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第二十九話 イケオジに可愛さは求めてないけど!

なぜかヨルが私を変人認定してしまったが、概ね順調に近衛騎士にする事ができた。近衛騎士になってくれるヨルはもちろんだが、とりあえずリアンもフィニーティスに連れて行かなければいけない。もし上手くいけば即座にお家へ帰してやろう。忠誠心とかいらないよ、私は。


「どうかなさいましたかな?」


疲れを癒してくれるらしい薬草のお茶を飲んでいれば、横からいきなり現れたクレイグに目を見開く。けれど、本当に疲れている事もあって、いつもの様な「いきなり現れないでよ…」という呆れの言葉は出てこなかった。


「…何かあったの?」

「いえ、ただエスターがアステア様がいつもより大人しいと心配していたので」

「暴れ牛とでも思われてんの?いつでも私は大人しいわ!」

「……」


………やめて、生暖かい目で見ないで。常識外の事をしてる自覚はあるからやめて。いっその事呆れた目で見て。


「まぁ、それはついでなのですが」

「スルースキル有難い!!」

「……本題をお話ししても?」

「アッ、ハイ」


これは調べ事の報告をする時の雰囲気だな、と察した私はすぐに黙る。決してクレイグが怖かったわけではない………本当に怖くないですから!


「リディア伯爵家の事についてなのですが、どうやらフィニーティスでも名の知れた名家の様です。主に騎士を輩出し、現在の当主は王宮騎士団の騎士団長を務めています」

「な、名の知れた…私全く知らないんだけど…」

「…アステア様はご興味のある事以外の事には基本無頓着でしょう」


いや、そんな事もない…とも言い切れないけど頑張って意識してますよ?リディア…リディアだよね。よし、覚えた。


「本題へ戻りますが、リディア伯爵家の跡取りは数年前に行方不明になり、現在の跡取りは次男であるリンク・リディアです」


………ん?

リンク・リディア?……リンク…どっかで聞いた気がしなくもない…かも?

私は無意識に首を傾げていた様で、クレイグは「心当たりでもあるのですか?」と聞いてきた。


「……いや、ないと思う。ちょっと名前が気になっただけだから」


私がそう言えば、クレイグはポーカーフェイスで「そうですか」と言葉を返した。

…こういう時、深く追求しないのがクレイグの良い所だ。


「次にヨルさんについてです。……申し訳ない事に何も情報は出て来ませんでした。なので予想という事になりますが、ヨルさんはエルフ以外の誰かに育てられた可能性の方が大きいかと」

「……やっぱり?」

「はい。忌み子を好き好んで育てるエルフはいません。見つかれば即座に仲間の枠から外されるでしょうから。…ヨルさんの様子からしてちゃんと子供として育てられていた事は伺えますが、それ以外はなんとも言えませんね」


クレイグでも調べきれない事はある、わかっていた事だけど滅多にない事なので、思わずと言った風に驚いてしまう。申し訳なさそうに、ほんの少しだけ落ち込んでいるらしいクレイグはなんだか新鮮だ。


「…ま、そこまで急いで調べなきゃいけない事でもないでしょ。それよりリリア王女殿下の件はどうなったの?婚約の話は出てる?」

「………それもまだです。民衆の噂にすらなっていませんから、アステア様が予想されている通りなら厳重な箝口令が敷かれているのかと」


蔑ろにされている姫の婚約の話に箝口令?………変な話だな。クロスだと、追い出すのがそんなに嬉しいのかって聞きたくなるくらい、リリアの父であるアーロンが言いふらしてたのに。アルベルトルートだとそこまで言いふらしはしないが、民衆達の間で「姫が皇太子の妾になる」と噂になるはずだ。

………もしかして、何か思い違いでもしてるのか?私は。


「………婚約の話じゃなく、リリアの行動に方向転換してみて。些細な事でも良いから定期的に報告ね」


何か思い違いがあればすぐに直さないと。

そのせいで兄様とリリアがくっついちゃったら、姉様の破滅コース一直線だからね。リリアが子供を産める体になるか、リリアが誰か、できれば攻略対象以外と結婚するまでは絶対に警戒を緩めちゃダメだ。

幸いな事に私にはクレイグがいるし、ヨルも戦力として考えて申し分無し。エスターも、もしもの時は私を全力でサポートしてくれるだろう。


「ホント、恵まれてんなぁ…」


小さな声で呟かれた言葉に、クレイグは気づいている。けれど何も言わずに微笑むと、「お早めにおやすみになってください」と言って、私からお茶を取り上げてしまった。……疲れてるのに…。私の不服そうな顔を見てクレイグは一礼すると、さっさと部屋を出て行ってしまう。

……わかりましたよ、寝ますよ!

報告内容が薄くて落ち込み気味だったのに、可愛くない。

イケオジに可愛さは求めてないけど!従者が可愛くないのは嫌だ!


………明日、いつも以上にクレイグの名前を呼んでみよう。


私はクレイグがいつも通りの笑顔で対応するとわかっていて、それでもいたずらを計画するのが楽しくて、ニヤつきながらもベッドへ潜り込んだ。

お読みくださりありがとうございました。

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