に与えられた屋敷で、正式名称は「第二屋敷」というのだが、噂好きな民衆はカタルシアの天使が住む「白使宮」と呼んでいるらしい。

白雪の髪と天使を合わせた名はなかなかに良い名前だと思う。グッジョブ民衆。

久しぶりに姉様とお茶ができた私は、同じように久しぶりに訪れた白使宮を懐かしげに見つめた。


「お久しぶりです、第二皇女様」


そんな時に声をかけてきたのは、随分久しい人だった。


──レイラ・シルフィーノ──


姉様の近衛騎士団の女団長で、カタルシアでは珍しい緑がかった黒髪を持つ人物。

ちなみにお堅くて絶賛結婚相手を募集中。


「どうしたの?レイラ」


私が聞けばレイラはなんだか複雑そうな顔をして、そうしてやっとの思いで言葉を吐き出した。


「ご相談が…あるのです…」

お読みくださりありがとうございました。

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